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6 鬼山の大将

6 鬼山の大将


あの革命についての話し合いから2週間が経過した。

この2週間、俺は魔術の中でも、特に光魔術を極めるため、副長のティハの協力で1日何時間も模擬戦を行った。

もちろん、ただ無闇矢鱈に模擬戦を繰り返したわけじゃない。

まず、光魔術の応用性について調べた。

魔術は基本、水、炎、土、風などの四大精霊に対応した属性におおまかにわかれており、それぞれの魔術は、それに基づいた独自の特性を持つ。

例えば、炎ならば対象を燃やしたりして攻撃ができる。水ならば、放出速度を上げれば打撃攻撃に使うことも可能である。また、この四属性以外の雷などの魔術は、この属性を上手く合わせて発生させる。

しかし、この世界は科学が発達していないため、原理などは解明されてるわけではなく、たまたまできたら組み合わせから新しい魔術が発見された、という感じらしい。

しかし光魔術は、光属性単体で、様々な応用がきく。

例えば、以前の模擬戦のように形を自由に変えてビームを発射することも出来れば、炎魔術のように光の玉を発射することも出来る。また、うまく扱えば、負傷部分を光で包み、ヒーリングよりも強力な治癒魔術をかけることが可能で、風や水や土のような魔術は操ることは出来ないが、光魔術と合わせればさらに強力になる。かなり強力だが、使いこなせなくては意味が無い。

そして、光魔術以外にマナについても調べた。

どうやら、アンなどの剣士や戦士たちは体の中のマナ(生命エネルギー)の流れを操り、身体強化をしているらしく、俺はそれを耳に入れ、俺はアンからマナの流れを操る方法を教えてもらった。アンは、強気で「任せなさい!」と快く受け入れてくれて助かった。

分かったことは基本、操り方は魔術を使用する時の魔力変換のやり方と、余り変わらないが、魔術を使用する時は、力を込め、マナを集中させた後に魔力に変換し放出するのに対して、マナの流れを操る時は、力を込めた状態をキープするようなイメージで行うとの事だった。身体強化したい場所によって力を込める場所を変える場合もあるが、基本は全身に力を込めるイメージらしい。やたらこの世界の剣士がフィクション地味だ動きをするのはこれが理由だったのだろう。

このようにアンにマナの操作方法を教えてもらったあと、マナの操作を意識し、模擬戦を行ったものの、魔術よりも具体的なイメージがしずらいため、マナ操作を扱うことはできなかった。まぁ、知識は得たから徐々に慣れていけば問題ないだろう。マナ自体は俺の場合、半神であるため、人の数倍あるらしいから、マナの量の心配は無いしな。

2週間の成果はこんな感じだ。


そして今夜。計画どうりこの国から抜け出す。

抜け出し方としては、いつものようにオファニエルの団長マリシェイが迎えに来て、城外に出る。

それから国を抜け出すのは難関だ。 夜中は城内の監視は無いものの、国を囲んでいる壁の門の門番自体は交代制で24時間ずっといるのだ。そのため、門から堂々と抜けることは出来ない。だが、ダッキは妖術を使うことが出来る。

ダッキの妖術の中には、人を眠らせるような妖術も存在するらしく、今回は、その妖術を使い門番をねむらせ、その内に国外に出る。だが、この妖術は自分のマナ以下、または同列のものにしかきかないらしく、おそらく革命に使うことは厳しいとのことだった。

抜け出し方はこんな感じだ。


そしてしばらくたち真夜中になった。まさに丑三つ時といったような時間帯だ。

夜空が欠けた月に照らされており実に綺麗で、夏の冷たい風が吹いていて、今から革命を目指す旅が始まるとはまるで思えない。

現在、マリシェイに城外に連れてこられ、4時間以上忍足で移動し、目の前に門が見えるぐらいの距離まで来ている。あまり見るタイミングはないが、よく見ると門には迫力のある天使のような絵が刻まれている。

