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8 龍王その2

8 龍王 その2


アンが先に足を踏み込み、ヴォーダスとアンの勝負がスタートした

アンは初めいつものように2秒もたたず、ヴォーダスとの距離を詰め、同時に振り上げた剣を頭目掛けて振り下ろした。その動きはブレがなく、無駄がなく、まさに洗礼された武神流の上級者の動きだった。

普通なら相手は脳天から真っ二つで、再起不能となりそのままto be continued〜……となるはずだが、今回は違った。ヴォーダスはその剣をまるで予見でもしているように、バックステップで避けたのだ。そしてバックステップを踏み、後ろに下がると懐から水晶玉のようなものを出し、再度構えた。

「ガルァァァァァァア!!」

アンは唸り声を出しながら構えているヴォーダスに対して距離を詰めていった。先程バックステップを踏まれたためか、いまさっきよりもスピードが上がっている。おそらくマナの操作を行い、身体能力を向上させたのだろう。

そのままアンは、先程と同じように上段から切りかかり、その斬撃はヴォーダスの頭部に直撃しそうになっていた。

しかし、その攻撃はヴォーダスの瞬時に放たれた手刀により弾かれ、アンは体勢を崩しかけ、バックステップを踏み体勢を整えた。

本来剣同士の戦いで行われるような試合が、剣と素手で行われており、龍人族の長であ龍王(ドラゴンロード)

の強さが伺える。

先程までアンが先手だったが、次はヴォーダスが先に動いた。先程から片手に持っている水晶玉をかかげ口を開き始めた。

「この水晶玉にはマナを凝縮している高度なエネルギーが秘められている。

その名を龍玉と呼び、この所持は数人いる龍王のみにしか許されていない……。」

龍が絵とかでよく片手に持っているあの玉か……

願いを叶えてくれそうな玉だな………。

そんな風に考えていると、アンはそれがどうしたと言わんばかりの顔をしている。まぁ急に戦闘中に所持品の説明をされても困るだろう。

だが、アンはなにか察したのか、足を踏み込むことなくヴォーダスを睨みつけ構えている。正確にはマナを操作し力を貯めている、と言った感じだろうか。

「貴様の力を最大限に試すためにも

この道具も使わせてもらう………卑怯と言うまいな?」

その言葉と硬い表示からは強い圧が感じられる。

「言わないわ!!

敵がどんな武器を持っていようが切り裂くのが剣士よ!!」

アンはそう高々と声を声を上げながら、再度構えた。

その途端ヴォーダスが、地面を勢いよく蹴り、距離を詰め手刀の先で貫くようにアンに殴り掛かると、アンもパターンを見越していたのか、剣で受け止めた。

そしてヴォーダスは残像が見えるスピードで数え切れないほど手刀でアンを攻撃し始めた。アンはそれについて行くように剣で全ての攻撃を受け止めていた。

そのあまりにも速い駆け引きに周りの砂が舞い上がり、目に砂が入りそうだった。

ヴォーダスが優勢な駆け引きが数分ほど行われていると、アンがタイミングが来たと言わんばかりに目をギラつかせると、ヴォーダスの手刀を剣で受け止めたタイミングで、手刀をそのまま受け流しヴォーダスの体に切りかかった。

これもおそらくマナの操作だ。

そして、その斬撃は見事ヴォーダスの体に傷を負わせた………

と思ったが、アンの斬撃は体に当たる寸前で止まっていた。

「沈黙のダフマ

ヴォーダスはそれだけ言い放つと、なにか目に見えない力でアンの剣を、アン事倒させるように受け流し、そのまま背後から手刀で殴り掛かろうとしていた。

なにか目に見えない力といったが、龍玉の中身が無限を描くように光っていたため、おそらくは龍玉の力だろう。

アンは受け流されでもそのまま受身を取るように横に体を転がし、ヴォーダスの手刀を避け、立ち上がった瞬間、その立ち上がった勢いを活かし、ヴォーダスへとまた、切りかかった。

切りかかった際、マナを魔力に変換していたのか、ヴォーダスに目に見えない飛ぶ斬撃が飛んだ。だがしかしまたもや、「ダフマ」と呟くとその斬撃は消し飛んでしまった。

だが、アンはその隙を見逃さずヴォーダスが斬撃を対処しているうちに、既に距離を詰め上段から斬りかかっていた。先程魔力の変換を行っていたのにもかかわらず、アンのマナは減ることがなく、残像が見えるほどのスピードで剣が振り下ろされた。

