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-9-「おっちゃん。この肉は何の肉だ?」

「知らない天井・・・いや、宿屋の天井だ」


 頭が痛い。二日酔いの3倍くらいの痛さだ・・・

 俺はゆっくりと起き上がって周りを見渡す。服装を見る限りドラゴン討伐に出かけたままの格好で寝ていたようだ。

 闇黒刀と漆黒刀は普段、時空間魔法に収納している。

 盗まれても良いような物しか持ち歩かないようにしているが、ポーチの中のオークの魔石も無事だった。


 たしか・・・ドラゴンに魔法を使って。その後どうなった?

 誰かが宿まで運んでくれたのか?ドラゴン討伐は終わったのか?

 ・・・思い出せない。


 窓から明るい光が入って来るから昼間だな。だが1階の食堂は非常に騒がしい。

 昼間っから冒険者が依頼も受けずに騒いでいるようだ。働けよ!

 今まで寝ていた俺が言っても説得力は無いな。


 状況がわからない。ギルドに行って聞いてみるか。

 俺が1階の食堂に降りると、おばさんが声をかけてきた。


「あんた生きてたのかい。目覚める前に宿代が無くなったら捨てに行く所だったよ」


 このおばさんは、本気なのか冗談なのか判断が出来ないな。


「俺、どのくらい寝てたんですか」


「2日前の夜に運ばれて来たんだよ。ギルドに行って礼くらい言いなよ」


 そんなに寝てたのか。そりゃあ、腹も減るよな。



 俺は菓子パンをかじりながらギルドに向かった。

 途中、子供達が話してる声が聞こえた。


「ドラゴンの頭って、でっかいねー」


「肉も旨いらしいぞ」


「食べてみたいねー」


 どうやらドラゴン討伐は成功したようだ。



 ギルドの中は大勢の人で賑わってた。

 俺は列に並んで順番を待っていると、カウンターから大声が聞こえた。


「あんた・・・そう、あんた。2階のギルドマスターの部屋に行きな」


 ギルドに来るのは3回目だが、既に俺の顔は覚えられたらしい。

 並んでる大勢の冒険者から、無駄に注目されながら2階へ向かった。



 コンコン


「入れ!」


 部屋に入るとギルドマスターが書類に埋もれながら仕事をしていた。


「ソータか。無茶しやがって、目覚めて良かったな。これが報酬の金貨100枚だ」


 袋をデスク越しに渡された。結構な重さが有る。


「ドラゴンを倒したのは、俺ですか?」


「そうだ。だからお前の取り分が一番多い。だが魔力の使い過ぎで倒れたんだ。最悪死んでたぞ」


 やっぱり魔力が尽きると死ぬのか・・・気を付けよう。


「ドラゴンの魔石は貰えますか」


「魔石?石の事か。領主経由で国王に送られると思ったが。頭さえ有れば国王も文句言わないと思うが、貰えるか確認しておく」


「それで、出来ればゴブリンやオークの魔石・・・魔物の石も買取したいんだが、依頼って出来るのかな」


「あんな物買い取って、どうするんだ?・・・腕の達つ奴に限って、変な奴が多いからな」


 俺は袋から金貨20だけ出してポーチに入れ、残り金貨80枚を袋ごと渡した。


「これで買えるだけ買って欲しい。1つ当りの金額はギルドで決めて良い」


「随分と大盤振る舞いだな。お前の将来が心配になるぞ」


「依頼料が足りなくなったら言ってくれ、継続するかはその時に決めるから」


「・・・そうか。ところでお前が使ったあの魔法はなんだ?」


「あれは、光魔法と火魔法と雷魔法を同時に使ったら出来た」


「光魔法も使えるのか。見つからないようにしろ。以前も話したが、使える奴は極端に少ない。見つかったら王都に呼ばれて戦争の道具にされるぞ。王都行きならまだ良い方だ、気を付けろよ」


 ハァ。戦争の道具ならまだ良い方って、最悪はどうなるんだよ。


「わかった。気を付けるよ」


「石の買取は明日から始める。魔力が回復するまではゆっくり休め」




 俺は街中を買い食いしながら宿に戻っている。

 魔力が尽きたって事は、たぶん時空間魔法に溜めた魔力を削って生命維持されたんだよな。明日の朝まで待ってから日本に戻るか。


「おっちゃん。この肉は何の肉だ?」


 美味しそうな肉を焼いてる露店があった。凄く良い匂いだ。


「オークだよ。1本銅貨3枚だ」


 やっぱりオークか。そう言えば、時空間魔法にオークがまだ11匹入ってるんだ。どうしよう。


「おっちゃん、オークがそのまま1匹有るんだけど買わない?」


「捌いてないのか、俺だってそこまで暇じゃねえよ。そういうのは解体屋に持って行きな」


 捌く専用の店があるのか。日本で言えば肉屋なのかな?


「解体屋ってどこにあるんだ?」


「ギルドの向かいにあるだろ。見た事ないのか」


 全く気が付かなかった。早速行って見よう。



「こんちわー。解体を頼みたいんだが、料金を教えてくれるか」


 店の奥から出てきたのはオークみたいな女性だった。


「手間賃は2割だよ。オーク1匹の買取なら銀貨1枚を差し引いて銀貨4枚で買い取ってる」


 なるほど。オークは銀貨5枚の価値って事か。銀貨の価値も今一わかってないんだが。


「相談なんだが、オークが10匹有る。7匹分の肉を戻してくれたら、料金をタダに出来ないか?」


「・・・まぁ良いか。店の奥に運びな」


「今日中に出来るかい?」


「日暮れまでには終わらせるよ。その頃にまた来な」


 これで食用の肉として手に入るぞ。日本に戻ったら誰かに毒味をさせよう。

 ギルドのおばさんか、村長でも良いか。日頃お世話になってるし、老い先も短そうだし・・・


この物語はフィクションです。  

実在の人物・団体・地名とは一切関係が無いとは限りません。


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