おそらく恵みの神スピカの使徒ポリマを讃えたものだろう。この世界は宗教がなにかと物事の主軸にあったりする。まぁ中世ぐらいの文化レベルだから当たり前かもしれないが。

その後マリシェイは、「これで私の役目は終わりです。ペルクレス様 アン様 ダッキ様 ご武運を」と

城外に俺達を送ると、闇の中に消えてしまった。さすが隠密の忍者と言った感じか。

「じゃあ、ペルクレス、アン、行きますわよ」

ダッキの、フ〇ーザのような掛け声とともに、俺たちは目の前にある門にゆっくり歩いて行く。

長旅となるため荷物をかなり持っており、かなり揺れる音も目立つため慎重に門に近づいていく。

眠らせる前に気づかれては元も子もないからな。

「今から旅が始まるなんて、ワクワクするわね」

呑気にアンが目を輝かせながらそんなことを呟いた。

いや、呑気ではないな。

以前、アンはこの、魔族優勢の現状に怒りを覚えていると言っていたからな。それを変えることができる可能性への嬉しさもあるのだろう。もちろん、かならずこの作戦が成功するとは限らないがな。

そう考えてる内に門番に妖術が効く範囲内まで近づくことが出来た。建物に隠れているが、距離は3メートル程度しか離れていない。

「じゃあ、私が一瞬身を乗り出して、妖術をすぐにかけますわ。私の姿はきっと見られるでしょうけど、眠ればきっと忘れるでしょうから。」

その掛け声に俺とアンは頷いた。

それをダッキが確認すると、ダッキはそのまま風を切るような音とともに身を乗り出し門番の目の前に現れた。

「な?!貴様、何故ここにいる?!」

「貴様は…軍長のダッキ?!」

残像が見えるレベルの速さで現れたのだが、門番はアスラ族であったため、すぐに目の前のダッキに気づき剣を抜こうとした。俺には正直ドラ〇ンボールの異次元なバトルのようにしか見えない。

「……ザントマンの妖粉!!!」

その途端、ダッキは手から粉を発生させると門番に振りまくようにぶつけた。それを食らった門番は最初はビクともせずダッキに切りかかろうとしたが、一瞬にして白目を向き地面に倒れ込んだ。

見ると催眠術、というよりは気絶させてるように感じるがまぁ効果が早い方が術としては優秀だ。

「……やったか?」

やべ……つい、そう呟いてしまった。まずいな、

このセリフを言っちゃうとだいたい大丈夫じゃないんだ。「俺、この戦争が終わったら結婚するんだ」の次ぐらいに言ってはならないセリフと、オタク界隈では常識だ。

「ぇえ、何とか眠ってくれましたわ。」

一応、再度確認すると門の前には白目を向け地面に倒れ込んでいたアスラ族が二人いた。

大柄な体格の見た目通り、攻守どちらも物理特化らしい。

死亡フラグをたててしまい焦ったが、成功したようでホッとした。

「では………馬小屋の馬を借りてそのままここから立ち去りましょう。」

「あぁ……そのほうが良さそうだな………。」

なにやら遠くから騒ぐ声がきこえてきたため、門番がやられたことがバレた可能性がある。

そしてそのまま俺たち3人は馬小屋の馬にのりその場を後にした。馬術は慣れていないのだが馬自身がかなり賢かったため苦労することなく乗りこなすことが出来た。

こうして、ポリマディア聖王国の外に出ることに成功した。

「じゃあ、とりあえず……

監視から見えない場所まで移動して野宿しようか」

そうして俺の指示で、国からかなり離れた場所まで移動し、野宿をした。睡眠不足は旅の敵だと、どこかで聞いたことがあるしな。


その後、2週間以上かけ、山脈まで野宿を繰り返し移動した。 山脈までの間は、町などが所々に見えたものの

わざわざ家を借りるより、野宿をするほうがなにかに巻き込まれないで済むため、町内には入らなかった。

正直、初めての野宿でかなり限界にきていたため町の宿で休むことを提案したが、キッパリと断られてしまった。しばらく気分が落ち込んでいたが、これからの計画のことを考えると、大したことじゃないと感じたため、すぐに切り替えることが出来た。

