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-1-「こんな物しか持ってません」

 世界各国にダンジョンが出現して、5年が過ぎた。


 - - - - - - - - - - - 


 獅子乃原(シシノハラ)ダンジョンの2層で、ゴブリン相手に戦っていた。


 身長120cmの子供サイズが、大人の力で錆びた剣を振りまわす厄介な相手だ。

 剣を上手くかわして、刃渡り25センチのナイフで首をかき切った。


 俺は、倒した5体のゴブリンを眺めている。

 暫くするとゴブリンは、黒い光に変わり魔石をドロップするはずだ。

 1体が消えて魔石へと変わる。

 俺は5つの魔石を拾った。


「今日は帰るか・・・」


 慣れたダンジョンだ。

 迷う事無くサッサと帰った。

 階段を昇ると、獅子乃原ギルド支部は目の前だ。


「おばさん、今日はこれだけだ。換金してくれるかな」


「32個かい。3万2千円だよ」


 ギルドカードを差し出すと、カードリーダーで読み取られて入金された。



「それと、ギルド研究所から先日の指輪が戻って来たわよ」


 後ろの金庫を開けて、箱を取り出して渡された。

 箱を開けると、指輪と鑑定書が入ってた。


「おばさん、この鑑定で10万円も取るのかよ」


 鑑定結果には一言”効果不明”と書いて有った。


「知らないわよ。鑑定結果が気に入らなくても責任持てないわ」


「別におばさんを責めてる訳じゃないけど」


「仕方ないわね。特別に使い方を教えてあげるわ。指輪は指にはめるのよ」


「・・・へー。知ラナッタよ。勉強ニナッタよ」


 俺は受取の書類にサインして、ギルド支部を出た。



 俺が住んでいるのは、古民家っぽい家だが暇をみつけては住みやすいように作り変えていた。

 元々は農家をしていた俺のじいさんの家だが、コツコツと改装を繰り返していた。

 トイレだけは業者任せだ。素人が作った浄化槽ではダメらしい。


 俺はリビングで鑑定結果と指輪を見詰めている。

 少し大きな指輪で、裏側にはビッシリと解読不能な文字が刻み込まれていた。


「折角のドロップだし、試してみるか」


 指輪を左手の人差し指にはめた。やっぱりぶかぶかだな・・・


「!? オートアジャスト?」


 指輪が縮んでサイズが自動調節された。

 ドロップ品の中には、不思議な機能がある魔道具が存在するとは聞いていた。


「やっぱり、魔道具なのか」


 視界の左下に半透明な画面が現れ、何かが点滅している。

 右手で触ってみるが、スカッとすり抜けて触れない。

 左手の人差し指で触ると、押せた。


 次の瞬間俺は、麦畑の中に座っていた。



「ハァ!? どうなってる!」


 白昼夢か?異世界に飛ばされたか?何が起きている?

 手を伸ばして麦を触ると、触れる。臭いも感じる。


 先程まで点滅していた、左下の画面表示が変化している。

 ”23:59:13”・・・カウントダウンされている。


「何のカウントダウンだ。ゼロになったら、どうなる?」


 すると時間表示が反転し”0になれば帰れる”と表示された。

 状況も理由も何も理解出来ないが、少しだけ安心できた。


 周りを見渡すと、遠くに城壁が見える。

 ・・・24時間、ここに居ても仕方が無い。行ってみるか。


 城壁に向かって歩くが、足取りが重い。足が痛い。

 リビングからいきなりの転移で靴を履いていない。


「靴の有り難味が良く解るな・・・」


 遠くから声が聞こえる。金髪のおっさんが何か言っているが聞き取れない。

 おっさんはしゃべりながら近づいて来るが、言葉がわからない。英語でない事だけは確かだ。

 左下の画面に”言語翻訳取得”と表示された。その途端、おっさんの言葉が聞き取れた。


「何処から来たんだ。この辺の人間じゃないな。それに見た事もない服装だ」


 これは、なんとかごまかすしかない。


「ちょっと頭を打ってしまって・・・記憶があまりありません」


「頭を打ったのか・・・ゴブリンにでもやられたか・・・門番の場所はわかるか」


「いえ・・・」


「仕方ない。正門まで案内しよう」


 親切なおっさんで助かった。それにしても、ダンジョンの外にゴブリンがいるのか?



 正門の門番に、詳しく説明したのもおっさんだ。


 兵士に連れられて、兵舎までやって来た。


「隊長、この者がゴブリンに襲われて記憶をなくしたようです。他国の人間ようです」


 奥から出て来た隊長は、ドン引きする程筋骨隆々のおっさんだ。


「見た事が無い服装だな。何を持っているか見せてみろ」


「こんな物しか持ってません」


 俺は普段ゴブリン討伐に使っているナイフを見せた。

 流石に、財布、特に免許証は見せられない。


「なかなか良い物だな。金貨1枚で買ってやる」


 そう言って金貨を手渡された。


「なんだ。文句がありそうな顔だな。金貨1枚もあれば、1ヶ月は楽に暮らせる。ありがたく思え・・・それと通行手形だ」


 木札を手渡された。


「再発行は銀貨2枚だ。大事に扱え」


 ここは従うしかなさそうだ。



 俺は兵士に教えられた宿屋に向かう事にした。


「ウチは長期宿泊の宿だから1ヶ月で銀貨1枚だよ。もちろん前金だからね」


 仕方ないので金貨1枚を手渡し、お釣りに銀貨9枚をもらった。

 飯代は別料金らしいが、銀貨1枚で寝床は確保できた。

 一応、1ヶ月はブラブラと楽に暮らせるみたいだ。


 この世界にもギルドが有るようで、魔物を討伐して暮らす冒険者が居るらしい。

 地球の探索者と似たような立場なのだろうか。

 ギルドや魔物よりも先に、靴を買わないとな。


この物語はフィクションです。  

実在の人物・団体・地名とは一切関係が無いとは限りません。

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