攻略対象の一人ロラン・アルベルトの治療
シャルロットは今日も今日とて農作業をしていた。農作業の休憩をしようと屋敷の門の近くに行くと、一人の少年が膝を押さえて蹲っていた。
「なにかしら」
シャルロットはその少年をじっと見やる。少年は足を押さえ苦悶の表情を浮かべていた。それを見たシャルロットははっ、と気がつく。
「怪我をしているのだわ。なんとかしないと」
シャルロットはエマを引き連れて門の外に出て少年に声を掛ける。
「怪我をされたの?」
少年はシャルロットの声に苦悶の表情を浮かべながら答える。
「……はい、転んでくじいたようです」
少年は顔を上げる。そこでシャルロットの背中に悪寒が走った。この少年はロラン・アルベルトだ。自分を断罪しようとした張本人。そして一生関わらずにいようと思った男性。
「……どうかなされましたか?」
「いいえ、なんでもないわ……」
恐らく自分の顔はロランよりも酷い顔になっていることが容易に想像できた。
(どうする、どうするわたくし)
このまま放っておいてもいいものか。いやそれでは将来に禍根を残すかもしれない。シャルロットは散々迷ったが、自分が自分らしく生きるために自分のやりたいようにすることに決めた。
「ちょっといいかしら、足を見せて下さると助かりますわ」
「はい」
シャルロットの言葉にロランは足を見せる。どうやらくじいたほかに足を擦ったようだ。
「エマ、水と布を。それとセバスチャンを呼んできて」
「は、はい。畏まりました」
暫くしてエマは布と水を持ってきて、ついでにセバスチャンも連れてきていた。シャルロットはまず最初に水を受け取ると、ロランの傷口に水を掛けて洗う。
「くっ!」
「我慢なさい」
苦悶の表情を浮かべるロランにシャルロットはそういうと丁寧に水で洗っていく。患部を見る限り縫うとかそういうレベルではなさそうだ。
「一応水で洗っておかないと菌などが入って大変なことになっては大事ですから」
「きん?」
シャルロットの説明にロランは首を傾げる。それにしても可愛い顔立ちをしている。胸がキュンとするほどに可愛い。これが将来自分を断罪しに来る少年なのかと疑いたくなる。
洗い終えると、シャルロットは考える。患部を消毒するためにお酒と水銃が欲しいところだがないものは仕方が無いので、布で患部の水を拭き取ると、患部を守るために足に新しい布でしっかりと巻いておいた。
次にロランの足を動かして見る。痛がるが、見た限り骨折とかはしていないようだ。
「よかった。でも痛くて歩けないのですわね」
「は、はい、お恥ずかしながら」
「セバスチャン」
「はい」
「彼をおぶってちょうだい」
セバスチャンはシャルロットの顔を一度見ると、ロランをおぶる。ロランは気恥ずかしそうにしながらもシャルロットとセバスチャンにお礼を言う。
「た、助かります。ありがとうございます。私の名前はロラン・アルベルトといいます。家は……」
「家は知っていますわ」
「そ、そうですか」
三人はそのままロランの家に行くことになった。暫く歩くとロランの家が見えてくる。シャルロットはロランの家の門を開け、セバスチャンとロランを通す。
そして屋敷の扉まで辿り着いたところでシャルロットは扉をノックする。暫くするとロランの家の使用人が出てくる。シャルロットはこうなった訳を話すと、使用人はロランの母親を呼んできた。暫くロランの母親に足の状態を説明した後に、母親はシャルロットにお礼を言う。
「この度は大変に助かりましたわ。なんとお礼を言っていいか」
「いえ。とんでもございませんわ。困っている人を助けるのは当然のことですもの」
少女から大人びた言葉を聞いてロランの母親は目を丸くする。一瞬驚いた顔をしたが母親はシャルロットに聞いてきた。
「お名前はなんといいますの?」
「シャルロット・ラ・フランでございますわ」
「フラン侯爵の娘さんでしたのね」
「そうでございます」
「せっかく、こうしてロランがお世話になったことですし。お茶でもいかがかしら」
そこでシャルロットは深く考える。考えた結果、お茶をすることは断ることにする。深い付き合いはなるべく避けたい。
「せっかくですが、まだ家でやることがありますので」
そのシャルロットの言葉に母親は残念そうな顔をしたが、わかりましたといい、お礼はまた後日に致しますわと言った。
なるべく早くこの屋敷から遠ざかりたくて、挨拶も早々にセバスチャンと共に帰り支度をすることにした。帰り道、シャルロットはセバスチャンにお礼を言った。
「ありがとう、セバスチャン」
「とんでもないお言葉でございます」
そんな話をしつつも、関わりを持ってしまったことが良かったのか再度考えるシャルロット。そんなことを考えている内に、自宅に戻ってきていた。
翌日シャルロットはロイに書斎に呼び出された。ロイは非常に嬉しそうな顔をしている。
シャルロットはロイに訊いた。
「どうされたんですの?」
「いや、シャルロットが人助けをしたと聞いてな。それで先方。アルベルト家からお茶会に誘われることになった」
それを聞いた瞬間、シャルロットは家族ぐるみの関わりを持ってしまったことに気がついた。これではもう逃れられない。
「どうしたシャルロット?」
「い、いえ、なんでもありませんわ」
ロイの前で頭を振りたくなったが、それはできないので、暫く考えた後にシャルロットは割りきることにした。
(こうなった以上、うまく立ち回るしかありませんわ)
そう決心すると、シャルロットはロイにこう言うのだった。
「お茶会、私も楽しみにしておきますわ」
「うむ」
それを聞いたロイはシャルロットの顔を見て嬉しそうな顔をするのだった。