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3 英雄の魔術

異世界に転生し1月がたったペルクレス。

どうやら新しいことに取り組む様子。

3 英雄の魔術


目が覚めた。

目の前に見える天井は前世の見飽きた天井とは違う。

天井には豪華にも、美しい風景の絵が描かれており、それに朝日の光が照らされ、なんともエモーショナルな雰囲気を醸し出している。

アンとダッキの授業から、はや1ヶ月ほどの月日が経った。

あの授業で、様々なことを学んだ後、正式に本来王家の血筋などである貴族が使う部屋を王から頂いた。

この部屋は聖王国の中心にある、貴族が住む聖徒区のさらに中心にあるポリマディア城の全4階層の内、貴族などが基本的に住む3階層目にある。貴族用の部屋らしく、とても豪華であり、内装としては、先程も言ったように天井には一流絵師が描いた絵が広がっていて、床には美しい模様が描かれた絨毯がひかれている。それだけでも中々凄いのだが、ほかにはカーテン付きの広いベッドや、服を収納する用のでかいクローゼットや、様々な本が揃えられた本棚、その近くには当然のごとく、読み書きができる机が揃えられている。

無職だった俺には勿体なさすぎるような部屋で、実際にこの部屋に案内された時はつい遠慮してしまったほどだ。……しかしパソコンという俺の中で1番大切だったものが無いってのは残念だがね。

そして俺はその部屋に移り住んですぐ、この前決めたとおり、本棚の本などを使い勉強をすることにした。

無職であった俺だが、中学までは学年順位上位をキープするほどには真面目に勉強してきたため、決して勉強方法を知らない訳では無いのだ。

本棚を見ると、主にこのような本が目に止まった。

「死神リーパーの伝説」

「世界五代剣流」

「龍の民の伝説」

「各地の魔物、魔族図鑑」

「言語辞典(各種族別)」

「基礎魔導書」

などといった本だ。

まずはじめに「世界五代剣流」という本を手にしてみた。

4日ほどで読んだところ、内容としてはこんな感じだった。

この世界には大きく分けると、4つの剣術の流派がある。

まず、武神流。

武神パイストスが使徒であるズベンを通し、人族に初めて伝えた流派で、基本的に、まず我先に敵に攻撃を与えるのが流儀と言った感じの流派で、五代流派の中で1番オーソドックスであり、攻撃的といえる。

2つ目は、隠密流。

武神流が、現在東人が住む聖大陸の東方面の地域(タルタラス海洋側の海沿いあたり)に伝わり、武神流より、より素早く、より気配を消して敵に攻撃できるように改変された流派であり、人族以外にもムジャラ族などもよく使う流派。つまりは忍者のようなものだな。

3つ目は、戦人流。

武神流が、ムスペル大陸やスルト大陸などの南の地域に伝わり、武神流よりも、より力強く、おおざっぱな戦い方に改変された流派。

使われる剣は、モン○ンの大剣のような大きなものが多く、ムスペル大陸に住む火人や、スルト大陸のカークス国に住む魔族であるアスラ族などが使っている。

そして4つ目は、魔人流。

これは、武神流が変化したもの、というよりは、魔族が使用している、死神と呼ばれる種族不明の魔人リーパー・クォデネンツロードが魔界で開いた流派であり、剣術としては、攻撃的な武神流とは真逆の、相手の攻撃を待ち構え、カウンターを狙う流派である。

きくに、魔王国の軍の中では、あまり使われることはなかったらしい。相手の攻撃を待ち構えるといった動作自体が、相手を攻める戦争において不利だったんだろう。

また、この4代流派には、それぞれ「武神」「隠神」「戦神」「魔神」という、その流派の中で最強の人物がいるらしい。だが、この世界は正式な等級制度などが戦争の影響もあってか明確に整備されていないため、存在すら怪しい。

また、ほかにもこの1ヶ月で、「基礎魔導書」や、「魔族魔物図鑑」なども読んだが、ここでは省略しておく。

そして最近、「言語辞典」を読み、他種族の言語についての勉強をはじめた。

まず、世界的な言語としては、人族が使用する中でも、聖大陸あたりの人族が使う、最もポピュラーな言語である央人語。ムスペル大陸あたりで使用されてる火人語。ニフル大陸などで使われている北人語。聖大陸のタルタラス海洋沿いの東方の地域で使われている東人語など、人族でもかなりの言語に分かれている。