そうしてやっと、アギオン山脈あたりまでたどり着くことが出来た。

「ふぅ……かなり疲れたな……

……アンとダッキは全然疲れてないんだな」

「私とアンは何年も訓練をしてますわ。

ペルクレスみたいに体力が少ないはずがないですわよ」

「なに………。」

何故か誑かされた気がする。

………まぁそーゆー口調だから仕方ないか。親しき仲にも礼儀あり、だが、これは許せる無礼だろう。

「じゃあ、今からオグル族の村に行くわよ!!」

「ちょっっと!!待ってくださいな!!アンは場所わからないでしょう!!勝手に進まないでくださいまし!!」

こうしてアンがルンルンで山に入っていくのを皮切りに、

俺達も追うように山の中に入っていった。

もちろん、アンはオグル族の村の場所は分からないためダッキの案内で山中を進んだ。

山の中は残念ながら切り開かれた道なんてあるはずもなく、獣道が稀にあるぐらいため、生い茂った草木をかきわけながら進んで行った。

こんな山の中、俺ならすぐに迷いそうなものだが、ダッキは「オグル族の村長とは、50年以上前から知り合いですから、もう感覚でわかりますわよ。」とすました顔で言っていた。

それほど、その村長とはどれほど仲が良いのだろうか……。

ダッキにとっては友人でも、俺にとっては初対面の人物だ。敬意を持って話そう。(鬼ヶ島のオグル族は武士のように厳格で武士のような性格らしいからな。)

そして日を跨ぎ、一日半移動すると、やっとなにかが見えてきた。

「さぁ、着きましたわ」

草木をかきわけると、そこには村を囲うように、数メートルの木製の壁が反り立っており、門には屈強なオグル族の門番が二人いた。

角が生え、大柄で赤い肌を持つ。アスラ族とはよく似ており、鬼のイメージそのものだ。

「ぉお……」

村と聞いていたから、もう少し質素なイメージをしていたが案外迫力がある。

「村にしては迫力があるわね!!」

アンも同じ感想をいだいていたらしい。

そのまま、ダッキを先頭に門番に向かって歩を進めた。ダッキが村長と知り合いならば、入村の手続きは任せるとしよう。そうして門の前まで来たが、やはり警戒されたのか門番にとめられた。

「お前達……何者だ。」

「やっぱり警戒されますわね……。

うーむ…………じゃあ村長に、

妖術師 チョ・ダッキが用があって来た

とでも伝言してください。」

そうすると少し門番は不可解そうな顔をしたが、すぐに片方の門番が村の中に伝言をしに走ってた。

数分後その門番が帰ってくると、もう1人の待機していた門番に小声でなにかを伝えると、あっさり通ることが出来た。

「村長の友ならば、通さない理由はない」

とのことだ。

アンと俺達はその友人の仲間ならば、と特別に許可された。やはり人との関係は持つべきだな。

ニートであった俺は人望は意識しなくてはならないだろう。

そうして村の中に入ると、村の中は聖王国とは真逆な雰囲気だった。

木製の古びた住宅が数十件並び、畑のようなものが広がっていた。

だか、そんな古びた住宅並びの中央に、目を惹くような派手な装飾があり、とても巨大な建物があった。おそらく村長の家だ。

まさか…………自分だけ裕福する独裁者みたいなやつじゃあるまいな……。

その家に向かっていると、周りの村人はダッキを……というよりアンと俺を珍しそうに見ていた。

文献にもあったように、オグルと人は過去になんども争ってるため、争いが無くなった今でも、人族が村に入ってくることが珍しいらしい。俺の世界なら、人種差別だなんて言われそうな感じだったが、仕方あるまい。珍しいものは、どんなものであっても人はつい見たくなるものだ。

そうして村長の家の前についた。

「……おぉ……」

至近距離で見るとやはり迫力がある。

周りと同じく木製なのだが、金の装飾が屋根あたりに飾られ、壁には木製を生かした美しい文様が刻まれてあった。鬼ときいていたため和風なイメージをしていたが、どちらかというと東南アジアみたいな雰囲気を感じる。

「シャオショウ!!ダッキですわ!!

