表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/49

-3-「あぁ、感じます」

「・・・なんだ、この騒がしさは」


 翌朝、騒音で目が覚めた。1階の食堂が騒がしいようだ。

 今日はギルドで魔法を教わる予定がある。眠たい目をこすって起き上がる。


 仕度をして1階へ降りると、食堂では冒険者がガツガツ喰ってる最中だった。

 大声で話して、食べての繰り返しだ。ワイルドというか、ガサツと言うか・・・


 空いている席に座ると、おばさんがテーブルにやって来てた。


「朝食は、Aが銅貨2枚でBが銅貨3枚だけど、どっちにする?」


「Aでお願いします」


 そう言って銅貨2枚を出した。

 出てきたのは、パンとスープだけだ。隣の席を見ると肉が皿にのっている。

 あれは何の肉だ?ゴブリンじゃ無いだろうな?何の肉かわからないのは食べたくないぞ。


 パンを手に取ると・・・硬い! これは食べ物なのか?釘が打る固さだぞ。

 スープに浸して食べるか。だが、そのスープも微妙な味だ。

 何の野菜か見た事ない物が入ってるし、旨味も何も無い。薄い塩味以外感じない。


 あれ程騒がしかった食堂が、気が付いたら静かになっていた。

 あれ?誰も居ないぞ。


「あんた、いつまで食べてるんだい。もうギルドは開いてるよ」


 思わず腕時計を見たが、止まってる。

 異世界の1日が24時間とは限らないので、時計を見ても意味は無かったが反射的に見てしまった。

 まあいいか・・・薄味のスープを一気に飲み干し、パンは残した。



 ギルド内は既に長い列が出来ており騒々しかった。

 順番を守ろうとしない者が、殴り飛ばされた。床に転がった所を、便乗して蹴ってる者までいる。

 あの列に並ぶのか・・・勘弁して欲しい。

 第一、こんな朝早くからギルドマスターは居ないだろう。人が減るまで依頼ボードをゆっくりと眺めていよう。


 オークの討伐10体で銀貨3枚か。

 ドラゴンの討伐。って、ドラゴンがいるのか!なんて物騒な世界だ。

 ドラゴン討伐は、日付指定で希望者を集めるのか。今日が何日かも知らないし、カレンダーも見当たらない。誰かサッサと討伐して下さい。


 ようやくカウンターが空いたようだ。


「あ!あんたか・・・ギルドの裏側に練習場がある。外から回ってくれ」


 言われるまま外に出て、ギルドの脇から路地を通って裏側に出た。

 数人が剣の稽古をしている。


 カンッ、カンッ と打ち合っていた。


 中々の力で打ち合ってる。ヘタに当たるとケガするだろう。

 次の打ち込みで木剣が弾かれ、クルクルと飛ばされた。


「あ!しまった」


「しっかり持て!魔物は待ってくれんぞ。あとは自主練だ。剣を飛ばされないようにしっかりやれ」


 生徒らしい数人が、互いに対戦を申し込んで打ち合いが始まった。

 教えていた人が俺の所へ歩いてきた。


「お前だな、雷魔法の素質があるらしいな」


「はい」


 ヤベー。スパルタ方式か。ケガはしたくないぞ。


「俺はギルドマスターのガンジだ」


「わたしはソータです」


「そんなに緊張しなくて良い。カミナリは見た事があるか? あるなら思い出してみろ。それから魔力を体内に集めるんだ」


 雷をイメージしながら、体内に力を込めた。5分が経過しても何も起こらない。どうすれば良いんだ・・・


「魔法は見た事があるか?」


「ゴブリンが使ってるのを1度だけ見ました」


「ゴブリンの魔法では参考にもならないな」


 ギルドマスターが俺の後ろに回って、背中に手の平で軽くさわってきた。


「これが魔力だ」


 なんだ。この温かい感じは・・・体の中に何かが入ってくる。


「あぁ、感じます」


「それを更に集めろ。魔力が集まったら、カミナリを思い出しながらあの目標に放て」


 20m離れた場所に練習用の木人が何本も立っていた。


 意識を体の中の温かい物に集中すると、更に集まってくるのを実感できた。集まり過ぎて自分の中から溢れそうなくらいパンパンの状態だと感じる。右手を木人に向け、カミナリのイメージで放出する。

 急に体中の力が抜ける感じがした。

 空が一瞬暗くなり、ビカッと光ると同時に『ドガン』と音が響いた。亀裂の入った木人が燃え出した。


 これが魔法なのか? 今のは俺が放ったカミナリなのか・・・


「なんだ。1発で成功しやがったな。お前は才能があるようだな」


 その後もギルドマスターから色んなレクチャーを受けた。


 左下の画面に表示されている時間が”00:50:24”になってる事に気が付いた。

 そろそろ人気のない場所に移動しよう。俺自身、どんな風に転移するのか見当も付かない。人目を避けないと騒ぎになっても困る。


「今日はありがとうございました。この後、用事があるので失礼しても良いでしょうか?」


「まぁ良いだろう。魔法の練習は毎日行え。魔法が使えるのは数千人に1人だ。才能に溺れるなよ」


 俺は礼を言ってギルドをあとにした。

 正門を出て、人がいない森の近くまで走った。

 表示されている時間を見ると”00:02:05”だった。ギリギリ間に合たようだ。


 表示が”00:00:00”となった次の瞬間、読めない文字が点滅を始めた。

 左の人差し指で点滅している場所を押すと、自宅のリビングにいた。


 目の前のテーブルに置きっぱなしのスマホを手に取り、日付と時間を確認する。

 6月10日15時14分


「はぁ!?どういう事だ」


 俺は異世界に24時間くらいはいたハズだ。少なくとも1晩眠っていた。なのに1分か2分しか経ってない。

 地球と異世界では時間の流れが違うのか?・・・謎だらけだ。


 なんだ?画面に新しく表示が出ているぞ。

 ”時空間魔法取得”

 異世界は時間も空間も異なるって事か・・・


この物語はフィクションです。  

実在の人物・団体・地名とは一切関係が無いとは限りません。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