また、他種族の言語については、

魔王国など、魔王側の魔族が最も使う言語である魔神語。

アスラ族や、オグル族などの、鬼と呼ばれるような魔族が使用する鬼神語。

ドワーフが使う鍛人語、セリオン族が使う獣人語など、ほかにも様々な種族の言語があったが、今回は、1番汎用性が高そうで役に立つであろう魔神語を勉強したいと考えている。

全然では、勉強していたとは言ったものの、実際の所、英語が中々苦手であったため、正直習得できるようになるか不安だが、この言語辞典を読んでみると、かなり分かりやすく単語や文法がのっていたため、なんとかなりそうだ。

この世界ではこんな高度な本が出回っているのか…と思ったが、実際はそうではないらしく、本自体印刷技術があまり発展していないため出回っている数は少なく、あったとしてもかなり高額なんだそうだ。

金額(日本円にして1万円)が10枚必要な本もあると知り、中々にビビった。

やはり、貴族などに用意された部屋なため、特別にこーゆー本をおいているのだろう……ユピテル王に感謝だ。


そうしていつものように朝の準備をしていると、ドアのノック音が聞こえた。壊れそうなほどかなり強めであり、すぐに誰が部屋をノックしているのかわかった。

「ペルクレス!今日は魔術の模擬戦をするわよ!早く準備して部屋から出なさい!」

声の主はアンである。

実は数週間前あたりから、今日に魔術の模擬戦を行うようにダッキに頼み込んだのだ。周りから話をきくに俺は神の子の英雄ではあるものの、かっこよく剣を振りかざしていたわけではなく、杖を振りかざし戦う魔術師であったらしく、ならば魔術を使うことに慣れなくてはならないだろうと考え、模擬戦を頼み込んだ。

魔術自体、基礎魔導書を読んだり、窓から見える、ガルガリン軍の訓練の様子などを見て何となく知識やイメージは頭の中にある。

基本、魔術は「土」「風」「火」「水」の精霊に対応した四大要素を魔力で操る術であり、魔術を使用する際は、己に秘めるマナと呼ばれる生命エネルギーを、イメージにより魔力へと変換し、魔術の形を生成⇒放出する、といったピタゴラスで行う。

呪文を詠唱する際は、そのイメージを省いても魔術を使うことが可能らしいが、人によって、無詠唱でも詠唱でも向き不向きの魔術の要素があるらしい。

たとえば炭鉱民族であるドワーフは水要素が苦手であったりするのが代表例だ。

魔術も、組み合わせ用によっては雷などの魔術を操ることも可能らしいが、それが出来るのは魔術師の中でもひと握りとのことだった。

また、その魔術の中でも、神々や、それに仕える使徒族。そして神の子……つまり俺などにしか使えぬ光要素の魔術。「光魔術」というものも存在し、ペルクレスも1番使用していた魔術らしい。

名前の如く、光を操る魔術で、破壊光線のようにビームを出すことも可能だったり、また、光でつつみこみ怪我を治療することもできる、なんとも万能な魔術だが、扱いが中々難しいとのことだ。

俺は、今回の模擬戦で、その光魔術を使おうと思っている。

せっかくの固有スキルは使わなくては、意味が無いからな。 金貨をネックレスとして使っているようなものだ。

そう、考えながら準備をしていたら、気がつくと準備が完了していたため、そのまま部屋を出た。

部屋を出た先には、腰に手を当て、仁王像のように威風堂々とたたずみ、待機していたアンがいた。

「遅いわねペルクレス!早く行くわよ!」

その掛け声と共に、長い廊下を早歩きでアンについていくように歩き出した。

もちろん、監視に英雄だとバレぬよう、俺の見た目は妖術により変わっている。本来は俺は、ミケランジェロのようなほんとにギリシャ彫刻のような顔をしているのだが、妖術によって今その顔は平凡な青年の顔に変わっている。転生してそうそう、自分の顔を拝めないというのは残念な気もするが、仕方ないことだろう。

また、模擬戦を行うところに関しては、聖王国の中心部にあるポリマディア城から徒歩30分ほどの距離にある、軍兵が基本的に活動している軍事施設の訓練広場で行う。ポリマディア聖王国は城塞都市のように壁にかこまた円状の形をしており、パッと見、大した広さは無いように見えるが、実際に国を1周しようとすると、馬にのっても一週間はかかる、といった位には広い。

