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家族会議

 畑を作ったり、使用人に挨拶をしたりしてから数日が経った。そんな朝執事のセバスチャンが旦那様がお呼びでございますとシャルロットに言ってきた。


 改まってなんの話だろうかとシャルロットは思いつつ、ひょっとしたら畑を庭に作っては駄目だったかななんて思ったりもしていた。


 ちょうど今は朝食の前ぐらいの時間だ。まだ食事が並ぶ時間ではないけど父のロイは既に食卓で待っているらしい。


 食卓のドアの前に到着しシャルロットは失礼しますというと、セバスチャンがドアを開けてくれた。


「おはようございます。お父様、お母様」


 食卓には既に父のロイと母のカレンが待っていた。父のロイはさすがに商売人と言えるほどに精悍な顔つきで隙が無い印象だ。母はシャルロットの母親だなと思えるほどに綺麗な人だった。


 シャルロットはそういうと清楚な様子でカーテシーをする。そしてシャルロットは父のロイに尋ねた。


「改まってどういう話ですのお父様」


 そうシャルロットが問うとロイは少し考えた後にシャルロットに聞いてきた。


「近頃変わった物を庭で作っているとか」


 やっぱり畑を作ってはいけなかったのかと思い、シャルロットは聞き直す。


「駄目だったのでしょうか」


 緊張の一瞬がシャルロットの胸中に走るが、ロイは少し笑顔を零すとシャルロットに言った。


「別に駄目ではないよ。どんな物を作っているのかと興味があってね」


「畑でございますわ。お父様」


 その言葉にロイは目を丸くする。


「は、畑?」


「そうでございますわ。将来的には塩漬けにしてお漬物にしようと思いまして」


「お、お漬物……」


 聞き慣れない言葉に困惑するロイだったが。シャルロットは構わずに続ける。


「将来的にはお父様にも食べてもらうことも、楽しみの一つですわ」


「そ、そうか。私にも食べさせてくれるのか」


「はい、お父様。その時を是非に楽しみにしてくださいまし」


 そこでシャルロットはロイに向かって最高の微笑みを浮かべる。そしてシャルロットは逆にロイに尋ねる。


「畑をもう少し拡張したいのですがお父様よろしいでしょうか」


 その問いにロイは少し考える。実際のところ今のシャルロットは以前のシャルロットとは違う人物と言えるぐらいに素直でいい子になっている。使用人達の評判も非常に良い。だから娘の性格を危惧していたロイにしては畑でいい子になってくれているのであれば止める必要はなかった。


「近頃のシャルロットは使用人達からも評判が良い。パパとしては素直なシャルロットになってくれて嬉しい」


「とんでもございませんわお父様」


「畑の拡張だったな、いいぞ」


「ありがとうございますお父様。ついででなんですが、農作業の服も作って下さると嬉しいです。駄目ですか?」


 そこでシャルロットはうるうると視線を向ける。それがロイにとっては非常に眩しい。だからロイは首を縦に振って、作ってあげようと言ったのを聞いてシャルロットは喜んだ。


 将来的には発明の場所なども父に頼まなければならないと思っていると、ロイが少し心配そうな表情で尋ねてきた。


「頭などは打ってはいないな。シャルロット」


 やはりそういうふうに心配されるだろうとシャルロットは思った。だからシャルロットはきっぱりとロイに向かって断言する。


「頭などは打ってはいませんわ」


「そ、そうか」


 その言葉にロイは心底安堵した表情をする。そこでロイは話を変えてきた。少し厳しめの表情だ。


「ここまではいいのだ。シャルロット先日木に登ったな」


「はい、エマには心配を掛けて申し訳ないことをしたと思っていますわ」


「わかっているのならいい。今後危険なことだけはやめてくれ。せめて男性使用人が来るまで今後は待て」


「雛が他の動物に食べられるかと思って、慌てて登りました。本当に申し訳ない気持ちで一杯ですわ」


「可愛そう……」


 以前の自分の娘であればそのようなことは絶対に言わなかったとロイは思う。シャルロットにそんなことを思う慈愛の心はなかったからだ。だからしつこいかなと思いつつも再び尋ねる。


「本当に頭などは打ってはいないな?」


「はい! 断言致しますわ」


 ロイの心配にシャルロットは胸を張り断言する。そこで再度ロイは安堵の表情を作る。


 そんな会話をしていたロイとシャルロットの間に母のカレンが入る。


「まあまあ、私は素直なシャルロットになってとても嬉しいのですのよ。今はお転婆なところもありますが、やっぱり素直でいい子が一番ですわ。別に以前が悪いというわけではなくてよ……ホホホッ……」


 最後のあたりで母カレンは言葉を濁す。母にとっても傍若無人で人のことを考えない以前のシャルロットは頭痛の種だった。節度を超えれば親で困ってしまうのは仕方がないとシャルロットは思った。


 そんなシャルロットに向かってカレンは微笑みを浮かべながら言ってきた。


「私も家庭菜園を始めようかしら。うふふ」


「とてもいいと思いますわ、お母様」


 そんなカレンとシャルロットの会話を聞いてロイは微笑みを浮かべる。そして朝食の時間になるのだった。


◇◆◇


 夜になった。シャルロットはエマに丁寧なブラッシングを受けている最中にエマに謝る。


「先日は木に登って心配を掛けさせてしまって申し訳なかったですわ」


 そんなシャルロットの謝罪にエマは目をパチクリとさせてから言った。


「と、とんでもございません」


「これからはエマにも心配を掛けさせないように行動に注意を致しますわ」


 そういうとシャルロットはエマの手を撫でる。そんなシャルロットに向かってエマは初めて微笑みを見せた。


「そう言って頂いてありがたいことばでございます」


 そういうとエマはブラッシングを再開する。その後、湯浴みし夜着に着替え、シャルロットはベッドに入り、考える。


(今日はいい一日でしたわ。今後もこうでありますように。でもなんだか子供になってから夜更かしはできなくなってきましたわ。眠い……」


 そんなことを考えている最中にシャルロットは穏やか寝息を立て寝てしまうのだった。 


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