さすがに龍王のヴォーダスも、隙を突かれた攻撃を受け流すことが出来なかったのか受け止めようとした手の甲が、斬撃によって切り裂かれた。

ヴォーダスは体勢をさらに少し崩してしまい、そのままアンはさらに大きさもスピードも強力になった斬撃を飛ばした。

おそらくまた同じように切りかかっても、流されると考えたのだろう。

その斬撃を、ヴォーダスは消滅させようとしていたが、全力で放たれた斬撃だったのか、完全に消滅させることが出来ず胸に切り裂かれたような傷ができた。

「……………アンが優勢だな……。」

俺がそう呟くと、シャオショウが割って入るように口を開いた。

「いや…………あいつとは数十年の仲だからわかるが……

あいつはまだ10分の1程度……いや、それ以下の力量しか出していない……。

確かにアンが優勢だが、アンが顔が必死になってるのに対して、あいつの顔は先程から冷静なままだ……

まずいかもなこれは。」

確かによく見るとヴォーダスの顔は冷静そのものだ。

どちらかというと観察しているように感じる。

そしてそのまま追撃するようにアンの剣が直接ヴォーダスに振り下ろされた。

また斬撃を飛ばせばいいものを、なぜ直接切りかかるのだろうか……。

予想どうりヴォーダスが甲が傷ついた手刀で剣を受け止め、そのまま受け流した……。

と思ったが、アンの剣は流れの逆を行くように向きを変え加速する勢いで切りつけると、ヴォーダスの手が吹き飛んだ。

そうするとヴォーダスは、「ぉお」といったような感心にもとれる顔をした。

アンはさらにその隙をつき、ヴォーダスの首に刃先を向け切りかかろうとしたが、切る寸前に止め、口を大きく開いた。

「あんた!!

その変な玉で、魔力を直接ぶつけにきてるわね!!」

なに?魔力を直接ぶつける……?

「………………お見事だ。

これを見破った挑戦者は、コレで2人目だ。」

ヴォーダスはそう言い放つとアンの刃先を目に見えないぐらいの速度で弾き飛ばし、アンに対して握手をするように切り飛ばされてないほうの手を差し伸べた。

「お前は英雄の右腕として、そして龍神ナーガダハーカの力を借りる資格があると、この龍王が認めよう。」

そうすると、アンは少し嬉しそうに「当たり前じゃない!」と言いながら、ヴォーダスと握手した。

「え……えぇ……?」

俺はついていくことができず、つい声を漏らしてしまった。

こうして勝負は、ヴォーダスがアンの力を認める形で終止符を打った。


勝負が終了した直後、俺は真っ先にアンの元にかけよった。

「アンすごいな!!見入っちゃったぞ!!」

これは本音だ。俺はあの目に見えない力の正体を見ぬけなかった、だがアンは戦闘中でも見抜いた。

「当たり前じゃない!!