だが、その軍事施設は城からかなり近いため、先程もいったように、部屋の窓からでも訓練の様子がよく見えていた。なので少し楽しみな気持ちがあると同時に、不安感もある。

「魔術の模擬戦って…まさかアンが相手をするのか?」

なわけないとは知りだからも、冗談混じりにそんな質問をしてみた。会話の一環ってやつだ。

「私は剣士よ、魔術なんて出来るわけないじゃない!」

剣士であることに誇りを持っているのか、魔術が出来ないことを何故か自信満々に言い放った。

まぁ、当然の返事といえよう。アンの剣術は、以前訓練広場で行われていた模擬戦を見学させてもらった時に見たが、残像が見えてしまうほどの脚力と速さで相手に詰め寄り、隙を作らせることなく、上段の構えからの斬撃で、相手を完全に再起不能にしてしまっていた。

アンがいうに、戦争中に俺の右腕として、剣術の訓練をし、実戦にもかなりの回数参戦したため、そこら辺の生ぬるい剣士よりも技術力の差が圧倒的に違うとのことだった。具体的にどこが技術敵に差があるのかと質問すると、アンは剣士の中でも剣術を極めた者しか使えぬ御業。「涅槃の斬撃」という業を使えるといっていた。

涅槃の斬撃とは、それぞれの流派の本来目標にすべき戦い方を、一切の揺るぎや無駄を無くし行うことが出来る業……らしい。正直、曖昧で難しい言葉だが、無駄なく攻撃できるというのは、シンプルながらも隙がないということだから、まさに名前の如く、迷いという煩悩から解放された、熟練者の御業だ。


そして、30分ほど、アンについていくと、軍事施設や、訓練広場と思われる場所が見えてきた。

訓練広場ではすでに剣士同士や魔術師同士で模擬戦を行っており、そこら中で物と物のぶつかり合う銃声のような音がきこえてくる。

どうやら、魔王軍に監視されてはいるものの、決して条約には人族国家は魔族の支配下にあるとはのっていなかったため、軍事的な訓練や、技術の向上などは認められているようだ。

「あれはまさか、英雄の右腕のアン・ハヌマーン様じゃ………」

俺たちが広場に入ろうとした時、アンに気づいた周りの人々は皆口を揃えてそう呟きはじめた。そうして、その途端、訓練で雑音が鳴り響いていたこの空間一体は静まり返ってしまった。だがアンはそれを気にする様子もなく、ただひたすら広場のある一定の方向に進んで行った。

アンはやはり、軍に正式に所属していないとはいえ、おそらく単純な剣術では、人族の中でも上位のスキルを持つ上、戦争でもかなり活躍したためか、かなり有名なようだ。しかし、軍兵たちの様子を見るに、どこかアンに対する畏怖のようなものすら感じる。

やっぱりあの威圧感がそーゆーものを感じさせてしまうんだろうな〜……。

そうして、アンについて行き数十分歩くと、ちょうど軍事施設の入り口あたりについた。

軍事施設は西洋的な建物ではあるものの、周りの建物に比べ、素朴だが、それがなにかシンプルな威圧感を感じさせる。

入り口についたと同時に、施設の奥から、メガネを掛け細身で長身な、グレーのローブを着た、パッと見陰の匂いがする男が杖を2本持って既にこちらにやって来ていた。なんだか親近感が湧く。

「英雄ペルクレス様が、魔術の模擬戦を希望しているとお聞きしましたが?……どこにいらっしゃるのでしょうか……?」

その男はそう、俺がいるにもかかわらず真横のアンにそう声をかけた。最初俺は、(こいつ俺を無視しているのか?)と若干、妙に不安になったが、よく考えると妖術で変装しているため、俺が分からないのも当然である。やはり人間に対しての信頼が俺は薄い。

「はい、確かに俺が希望しました。」

俺が1歩前にでてそう返事を返すと、その男はこちらをむいて「なにを言っているんだこいつ」、と言ったような顔をした。やはり俺の予感は的中したようだ。

にしても、この男、一体何者なのだろうか?

