-23-「何かトラブルですか?」
ピンポーン
「おはようございます」
朝早くからナツが来た。
「おはよう。どうした?練習が上手く出来ないのか?」
「いえ。大切な事を決めて無かったので意見を聞きたくて来ました」
「・・・まぁ入れよ。茶は出さないけどな」
「高越時さんの事を何とお呼びすれば良いかと考えたんです」
何を言ってるんだ?そんなの、なんでも良いだろ。
「先生、師匠、プロフェッサー、あるじ、ご主人様、ダーリン、どれが良いですか」
後半のは選択肢としてオカシイだろ。
「・・・ナツはどれが良いと思うんだ」
「私は、師匠かダーリンが良いと思います」
「・・・じゃあ、師匠で」
「師匠!これからもよろしくお願いします」
ナツはマジメな性格だ。マジメ過ぎて少しオカシイ所がある。気を付けよう。
「それよりも学校は良いのか?そろそろ仮設だが学校も始まるだろ」
「師匠、聞いて無いんですか?覚醒者になったら通常の学校には通えません。来週国会で法律が通るらしいですよ。姫小路部長が言ってました」
「え?そうなの?じゃあ、ナツはこれからどうするんだ」
「獅子乃原学園で学びながら、探索者として働く事になります」
「そう、なのか・・・高校に行けなくなったのか。悪い事したな」
「私が決めた事です。師匠が謝る必要無いですよ」
今日も獅子乃原ダンジョンのスライム討伐を終えた。
最近の俺はスライム専用のスライムハンターだ。毎日獅子乃原ダンジョンと八木乃原ダンジョンのスライム討伐をしてる。
討伐数は毎日400匹を超え、俺の資産は毎日2億5千万円以上増え続けてる。
ダンジョンを出ようとしたら、村長が入ってきた。
「村長、何か有ったんですか」
「この子たちの訓練だよ。スキルが見つかったんでな」
【流后桜子】
筋力上昇の素質
【古糊葉子】
素早さ上昇の素質
【空壺喜一】
筋力上昇の素質
鑑定すると素質が見える。魔法以外にもこんな能力があるのか。
「ワシの孫娘に素質があったのには驚いたがのぉ」
流后桜子は村長の孫娘でまだ高校生だと思ったけど。
他人様の家庭には口を出さない方が良いか。
翌日には3人とも素質を開花させスキルとして能力を発揮させた。
村長の鑑定能力もギルドからお墨付きが出た。
こうなると、村長は毎日が大忙しだ。
毎日毎日バスでやって来る鑑定依頼者を、ダンジョン内で鑑定しまくってる。
鑑定料は麻桐弁護士の豪腕により1人10万円に決まった。
当初、ギルド側は高過ぎると難色を示したが、
「覚醒者に成りたいなら本気度が必要だと思いませんか?遊び半分の軽い気持ちの者を覚醒者には出来ません」
麻桐弁護士の説得に屈した。
鑑定希望者は、10秒で鑑定が終わってもクレームを入れない契約書にサインしてからの鑑定だ。
弁護士費用として10%。ギルド側も手数料として10%の取り分となったので村長は80%だ。
それでも、大型バスが1台到着すると45人は乗ってるので、360万円の収入になる。
毎日10台から15台のバスが到着するようにギルドが調整しているようだ。
村長は毎日3時間から4時間、ダンジョン内で鑑定をしているが本人は元気いっぱいだ。
ただ、村長としての仕事が出来ないので辞任する事になった。
村長は日当4千万円の仕事でウハウハだ。
毎日それだけの人が村に来ると食事などの提供も必要になる。
村に新たな産業が生まれ、村人の雇用が進む。
村全体が好景気に沸いている。
限界集落の為高齢者が多いが、70才を越えても現役バリバリだ。
俺がコッソリ光魔法を使ったり、スライムの魔石を使って強制的に働ける体にしているのは本人にも内緒だ。
村は関係者以外立入禁止が続いている。
新規で移り住む事は出来ないが、村の出身者や村に家族がいる者は特例として認められた。
その為、都会に出て行った若者が村に戻って来ている。
人口の激増が止まらない為、俺が買収した土地の一部にマンション建設も始まった。
魔法学園は村長の頑張りもあって、順調に生徒を増やしている。
だが、思ったよりもスキル保持者が多くなった為、魔法科とスキル科が出来た。
俺が作った、孤児院とんでも農園は村の食料を支えている。
ほうれん草などの葉物野菜なら半日。大根やトマトなら1日。米や小麦なら2日で収穫出来る、とんでも農園だ。
どんなに人口が増えても、子供達だけで食料生産が可能だ。
「ワザワザ来てもらってすまない」
俺は姫小路に呼ばれた。
俺は怒られるような事はしてな・・・していてもバレてないと思うぞ。
「何かトラブルですか?」
「今週中に日本とアメリカの間で合意が見込める状況になったわ。来週にはアメリカから探索者が数名来る予定よ」
「もしかして、その指導を俺に?」
「アメリカ側から指名されたらしいわ。政府が条件を呑んで、ギルドも断わり切れなくなったのよ」
「だが、素質が有るかは別の問題だ。無ければ俺が指導しても意味が無い」
「そこは了承済みよ」
「・・・わかった。俺、英語わからないけど通訳はどうするんだ」
「必要な物は全部アメリカ側で用意するらしいわ。通訳もね」
「それは、凄い気合の入れようだな」
俺のスマホが鳴った。母からの着信だ。
「どうぞ」
俺は廊下に出て、電話に出た。
「総太、大変よ。警察が来て父さんが連れて行かれたの」
「どうして」
「父さんの会社で誰かが死んだらしいけど、詳しくはわからなくて・・・」
父が勤める会社は、魔石関連で上場した会社だ。
俺から見ても、間の抜けている父は犯罪を犯せる頭脳も度胸もない。
何か裏がありそうだ。
「母さん、知り合いの弁護士に相談するから心配しなくて良い」
いつも明るいだけが取柄の母が泣いていた・・・。
まずは、麻桐弁護士に連絡だ。
「という事しかわからないんだ。面会して状況を確認して欲しい」
部屋に戻ると姫小路が待っていた。
「申し訳ないが話が聞こえてしまった。私は元検事だ。こちらかも手をまわそう」
「良いのか?俺は助かるが、トラブルに巻き込む事になるぞ」
「何を言ってる。貸し1つを返すチャンスよ」
この物語はフィクションです。
実在の人物・団体・地名とは一切関係が無いとは限りません。