-2-「そっちも見せてくれ」
宿屋のおばさんに教えられた靴屋の隣に、武器屋があった。
それなりの大きさの店だ。飾られてる物は、どれもこれも鈍らだ。
鍛造された物は見当たらなく、鋳造された物だけのようだ。
この大剣なんかは、重さで叩き切るような物だ。
タルの中には更にガラクタの武器が突っ込まれていた。
黒い刀が俺の目にとまった。刃渡り30cmで、刃は切れそうにない。
刀に触れると、急に半透明な画面に表示が現れた。
”漆黒刀、魔力次第で切れ味が変わる”
この漆黒刀からも微かな魔力が漏れ出してるのが見えるぞ。
「にいちゃん、丸腰じゃカッコ付かないだろ。何か買ってきな」
「これは、いくらだ」
「それは銀貨1枚だよ」
「買った!」
「にいちゃん、気にいったみたいだな。もう1つあるけど買うか」
「そっちも見せてくれ」
「せかすなよ・・・こっちのは刃渡りが長いから銀貨2枚だよ」
手に取って見せて貰う。刃渡りは70cmもあった。
”闇黒刀、魔力次第で切れ味が変わり、斬られた者の能力を奪う”と表示された。
どんだけの刀だ。凄過ぎるぞ。
ちょっと興奮しながら、銀貨3枚を手渡した。
「まいどありー」
表示された通りなのか試してみたい。
試し切りをしたいが、魔物を狩るしかない。
「冒険者ギルドって何処か教えてくれるかな」
「店の通りを右へ行って、大通りで左に曲がれば見えてくるはずだ」
「そうか。ありがとう」
ここがギルドか・・・壁のボードに依頼書が貼ってある。が、読めない!
依頼書を1枚1枚見ていると、”文字翻訳取得”と表示された。
《ゴブリン10体の討伐 右耳10枚を提出 報酬、銅貨20枚》
初心者は登録せずに討伐部位を持ってくれば、金に換えてくれるらしい。
仕事振りを見てギルド職員が登録するらしい。
そんな事が依頼書の下に注意書きしてあった。
「なるほど。実力を示さないと冒険者には成れないのか」
あ!矢印が表示された。
視界の左下の半透明な画面に、立体的に矢印が表示された。どうやらゴブリンの所まで案内してくれるようだ。
正門を出て走り続けた。矢印は森の方向を指し示してる。
森から数m入った所でゴブリンが見えた。
急いで木に隠れ、闇黒刀を握った。
・・・そう言えば、俺に魔力ってあったのか?
刀から出ているのは見える。見えてるならあるに違いない・・・
闇黒刀を見詰めながら力を込めた。
ブワンッと赤っぽいオーラが刀身を纏った。これなら行けるぞ。
俺は木から出て走った。ゴブリンも気付いたみたいだ。
3体のゴブリンが「ギーギー」と叫びながら向かってきた。
なんだ、ゴブリンの動きが遅いぞ。
振り被ったゴブリンの首と腕を、一気に斬った。
何の手応えも無く斬れた。そのまま返す刀で次のゴブリンを斬り上げた。
ゴブリンの胴体が斬れて、ずり落ちた。
左から、火球が飛んできた。
え!魔法なのか・・・ダンジョンで魔法なんて、見た事も聞いた事も無いぞ。
急いで後方に飛んで避けた。間一髪だ。
危なかった。ゴブリンが杖を振り被った。
俺はそのタイミングで左に避けた。
後方から熱を感じる。地面がメラメラと燃えているようだ。
俺は必死に走り、ゴブリンが杖を振り下ろす寸前に斬った。
あ!何か熱いものを感じる。”火魔法取得”と表示された。
魔法・・・本当にあるのか。熱いものを感じたのは魔法取得と関係があるのか?
ゴブリンの杖を振ってみたが魔法は発動しなかった。
火球が出ないぞ。なぜだ・・・画面を見たが特に表示されない。
掛声やポーズを変えて試したが、何の反応もない。どうして良いのか全然わからん。
街に戻ってギルドで聞けば、何か解るだろうか。
3体のゴブリンから右耳を切り取った。だが、ゴブリンは消えない。やはり、ここはダンジョンとは違う世界だな。
胸を裂いて魔石を取り出した。うあ~ぁ、気持ち悪り~。
3つの魔石を拭いてポーチに入れた。
左下の画面に矢印が表示され、ゴブリンが現れた。
一番遠くで杖を持ったゴブリンが笑っている。俺の事を見下してるようだ。
俺はおもいっきり、闇黒刀を奴に向かって投げ付けた。
闇黒刀は油断して笑っていたゴブリンに突き刺さった。持っる杖を落として闇黒刀を引き抜こうとするが、もがきながら倒れた。
残り6体のゴブリンは、その様子を見てあたふたしてる。
左下の画面に”雷魔法取得”と表示された。
「なるほど。雷なら避けようがない魔法だから、お前たちも飛び掛かって来なかったのか」
俺は漆黒刀を右手に持ち替え、残りのゴブリンを斬りまくった。最後のゴブリンは逃げ出したので、背中を思いきり斬った。
「雷魔法なんて反則だろ。なんでゴブリンがそんなヤバい魔法を持ってるんだよ」
ギルドに戻った時には、日が暮れだしていた。
「これをお願いします」
ゴブリンの右耳と魔石を渡した。
「なんだい、この石ころは。こんな物はいらないよ」
異世界では魔石の価値は無いようだ。日本でなら売れるだろうから良いか。
「あのー。魔法を教えてくれる人はいませんか?」
「あんた、魔法の素質が有るのかい」
「あります。雷魔法と火魔法があると思います」
「なんだい、そりゃ。あやふやだね・・・ギルドマスターに聞いておくよ。彼は雷魔法が使えるからな、明日来るといいよ」
「はい。明日来ますのでよろしくお願いします」
俺は銅貨20枚を受け取って宿に帰った。
おばさんに鍵をもらって部屋に入り、そのまま硬いベッドに倒れ込むように眠ってしまった。
この物語はフィクションです。
実在の人物・団体・地名とは一切関係が無いとは限りません。