「ペルクレスは、バレないように妖術で姿を変えてるのよ!ダッキから話きいてないの?!」

アンの怒鳴り声をきくと、その男はなにかを思い出したように、焦り顔になり、風を切る音が聞こえるようなスピードで頭を下げてきた。まるで手馴れる手つきで上司に頭を下げる社畜のようである。顔がそれっぽいので余計そんなふうに見えてくる。

「!!誠に申し訳ございませんでした!!

英雄ペルクレス様であられましたか!! 姿が変わっておられていたため、別人だと思っておりました!!

この御無礼、お許しください!!」

そうするとそのまま土下座のようなポーズをしそうになっていたためすぐ止めに入った。

「頭を下げないでください……こちらは模擬戦を希望した側なんですから」

そうするといまさっき謝ってきた男は、土下座の状態から立ち上がると、改めて頭を下げた。

そのポーズは貴族の挨拶の様であり、そこそこ良い家柄であることが伺える。ここあたりには貴族が住んでるため、実際に貴族出会ってもおかしくないだろう。

「ふぅ……では、改めて、

ダッキ軍長率いる、そしてペルクレス様の軍隊でもある《ガルガリン軍》の副長をつとめております。

ティハ・テウメッサでございます。」

この男、副長だったのか………。にしては、剣を持っていないし、戦場を走り回れるようなタフな男にも見えない。

そうするとティハは、先程から手に持っていた布につつまれた2つの杖の内、片方の杖をこちらに渡してきた。

「……こちらはペルクレス様が以前使用してらっしゃった。神杖、《ケリュケイオン》でございます。

模擬戦をするならば、いつも使用していらっしゃった必要でしょう。」

俺は杖を咄嗟に受け取り、そのまま杖をくるんでいた布をゆっくりと外した。

そこには、白銀に輝き、先端には浮くように金色に輝く魔石ついているまるで芸術品のような杖があった。

とても綺麗だが、同時にこれを俺は使いこなせるか、不安な気持ちはある。

「残念なことにダッキ様やユピテル王から記憶を無くされている……ということですが。

試しに1度、試し打ちをしてみますか?」

俺は無言で頷いた。練習をするつもりで元からそう頼むつもりだったから実に助かる。

(というかこの男が模擬戦の相手なのか……。)

そうするとティハは少し距離を離れると、その場に3mほどの土人形を作り出した。本来詠唱魔術というものは、口に出して唱えるため数秒かかるものなのだが、ティハはかなり詠唱を省略して土魔術を使用していた。やはり副長というだけ、鍛錬を積んでいるのだろう。

そうして、ティハは、「試しに詠唱をし、魔術を使用してみてください」と言い残すと、その場から離れるように距離を置いた。

俺は近くに人がいないことを確認し、ゲームや軍兵達の見よう見まねで勢いよく土人形に先端が向かうように杖を突き出した。

で…………詠唱だよな。確か光魔術の詠唱はイレギュラーな魔術だから、基礎魔導書には乗っていなかった。

しかし、神話の書物を以前、興味本位で読んだ時に、魔術の神が呪文を詠唱することで、光線を放つ魔術を使っていたのを見た。きっとあれこそが、光魔術だろう。

えぇっと……確かその呪文はこんな感じだ。

「森羅万象に光を与えし万の神や、天の精

森羅万象の権化である、偉大なる支配者よ。

その神秘を秘めたる光明を我の意思の元に集結させ…………」

そう、なんとか頭の奥から記憶を引っ張り出し呪文を唱えていると、なにやら不思議な感覚を感じた。

杖を強く握っていると、手のひらに全身の血液が集中していき、なに者かの手によって急激に気が吸い上げられる感覚がしたのだ。

正直、俺がいままで感じたことがない、なにかに形容することが困難な感覚で、魔術というものはこんなにも気力や体力を使う術なのか、ととても感動した。

そして俺は詠唱を続ける。

「この場に、聖なる光柱を降ろし、暴虐を尽くす大天魔を清めたまえ。

………《オーディンセラス》。」

そう呪文の詠唱をしおえた途端。吸い上げられる感覚がジェットコースターのように段階的に上昇していくのが伝わった。そのせいか、杖を持つ手は異常なまでにブルブルと震えだした、何とか今踏ん張っている。

………その時直感で、光魔術が放たれると理解し、俺は杖をさらに前に突き出した。

その時、周囲が一瞬、光に包まれた。

そうすると、杖の先から光り輝くレーザーのようなものが一瞬にして放出され、それは人形を跡形もなく粉々にした……というわけではないが、人形を少し吹き飛ばすことには成功した。