少し "重要" な要件がありますの。家に入っても宜しくて?」

ダッキが少し大きめな声でそう呼びかけると、大きな家のドアが開いた。

そのドアの先には1.9mもあろうかという巨体にもかかわらず、スラリとした筋肉質な真紅の体を持ち、蒼い髪に角が生え、鋭い目付きをした古風な鎧を身にまとった男が出てきた。

鬼の村の村長となると、威圧感が違う。

……やはり俺の中身は英雄ではないらしく、冷や汗をかいてしまった。

「………………入れ。」

低い村長の声が響き、その声に連れられるように俺達は家の中に入り、案内された長机の椅子に村長と向かい合うように座った。

家の中は外装とは裏腹にゴミ屋敷のように散らかっており、なにやら不穏な雰囲気を感じる。

「………………英雄が復活したと噂で聞いたが……本当に復活してたとはな。」

俺を見ながらそう村長は静かに呟いた。

その声はただの威圧感だけでなく、どこかつ疲れのようなものが含まれていた。

「…………まぁそんなことはいい。

その復活した英雄と、 その右腕の女剣士。そしてそれに仕える軍長が、このただの村の村長になんの用だ。」

やはり村長となると、人族と交流がないとはいえ、まぁまぁ現状の事は知っているらしい。

「じゃあペルクレス。 英 雄 として、

説明お願いしますわ。」

やはりなにか誑かされてるように感じる。

まぁいい。


それから俺は計画について説明した。

この革命を実行するための手順で、鬼ヶ島を経由しなくてはならないこと、そこで軍の協力要請が必要なこと。龍人族の転移魔術が必要なことを特に説明した。

村長はその話を疲れたサラリーマンのような顔で聞いていた。

「……とこんな感じなのですが。

どうか………………

俺達に力を貸してくれないでしょうか!!」

腹から声を出し、思いっきり頭を下げた。

弱々しくちゃだめだ。こーゆー時はキッパリ決めるのが1番いい。前の経験からそう学んだ。

そうするとしばらく沈黙が流れた。

最初の数十秒は耐えられたが、数分もたつと緊張と不安で冷や汗がダラダラでてきた。

まずいな、ダメなんじゃないかコレ?

よく考えたら相手からすればあまりに唐突な話だ。

…………そうすると村長が口を開いた。

「ダメだ。」

低く、そして力強い声が家に響いた。

………やはりダメだったか。

そりゃあそうだろう。だが、ここで諦める訳にも行かない。俺は人族を導かなくてはならないのだ。

「そこをなんとか……出来ませんかね?」

「……ダメだ。

俺にとって魔王が復活しようがしまいが、関係ない。

俺はこの村を、オグル族の誇りをただ守るだけだ。」

その目にはなにか強い意志を感じた。

この硬い強い意志を曲げることは難しそうだ……。

そう俺が半ば諦めていると、アンが俺と村長の間に眉と目を釣りあげ乗り込んできた。。

「あんた!!魔王が復活すれば、あなたの守るって言ってるオグル族なんて、簡単にやられてしまうわよ!!