ペルクレスと並んで戦うためにどれだけ鍛えたと思ってるのよ!!」

その頃のペルクレスは、きっと、今のアン以上に、精神も肉体も技術も鍛え上げられていたのだろう……

なら、やはり俺はシャオショウに鍛え上げてもらうべきだろう。

「じゃあ、俺は、今のアンと並んで戦えるように鍛えるよ。」

そうすると、アンは少し嬉しそうに、

「わかったわ、頑張りなさい!」と俺の背中を叩き返事をくれた。

そんな会話をアンとして、その次にヴォーダスの元に向かうと、既に切り飛ばされていた手や、傷は既に完治していた。

「ヴォーダス様、、先程の手の欠損、大丈夫でしたか?」

一応聞いてみる。

「龍玉はマナを直接魔力に変換し操る。

どんな欠損であろうとも、すぐに再生することが可能だ。

無論、他人の治療もだ。」

「それは便利ですね……。」

なるほどな……。だが、それが無くとも手刀のみでアンの剣を受け止めていたと様子を見ると、恐ろしいな……。

「では、、

もう龍神様の力をお借りすることは可能なんでしょうか?」

勝負は終了し、アンも認められた。

もう条件はクリアしているはずだが……。

そう問いかけるとヴォーダスは首を横に振った。

「最後に、主の洗礼を受けてもらう。」

主の洗礼…………ふむ…………。

「どのような洗礼を…………?」

そうするとヴォーダスは周りにきこえるような声で答えた。

「聖大陸の最南の大陸、ムスペル大陸、魔大陸の最南の大陸 スルト大陸を繋ぐ世界最南端、そして世界最標高の山脈の山頂にある

迷宮 クリンタの宮により 洗礼の儀式を行う。

……貴様ら!直ちに龍に乗れ!!」

「!!わかりました!」

その迫力ある掛け声に皆驚きながらも、誰も異論を述べることはなく無言で頷き、その迷宮 クリンタの宮と呼ばれる場所に向かった。


龍にのり、数時間が過ぎ、夕暮れ時になった。

同じような景色が続いていたが、しばらくすると上空にとどきそうな程高い山々が見えてきた。

「もうすぐだ……、標高が高いゆえ、息苦しくなる。

それを理解しておけ……」

そう言われ、またもや全員が無言でうなずいた。

そして、その掛け声と同じぐらいにその目的地へと到着した。

ここあたりの大陸は、かなり熱いが、今は夕暮れ時な上に、山の山頂であるため、あまり熱さは感じない。

それよりも、俺たちは、目の前の地面の巨大な穴に気が集まっている。

「ここが、クリンタの宮……ですか。」

「ぁあ……。

ここは過去、初代龍王と龍神が交信を初めて交わし、洗礼を受けた神聖な場所だ。

その加護により、タルタラス海洋ができた際も、この山脈は海にならずに済んでいる。」

「なるほど……。」

すると、山の奥から4mほどになる人間の男のような奴らがわらわらと現れた。

(なんだアレは……?!……まさか人食い巨人とかじゃあるまいな…………。)