それに遅れて、鼓膜が敗れそうなほどの爆音が鳴り響いた。

「…………はぁ……はぁ……」

気力を使いすぎたせいか膝を地面に着いてしまった。

「………すさまじいですね、ペルクレス様の光魔術は……。」

ほかの魔術は土や風などなのに対して、これは破壊光線とかいう殺意レベルMAXの魔術だ。

使い方に気をつけなくては、最悪仲間を巻き込みかねない。

「やっぱり光魔術は凄いわね……。」

魔術を得意としないアンでさえ、こんなに見惚れるのか………、やはりこの世界では強力な魔術なのだろう。

「しかし、以前のペルクレス様の魔術よりも、威力がかなりおちてますな……。

やはり記憶が無くなった事となにか関係が……。」

その原因はやはり俺が前のペルクレスとは中身が違うからなのだろう。魂ってものがあるかは知らないが、体が同じでも、神の子の魂と、クズニートの魂では生命エネルギーもきっと大分違いはずだ。

生命エネルギーは精神エネルギーと、どこかの某劇画漫画も言っていた。

だが、このままの威力だとティハの四肢が吹き飛びそうだな……。しばらく練習させてもらおう。

「………この威力だと、模擬戦でティハさんがかなりダメージを負ってしまうのでは……?」

そう質問すると、ティハの能面ズラが一瞬誇らしげな顔へと変わった。

「これでも私は軍長になるため、鍛錬を積んだ身……。

ペルクレス様に対しての忠誠は消えませぬが、私の力を舐められては困りますな……。」

そうすると、ティハはケリュケイオンとはまた別の、布に包まれた杖を取り出した。布を取り外すと、

なにやらシンプルな杖が現れた。

「この杖は、ムスペル大陸にあった灼熱の迷宮に封印されていた、呪杖レーヴァテインです。

私の愛用するこの杖で今回は模擬戦を致しましょう。」

迷宮に封印されてた呪杖…………、遠回しに迷宮にもぐれるほどの実力があると言われているように感じる。

そして、そのまま模擬戦を始めようとした時。

奥から数人地ならしのような走る音が近づいてくるのがわかった。

「貴様らァアッッ今の光はなんだッッ!!訓練にしては派手すぎじゃあないかぁ?!」

赤い肌を持ち、4本の腕を持ち、鎧を着た魔族数人が怒鳴りあげ広場に向かってきた。

前も見たことあるが、このポリマディア聖王国の内、聖徒区を監視している魔王国から派遣されてる魔王軍だ。

さすがに目立ちすぎたか。なにか説明しなくちゃダメだろう……。 だが、つい足がすくんでしまう……まずい、舌が回らない。

「す……す……みませんでした。まだ、ここに仕える魔術師になり、ひと月ほどであるがゆえ、爆発魔術を使用してしまいました………、

どうかお許しください。」

頭を土下座をする勢いで下げ、そう謝罪した。

こーゆー場合は変なプライドを持たず間に謝罪するのが1番だ。……きっと、見た目も妖術で変わってるはずだから大丈夫なはずだ。

「…………爆発魔術ねぇ……。」

そう呟きながら監視はジロジロみてきたが、しばらくするとなにかメモ本らしきものになにかをかきはじめた。

「………まだブラックリストにいれるだけで許してやる……。

もし次怪しい行動をしたら、……分かっているな。」

そういい放つと、地面が少しひび割れるまで踏みつけ、監視はどこかにに戻って行った。

……なんとか許して貰えたようだ。

だが、見た目からしてカ〇リキーのような魔族だったから、さすがにビビったな。

「…………危なかったですな…………監視の魔王軍でしたか。……………しかもアスラ族の……。」

「アスラ族って、カークス国にいる魔族でしたね?」

「はい、アスラ族はオグル(鬼)族と近種であるため、マナが多く力が強い上に、オグル族と違い好戦的ですので魔族の中でもかなり危険な魔族です。

……アスラ族1人だけならまだしも、複数人になるとかなり厄介ですから、見逃して貰えてよかったですな…。」

ため息を着くようにティハがそう話した。

同時に俺も、安心のため息を大きくついた。

「では、模擬戦、初めましょうか?」

「はい、、そうしましょう。」

監視によって、中断されそうになったものの、なんとか模擬戦を始めることができそうだ。

「はい、是非、お願いします」

