ヴィルヘルムのシャルロットへの見解
ヴィルヘルムがシャルロットの様子を見にシャルロットの家へ行くとシャルロットは男の子のような格好をして庭を弄っていた。
ヴィルヘルムは背後からシャルロットに声を掛けるとシャルロットはビクリと体を震わせたようだった。
「失礼、つい見ていたら声を掛けてしまいました。ところでなにをしておいでなのですか?」
「農業でございますわ」
「の、農業?」
ヴィルヘルムはシャルロットの言葉に驚いた。貴族で農業をするものは珍しい。
実っている作物を見るとどうやらキュウリのようだった。
「どうして農業をしておいでなのですか?」
疑問に思ったヴィルヘルムはシャルロットに訊くと、シャルロットは分かってもらえないかもしれないですけどと言ってから説明してきた。
「お漬物が食べたいのですわ、ライスと一緒に」
「お、お漬物とはなんですか?」
「塩をまぶした後にキュウリの上に石を置いて漬けるのでですわ」
「それはご自分でやられるのですか?」
「そうでございますわ」
普通の貴族は自分で料理をすることがほとんどないからヴィルヘルムは驚いた。
シャルロットは顎に手を置いた後にヴィルヘルムに言ってきた。
「お漬物と言ってもなかなかわからないですわよね。そうですね、キュウリが実ったらヴィルヘルム様もお漬物を食べて見られたらいいと思います」
「その時を楽しみにしております」
そう言いながら微笑みを浮かべたシャルロットはとても愛らしく可愛いとヴィルヘルムは思った。
その翌日ヴィルヘルムがまた遊びに行くと今度は魔法の特訓をシャルロットはしていた。
遠目に見てシャルロットが詠唱をしているのを見てとても可愛いと思ってしまった。そんなシャルロットを見ているとついつい声を掛けてしまった。
「魔法の特訓ですか?」
「ひゃん!」
突然声を掛けられたシャロットは驚きの声を上げた。ヴィルヘルムは失礼と謝った。謝った後にヴィルヘルムはシャルロットに訊いた。
「なぜ魔法の練習を」
「後学のためでございますわ」
どのみち自分たちは魔法学園に通うことになるので慌てて魔法の勉強をする必要はない。とても勤勉な女性だとヴィルヘルムは思うと感嘆の息を漏らした。
実際は将来有事の場合、その魔法で戦えるようになるように魔法の研究をしているとはヴィルヘルムは想像だにしていなかった。
そう説明するとシャルロットはまた魔法の詠唱をし始めた。やはりとても可愛い。でもこれ以上を魔法の特訓を邪魔しては悪いので今日はシャルロット家から自宅に帰ることにした。
翌日ヴィルヘルムが遊びに行くと、ある一室からピアノの音色が聞こえてきた。暫く聴いていると澄んだ音色で聞き惚れてしまった。
恐らく弾いているのはタッチからしてシャルロットなのだろう。とてもよい曲だが聴いたことのない曲だった。
窓に近づいて声を掛けたくなるが、ヴィルヘルムはぐっと堪えた。この素敵な音色と可愛い彼女の邪魔をしたくはないと思ったからだ。
だからヴィルヘルムはただ黙って静かに音色を聴くことに集中した。弾き終えるのを聴いた後にヴィルヘルムは自分はなにをやっているのだろうと考える。
自分は彼女を意識していることは間違いない。ひょっとしたら自分はシャルロットを好きになっているのかしれないと考えると、ヴィルヘルムは微笑を浮かべる。
自分は恋愛には疎いと思っていたが、まさかこんなに早く人を好きになるとは思ってもみていなかったからだ。
そんな結論を至ったヴィルヘルムは窓からそっと離れると、自宅に帰ることにした。帰り際に思ったことがある。シャルロットは会う前まではつまり噂の範疇ではあまりよい評価の女性ではなかったが、それは改めなければならないと。
こうしてまたシャルロットは知らず知らずの内にまた一人に男の子に恋愛感情を抱かさせてしまうのだった。