「…………お前ら何者だ…………と思ったガ、龍王様か。

……そっちのちっこい奴らは誰なんですかイ?」

その巨人の1人が格好とは裏腹にかなり理性的な喋り方でこちらに話しかけてきた。なんだろう、龍王と知り合いだったりするのだろうか、言い様的に。

「この者たちはこの宮に洗礼に来た勇者達だ…………。気にする事はない。」

そうすると巨人達は「なら我らが邪魔な魔性が来ぬよう守護を強化しておこう。」といい、山の奥に一瞬にして消えてしまった。

「!!なによあいつら!!あんなでかい人族見たことないわよ?!」

アンがそう興奮気味に質問した。

「あいつらは人族ではなく、ここらを太古から守護する魔族のティタン族だ…………。

数が少ないから都市部の、人間達には知られてないが、このあたりではかつて巨人信仰もあった。」

「なら、彼らは無害ということですか……。」

「あぁ、その通りだ。」

山脈の多くにはなにかしらの魔族や部族が住み着いてるっぽいから、こーゆー事があっても次からは驚かないようにしないとな……。

「では……宮を我が案内する……といいたいが、

既に迷宮の事を知っている者が1人いたな。」

ヴォーダスは、ティタン族の話題から切り替えるようにそういうと、シャオショウをマジマジと見た。

「え?、シャオショウ。

来たことあるのか?」

「…………来たことある、というより、

以前俺もアンと同じようにヴォーダスに挑み、認められ、実際にここで洗礼を受けている。

目的は龍神の力を貸りる、というより、ただただ強くなりたいってだけだったがな。まだあの時は若かった……。」

シャオショウは懐かしそうな目をしながらそう話した。

なるほど……。見抜いたのはこれで2人目だと言っていたが。1人目はシャオショウだったのか。

ヴォーダスと関係があるのも納得だな。

「なるほどなぁ……。じゃあ、シャオショウが案内してくれるのか?」

「来たのがもう数十年前だが……

まぁいい、入れば思い出すはずだ。」

「助かる。」

そうするとアンはもう既に穴の目の前におり、

「早く行きましょ!!」とワクワクした目でこちらに呼びかけている。そういえばアンは鍛錬ばかりで、あまり冒険みたいなことをしてこなかったんだっけか。

なら、ワクワクするのも仕方ないな、俺もゲーム廃人であったため、正直こーゆーダンジョンはワクワクする。

そのアンの呼びかけと共に、シャオショウとヴォーダスを先頭に、穴の中に飛び込んで行った。

迷宮はシャオショウの説明によると、太古に生まれた迷宮なため洞窟のような見た目だが、内部構造は単純な地下3階構造になっているらしく、

地下1階には群れをなす巨大なミミズのような魔物「ガーディアワーム」

地下2階には地面を這いつくばる群れをなすトカゲの魔物 「ガーディアニュート」

地下3階には、体は人、顔は牛の魔物「ミノタウロス」

がいるらしい。

強さ自体はどれもあの時に戦ったガーゴイルは下回るものの、油断すれば死に至る強さがある。

そのため、ガーゴイルを倒した際の構成と動きを再確認し、迷宮に潜った。

ヴォーダスは「これはお前らへの試練の1つだ」

と言って、力を貸してくれ無かった。まぁ当たり前だな。

そうしてついに迷宮へ潜った。

地下1階のガーディアワームはアンとシャオショウのダブルコンボにより、簡単に薙ぎ払うことが出来た。

肉片が飛び散っていたのが少し気持ち悪かったが、なんとか問題ない。

その薙ぎ払ったワームの肉の1部はシャオショウがしれっと食べていた。急に食べ始めたため、周りもかなり動揺していたが、以前言っていた呪いである「グラトニー」は、魔物を食べたりするとその魔物が秘めるマナや魔力を体内に蓄積することが出来、どんなものでも腹を壊すことがなく食すことが可能とのことだった。なら、食べておいたほうがいいだろうと俺たちは止めるのを辞めた。トラウマから生まれた呪いも、裏を返せばマジナイとなる……有効活用を自らシャオショウがするんだから俺たちに止める理由はない。

また、地下2階のガーディアニュートは少し厄介だった。何せ数がかなり多かった上に、頭や手足を欠損しても再生する高い生命力を持っていたのだ。

そのため、一度戦闘し性質を確かめたあと、地下一階のに戻り、作戦を立て直した。

ダッキの幻覚を見せる妖術を使い、大量にいるガーディアニュートを階の中心に集めたあと、俺の光魔術のビームで、一掃すると言った感じだ。

結果的にこの作戦は成功した。

以前ガーゴイルに妖術がきかなかったため、ダッキは「今回はききましたわね」と安心していた。

シャオショウがまた死体を少し食し次の3階層へと向かった。

だが、どうやら地下3階にいるミノタウロスは、ガーディアンと同じく魔除けのような特性を持つらしく、妖術が効かないらしい。

それを聞いたダッキは、「嫌になっちゃいますわ」と、少ししょんぼりしていた。

そのため、ダッキの妖術に頼らないミノタウロスに勝つ作戦を建て直した。

ミノタウロスは図体はでかいが、マナ量がかなり多いため、動くスピードが早く再生能力も高い上に、斬撃を飛ばす魔道具の斧を持つらしい。

そのため今回は、斬撃を受ける件破壊する役として俺が前衛をはることになった。

俺が前衛で気を引いている内にアンや隠密流のダッキが隙に入り込みダメージを与えると言った感じだ。

シャオショウはアンやダッキに比べるとスピードは劣る上に体が大きいため、ピンチ要員として後衛にまわってもらう。

そうして作戦の話し合いが終わり、ミノタウロスとの対決が始まった。

初めは予想どうり、ミノタウロスは斬撃を飛ばしてきたため、俺はその斬撃を破壊しそのまま顔面にビームをかました。それと同じタイミングにアンとダッキが脇を通り、足目掛けて切りかかった。

だがミノタウロスは予想外に速いスピードで斧を振り回しアンとダッキを吹き飛ばした。

まずいと思ったが、すぐに後衛にいたシャオショウがかけつけ、ジャンプし金棒でミノタウロスの頭をカチ割った。グラトニーによって強化されたシャオショウの一撃はかなり強かったらしくミノタウロスの頭からは血が吹き出していた。