同じ魔族ならわかるでしょ?!」

必死に訴えているアンに対して、村長はまたもや真顔で答えた。

「お前のような小娘に、オグル族を語る権利は無い……。」

突き放すような、同時になにか悲しいものが感じられるような冷たい声で村長は言い返した。

「アン、落ち着いてくれ。」

「だって、ペルクレス!!」

「確かに言いたいことはわかるけど。」

そんな会話を俺とアンがしていると、

その時ダッキがそれをかき消すように挑発口調で発言した。

「…………鬼山の大将と呼ばれてた男が……

ず い ぶ ん 堕ちぶれましたわね。」

村長はその言葉をきき、怒りが混じったような声と表情で反応した。

「どういう……意味だ!!!……。」

「15年前までのあなたは頼もしかったですけど……

今のあなたには頼もしさが何一つ感じられないって言ってるんですんですわよ、」

「…………」

「あなた、オグル族の誇りを守るとかお前にオグル族を語る権利は無いとか偉そうに言ってましたけど、

……

家族も守れなかった男が、そんなこと偉そうに言える権利はありませんわよ?」

その途端村長がテーブルを台パンで破壊し、すぐにダッキの元へ詰め寄り首元を掴んだ。

まずいんじゃないかコレ……?。

わざと挑発するのはきっとなにか策があるからだろうが…………。

「貴様ァァアそのことはもう話すなと

散々言っッッたはずだッッ!!!!」

目は血走っているが、何故かその目には涙も流れていた。怒りの涙だろうか、なにか悲しみが混ざってるように見えるが。

「グ……

……そんなに怒るぐらいなら、その家族の仇を討つべきじゃないんですの?。

オグル族の誇りを守るって言ってたのは、ただの敵を討てない自分への言い訳でしょう。」

最初、村長は怒りに任せてダッキの首を絞めていたが、しばらくして冷静さを取り戻さたのか、ダッキの首から手を離し、乱暴に椅子に座り直した。

俺とアンは、その様子をただ見つめることしか出来なかった。

「……………………

確かにそうだ。……………ぁあ確かにそうだ!!

俺は魔王軍から家族を守ってやれなかった!

種族の誇りなんかより大切なはずだった家族を守れなかった! 」

そうするとシャオショウは俯きながら自分語りを始めた。

「………………魔侵戦争が始まって数年たった頃、魔王軍がこの聖大陸に攻めてきたって情報がここ、オーガ郷に入ってきた。俺はその時、家族を置いていき、そのまま攻めてきた魔王軍を、仲間たちと撃退しに向かった。俺は周りに鬼山の大将と呼ばれ、頼られていたからか、戦闘好きな性格だったのが、そこでさらに悪化してしまった。

その後、かなり怪我を負って魔王軍をなんとかかなり減少させた後、家族にその戦果を報告するために村に帰った。すると村に広がっていたのは。

俺の家族とほかの村人が惨殺された後の地獄の光景だった。

その時はもちろん、復讐してやろうって物凄く魔王を恨んだ。

だが、同時に、もし、俺たちがまだその復讐に行けば、また誰か犠牲になるんじゃないか。

そんな恐怖に駆られた。その時にはもう俺の戦意は喪失してた……。」

「…………」

「だが、悲劇はそこでおわりじゃない……………気がつくと俺は……家族の死体を泣きながら………食ってたのだ。

……でもその死体を食うてを止めることは出来なかった……。

その時、俺は気がついたんだよ……。自分の罪の意識が、自分自身に 暴食グラトニーの呪いをかけてたってな………。

それ以来、ただただ空腹が続くようになった。

どんなに食べても腹が減るんだ………そしてなにか食べ物を食べる度に家族の死体を食ってたことを思い出し死にたくなる……………。

よく昔話でオグルが山蜘蛛として恐れられてるが……その 山蜘蛛 に俺は………なっちまったのかもな……。」

気がつくとシャオショウは俯きながら目から大量の涙を流していた。

…………想像を絶するような過去だ。いや、想像もしたくない……。

…………だが、人は何かのきっかけで堕ちて、そのまま堕落したままにしてると腐ってしまう。俺がいい例だ。

しかし俺は、その堕落から這い上がることが出来た。

堕落から這い上がるには誰かがなにか言ってやったり、強い刺激がなくては、這い上がることはきっとできない。

それはこの村長も変わりないはずだ。

なら、俺がここで、あの時のアンのように一言、なにか声をかけるべきじゃないだろうか。 俺が英雄なら、こんな人たちも救うべきじゃないんだろうか。

そう必死に考えを巡らせ、俺は勢いよく口を開いた。

「……あなたの仲間が犠牲になることは

心配することはありません。

魔王軍は山脈内に入ってくることはありませんし、もし入ってくるのなら、俺があなたの仲間を守ります。

……

そのグラトニーの呪いってやつも……この旅の中で治す方法が見つかるかもしれません……。

犠牲がでることへの恐怖で戦意喪失したなら、

もう魔王軍への復讐………できますよね?」

そう言った後に俺は村長に手を差し伸べてしまった。

まずいな、偉そうにしすぎてしまっただろうか?

