アルベルト家でのお茶会
アルベルト家のお茶会にシャルロットは来ていた。
「シャルロット嬢、この度は息子を助けて頂いてありがとうございます」
ロランの父親がそういうので、シャルロットは首を振ると、
「とんでもない言葉でございますわ」
と、言って言葉を返した。
「今日はお茶会をゆっくり楽しんでいってね」
ロランの母親がそうシャルロットの言うと、シャルロットは優雅にカーテシーをすると、はい楽しまさせて頂きますと言った。
ロイ、カレン、そしてロランの父親と母親は既に大人の会話をしている。
シャルロットがビュッフェに行こうとすると、一人の少年がシャルロットの前に立った。
少年は深く頭を下げてこう言ってきた。
「僕はメノン・アルベルトと言います。この度は兄が大変お世話になりました」
たどたどしい様子のしゃべり方であった。恐らくロランの弟のメノンだろう。恐らくこの子も将来わたくしを断罪しに来るのだろうと考える。
「私はシャルロット・ラ・フランでございますわ。お兄様の件につきましてはいえ、ただ出来ることをしただけですわ」
「そう言って頂いて嬉しいです」
そこでシャルロットは少し気になることを聞いてみた。
「メノン様は今何かやっておられることがおありですか?」
「剣を練習しています」
それを聞いた瞬間、やはり歴史は変わらないのだと再認識する。この子は将来近衛騎士を目指すことに変わりはない。
会話をそこそこにしてビュッフェを楽しむ。さすが公爵家だけあって豪華な料理が並んでいる。特に海の幸が多い。恐らくロランの父親が好きなのだろうなと思った。
そこへロランがやってくる。ロランはシャルロットに挨拶した後に聞いてきた。
「シャルロット様どのような料理がお好きですか?」
「わたくしは魚介もお肉も、野菜もすきですわ」
そんなことを言っている間に思いついたのだが、今度は釣りにチャレンジしてみようと思った。なにせこの国は海に面しているので最良の案だろう。
「私はどちらかと言うと魚介ですね。あっさりしていて美味しいので」
「確かにそうでございますわ」
そんな会話をしていると遠くからまだ幼い女の子が歩いてくる。どうやらこの家の人間でビュッフェの料理を取りにきたらしい。
少女は料理とミルクを取ると笑顔を浮かべシャルロットの脇を通り過ぎようとする。だが少女はバランスを崩し、シャルロットのドレスにミルクと料理が掛かってしまった。
少女は口をわなわなと震わせ泣きそうな表情でシャルロットに謝ってきた。
「ご、ごめんなさいです……ぐすり……」
少女の笑顔が崩れていく。そんな顔が見たくなくてシャルロットは屈むとドレスが汚れいるのも構わず、少女の頭を撫でながら微笑みを向けた。
「構わないのよ。誰でも失敗はするのですから。そんなことよりあなたの世界に一つしかない素敵な笑顔がなくなる方が悲しいことですわ。だから泣かないで」
「ぐすり……あ、ありがとうございます……」
それから少し場は荒れたが、シャルロットは新しいドレスに着替えて、再度お茶会に戻る。シャルロットが戻るとロランの父親と母親が謝ってきたが、シャルロットは誰にでも間違いはあります、ですので謝らなくていいのですと言った。
「なんて出来たお嬢さんなんだ」
「本当……私の子供のころなんか」
そんなロランの父親の言葉と母親の言葉がシャルロットの耳に届く。シャルロットは少しこそばゆい感じがしたが、ロイとカレンは満足そうな表情を浮かべていた。
「お姉様本当にごめんなさい。わたくし、ロランお兄様の妹のミシェルといいます。ご紹介がおくれました。ぐすり……」
泣きそうな顔で不慣れなカーテシーをしてきたが、シャルロットは屈むとギュッとミシェルを抱きしめてこう言った。
「泣かなくていいのよ。あなたが泣くとわたくしまで悲しくなるわ、ね、だから元気をだして」
「ふぁい……ぐすり……」
そんなシャルロットの言葉を聞いたロランの父親がぼそりと言った。まるで聖母のようなお嬢さんだと。とんでもないと言葉だと思う。自分は聖母でも何でもない。
そんなことを思っていると、ロランがやってきてシャルロットにお礼を言った後に言ってきた。
「やはりシャルロット様は素晴らしい方です。もし私があなたにふさわしい男になったら再度告白をしたいと思います」
このロランも本当にいい子だ。もし自分が悪役令嬢でなかったらどうなっていただろうと考える。そう考えると、シャルロットは自分の運命を呪いたくなる。そんなロランにシャルロットは言った。
「今はまだ考えられません。わたくし、自分の将来すら見えないのですもの」
その言葉の意味がこの場にいる全員がわからなくて、確かに将来はわからないかなと言った間違った解釈で受け取っていた。
そこには突っ込まず。シャルロットはお茶会の続きをするのであった。