そのうちにアンとダッキは立ち上がり、フラフラして体勢が安定しないミノタウロスの四肢を切り飛ばし、俺が最後に放射口を狭めた高圧ビームでとどめを刺し、

ミノタウロスになんとか勝つことができた。

「はぁ………案外厄介でしたわね……

このミノタウロス。」

「だな……というより、やはり軍長か。

剣術もやはりレベルが違うな。」

「お世辞はよしてくださいな。

アンの方が実力は上なんですから。」

そうするとアンの眉がピクりと動いた。嬉しかったのか、はたまた誑かされていると感じているのかは不明である。

「よし………じゃあ行くぞ。」

シャオショウの掛け声と共に、ミノタウロスを倒したさらに奥の通路を進んで言った。

数十分あるくと、洞窟のように暗い中になにか光り輝くなにかが見えた。

そうしてそこに向かっていくと、その光の正体はすぐに明るみになった。

「………綺麗な湖だな……。」

そこの空間にはエメラルドグリーンにかがやく綺麗な湖があり、その周りには布を巻いた美しい女性が数人いた。

なぜこんな所に……。

「あの……彼女らは……?。」

「あいつらはニュンペーとい、。

基本神聖な湖や川を守護する女神に近い精霊だ。

…………

安心しろ、洗礼を受けるといえば通してくれる。」

ヴォーダスはそのように言うと、そのままニュンペーに話しかけ交渉してくれた。

ヴォーダスの顔を見るやいなやすぐに道を空けてくれたため、なにかしらの関係があるのだろう。

「では、洗礼を行う。

お前ら4人。そのまま一度礼をし、湖に下半身が浸かるまで入り、目を閉じろ。

そうすれば俺が詞を詠唱する

さすれば主の洗礼を受けることが出来るだろう。」

ふむ……なるほど。

そうしてそのまま俺たちは言われた通り不慣れながらも、下半身が浸かるまで湖に入り目を閉じた。

そうするとヴォーダスの詠唱が、お経のように始まった。

「汝よ 力を求めるならば龍の民の元を訪れよ

汝よ そして龍を統べる王に挑むが良い。

汝よ 王に勝利したならばクリンタの宮により

龍神 ナーガダハーカの洗礼を受けよ」

この詞……どこかで聞いたことがあるな…………。

ァ……そういえば、以前手に取った

「龍の民の伝説」という本の中で龍神がこんな言葉を言い残した、という伝説が書いてあったな……。

また、「死神リーパーの伝説」では、リーパーが龍王に挑んで洗礼を受ける際に、龍王がこの言葉を言っていたと記述があった…。

正直どちらとも、深くは考えてなかったから忘れていた。

そんなことを考えていると、急にまぶたの裏から感じる光が、眩しいぐらいに強くなった。

「なんだ…………」

さすがに気になり目を開けた。すると周りは白銀に光り輝く空間になっていた。さらに、目の前には

頭が3本あり、巨大な羽が生えた。 50mはあるんじゃないかと思えるような巨体を持つ、白銀に光り輝いた白龍がいた。

キング〇ドラのようであるが、恐らくはこれが

龍神ナーガダハーカなのだろう。

神というものはいままで存在は信じてこなかったが、神々しく、同時に厨二病チックなその姿を前にすると、つい見惚れてしまう。

「神の子よ、洗礼を受けに来たということは

なにか力を欲しているのだろう?

…………どのような力を欲す。

妾は悪魔では無いゆえ見返りは求めぬが、理は知る必要があろう?」

見た目からは想像できない美しい女神のような声でそう話しかけられた。

そして俺は正直に答えた。

「人族を導くために、転移魔術が必要なんです。

どうか力を貸してください!!!!」

その声は空間中に響き渡った。

あまりに急に大声を出してしまったせいで若干裏声になってしまったが、神ならばこれくらい気にしないだろう。

「ふむ…………良かろう。

妾はお主のような男は嫌いでは無い。

……

神の子ペルクレス・デウスディアよ、

龍神 ナーガダハーカは

お主に力を貸すことを認め

その上、龍神の加護をさずけることにしよう…………。」

そう言われた途端。頭に直接ドリルをつっこまれたような激痛と疲労感を感じた。

「はぁ…………はぁ…………

…………終わったか…………。」

汗をダラダラ垂らしながら目を開けた。

同じくアンも汗をダラダラ垂らしものすごく疲労感を感じる顔をしていた。

ダッキとシャオショウはあまりその様子が見られないな…………。

「これで洗礼は終わりだ。

…………じゃあお前らが言った計画どおり、魔法陣の設置に向かうぞ、」

そうして俺たちはなんとか立ち上がり、魔法陣への設置へ向かった。


クリンタの宮から出ると既に周りは夜中だったが、そのまま龍にのり、魔法陣の設置に向かった。

夜中出なくては目立つ上に監視の目が厳しいためである。

門番にバレないよう音を立てずに龍が飛んでくれたおかげで、簡単に聖王国の内部へと侵入できた。

その時、予定通り副長のティハ・テウメッサと、オファニエル団長のマリシェイ・テウメッサが待機してくれていた。そのまま俺たちは案内された魔法陣を設置する広場へと案内された。

過去に使われていたが現在は模擬戦で使われ無くなった広場だそうだ。

だが、広さは十分にある。

そしてヴォーダスがその広場の中心に行き、龍玉を掲げ、また先程と同じ詞を詠唱すると、広場に複雑に描かれた魔法陣が浮き上がった。

その様子は少し幻想的であった故に

「おぉ……」と声が漏れてしまった。

そうして魔法陣を設置し終えたあと、テウメッサブラザーズとは別れを告げ、龍に乗り、龍人族の村へと帰ってきた。

帰る最中に、咄嗟に、この龍に乗って魔大陸を横断できないか聞いてみると、この龍だと魔大陸の魔力に耐えきれなくなってしまうため出来ないとのことだった。

やはり地道に計画どおりのルートで向かうしかなさそうだな。

そうして俺たちは龍人族のヴォーダスの家を借り、

そこで1晩過ごした。

今日は色々内容が濃くて大変だったな。

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