反応
この現代では至る所に盗聴機が仕掛けてある。ある人が云っていた。最新のデジタル盗聴機は電波が遠くまで飛ぶ上に、小型でその性能は高い。盗聴機を発見するのは困難を極める。今もなおFM電波を利用した簡易的な盗聴機も存在するが、その性能も飛躍的に向上しており、侮ることはできない。探偵事務所には盗聴機調査の依頼がひっきりなしにある。だけれども、その多くは盗聴機が発見されず、空振りに終わってしまう。そう、殆どは依頼者の被害妄想によるものだ。
どんなに調査しても盗聴機は発見されないが、その妄想から、依頼者が納得しないことも多い。
妄想とは相反する事実を提示しても、その信念が変わらないこと。そう定義されている。
それでも、黒嶋社長は最新の発見機器を駆使して、依頼者の要望に応え、どこかに隠された盗聴機の調査にあたる。
「そんなハズはない。絶対にどこかに盗聴機が仕掛けられている。もっとよく探してみて下さい」
依頼者から罵声とも云える檄が飛んだ。黒嶋社長は最後の手段と、発見機の感度を最大に上げて対応した。発見機の感度を上げてしまうと、関係ないノイズも拾ってしまう。諸刃の剣に近かった。発見機のモニタが反応を始めた。それでもこれは盗聴機の存在を示している可能性が高い。黒嶋社長はこれまでの経験で、壁のコンセントの中が怪しいと踏んだ。定足にそのコンセントを開けるように指示した。
定足は工具箱からドライバーを取り出して、そのドライバーの先を上手く使って、コンセントのカバーを抉じ開けた。コンセントの中の空洞に何者かによって、デジタル盗聴機が仕掛けてあった。盗聴機はコンセントから電源を取っていて、半永久に盗聴した音声をデジタル信号にして、受信機に送り続ける。
これを見た依頼者はやっぱりと云いながらも、驚いたように声を上げていた。本当に盗聴機が依頼通りに見つかることは稀だ。誰がどんな目的で盗聴機を仕掛けるのか。そのことも不可解で解明出来ない謎ではある。
ともかくこの大都会では盗聴機の存在は不自然なことではなく、実際に存在する、被害妄想などではないのである。人々が囁くように本当に闇の組織が存在するのか否か。それは想像に任せるとこだが、それでも、盗聴機の存在が気になる人にこのプロットでは、これを機会に盗聴機調査の依頼をお勧めしたい。