その返事と共にお互い、広場の真ん中に移動し、距離を広げた後、お互い向き合うように構えた。

ティハの顔つきを見ると、先程よりも眉がつり上がっており、強い気迫を目を通して感じる。

「では、私が審判を行いますわ、軍長抜きは悲しいですわよ?」

聞いたことのある声だと思い振り返ると、やはりダッキがいた。ダッキはそのまま俺とティアの間あたりに

審判らしくたたずんだ。

「ダッキ軍長、お願いします」

そのティアの声と共に、沈黙が静かに流れた。

模擬戦が始まると俺は察し杖をティハとほぼ同時に、風を切るように勢いよく構えをとった。

……

そしてそれと同時にに、その沈黙を打ち破るようにダッキの声が訓練広場全体に響いた。

「ではッ始め!!!」

「大天魔を清めたまえ!オーディンセラス!!!!!」

その時、俺は先に杖をティハに向けて、省略した呪文を唱えた。

先程の人形を使った練習で、魔術を使う時の感覚をなんとなく覚えたため、いわゆる無詠唱というものを使えるように、試しに省略したのだ。

魔術を使う時は、手に力を込め、念力を杖先に集中させるようなイメージを脳内でした。魔術というものは、マナや魔力変換だけでなく、その使う人の想像力と精神力も必要とすると、魔導書にのっていたからな。

「ヴォォォォン」

イメージ通り杖の先からティハに向かい、光線が放たれた。

その時、「上手くいった!」と思ったが、ギリギリのところで横にかわされてしまった。魔術師といっても訓練された軍隊であるから、やはり身体能力も鍛えられているようだ。

「万の神々が創りし大地、そしてその大地に宿りし土の精よ、我に力を分け与えたまえ

大地の怒り《ガイアスモス》」

そうティハが詠唱を始めると地面が

物凄いスピードで、ドリルのように変形しこちらに向かってきているのが理解出来た。

「オーディンセラス!!!!」

同時にこちらも光線をドリルに変形させるようなイメージで、先程よりもマナを多く、そして凝縮するように魔力に変換し、そのまま高密度な光線を発射した。

……

その時、俺のオーディンセラスとティハの土魔術のガイアスモスが同時にぶつかり合い、その影響で衝撃波が生まれ、強い台風のような風が発生させた。

「ガッッッッッ」

俺は、その風に殴られるようにぶつかってしまい、3mほど空中に舞い上がったのち、そのまま地面に落下してしまい、叫び声をあげながら吐血した。

どこか骨折してしまったかもしれない………。

……一方ティハのほうは、というと………。

「!!大丈夫ですか?!ペルクレス様!」

その風に吹き飛ばされることなく、傷はおいながらもピンピンとしていた。

さらに俺の心配までしてくれて、そのまま悶え苦しんでいる俺の元にかけより、治癒魔術のヒーリングをかけてくれた。

めちゃくちゃ悔しいし、情けない………。

正直、オタクだった俺は心の片隅で俺TUEEEE系のなろうのような、無双展開を期待していたが……やはり現実、そう上手くいくはずないよな………。

「勝者!! ガルガリン軍副長 ティハ・テウメッサ!」

そのダッキの結果発表と共に、模擬戦が終了した。


「ペルクレス!!大丈夫だった?!」

「あぁ……なんとかな。惨敗だったな………光魔術っていうやつも、万能じゃあないんだな。」

アンにまで心配される始末か………。

………よし、明日からティハに頼んで毎日魔術の特訓をすることにしよう。 きっとやってくるだろう、俺が人族を導くその日に備えてな。

「惨敗……でしたけど、ティハに傷を付けれただけで上等、と見るべきでしょうね。

ここにいる軍兵でティハに勝てる者は、ティハの弟と、私ぐらいですから。」

ふむ、そうなのか。

……まぁはじめての戦闘にしてはよくやったと

思っておくか。


夕焼けが城や周りを照らす中、こんな会話を交わしあい、俺たちは城内へと帰って行った。

今日はぐっすり眠れそうだ。

ペルクレスは半神で光魔術を使える最強ともいえる魔術師でしたが、今のペルクレスは魂がクズニートなので、強いとは言い難い。

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