敬意を持って話すなんて言ってたのに……。

そう心配しまたもや冷や汗をかいていると村長の怒っていた顔が一変し、1度考える表情になって、しばらくすると突然、口角が上がった。

「フッ…………なるほどな。

なら、もう村の中でウジウジと恐がっていることはできないな。

……いいだろう。

英雄よ、その計画、俺の復讐の為にも、そして俺の憎き呪いを解くためにも、協力してやろう。」

そう言葉が返ってきた後。村長が少し微笑んだ顔で、俺の差し伸べた手を取り、握手した。

とても力強く、暖かい手だった。

こうしてオグル族の村長を仲間に引き入れることに成功した。


その後話し合った結果。復讐が目的なため、革命が終われば仲間からは外れるとのことだった。

まぁ普通そうだろう。

また、鬼ヶ島のことについては、「俺に任せておけ」と、承諾してくれた。大将と呼ばれていたことはある。頼れる兄貴って感じだ。 年齢自体は100は超えてるっぽいから、人族的には長老だがな。

また、仲間を犠牲は心配しなくていいと言ってしまったため。オグル族の村の守護のためにダッキに教わりながら、俺の光魔術を使い、村を守護する光の守護精霊……すなわちホムンクルスを作っておいた。精霊は全てに宿る自我があるマナの塊のようなものだから、人工的に製作可能らしい。精霊自体は作ったことがなかったが、ダッキの指示どうりに、ハーブや体液や光魔術など、様々な素材を鍋に混ぜ合わせ、しばらくすると光とともに天使のような精霊が現れた。村長は頼れる兄貴だが、こちらは頼れる姉貴だな。

そんなことをしていると、すっかり夕暮れ時になってしまった。

そうすると村長が提案をしてきた。

「もう夕暮れか……。

龍人の元に行くのは明日がいいだろう。

夜中の山は暗闇で危険な上に、魔物が出やすい。

聖大陸はスピカ神の使徒ポリマの加護で魔物が発生しにくいのは確かだが、その加護も魔侵戦争で世界が崩壊した時点で、ゆらぎつつある。油断しない方がいい。」

その話は歴史……いや、神話時代の授業で聞いた。

人界と魔界が創られた時。世界にめぐみを与えるために、スピカ神の伝達者として使徒ポリマが初めて下界に降り立った場所が今のポリマディア聖王国を中心とした聖大陸だ。

それゆえ、その神聖な力が魔物を寄せつけず、魔大陸とは異なり、かなり平和な状態が続いている。

その途端、何故かシャオショウの顔がすごしにやけ顔になった。

「そんなことより、

友好関係の証として、今日は宴をしないか?

宴はいいぞ……酒が飲めるからな。」

「宴?!いいわね!!」

「私も別に構いませんけど……」

どうやら、この世界の鬼も酒と宴が好きらしい。

アンもダッキも同意してるし……

俺もするとしよう。これも付き合いというやつなのだろう。

「わかりました。やりましょうか。」

そうして宴の準備が2時間程度で行われた。

荒れた室内は俺たちの協力もあり以前よりは綺麗になり、先程破壊されたテーブルは新しい綺麗なテーブルに変えられていた。上にテーブルには美味そうな食べ物が沢山ある

今回の宴は、村長を見送る意味も含めた宴らしく、

村人も多く集まっていた。

そうして宴の準備が終わり、人も集まってきた所でシャオショウがスピーチを始めた。

「ゴホン……。

俺、シャオショウ・オーガディアは、明日から魔王軍への復讐のために、この英雄たちと旅に出る。

不安かもしれないが英雄たちが作ってくれた守護精霊(ホムンクルス)もある。

どうか、今日はその祝いとして飲んで飲んで飲みまくってくれ!!!」

そのスピーチと共に宴が始まった。

こうして計画どうり、村長の、シャオショウ・オーガディアを仲間に引き入れることが出来た。

次は龍人族だ。

今回みたいに順調に計画が進むことを祈ろう。


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