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七河蒼空は、外見以外に問題あり  作者: とい
第2章 自称『完璧』な男の子VS通称『難攻不落』な女の子
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初めて

 「完璧な俺と、友達になってください」


 言った。俺は言った。本当の自分を、少しだけ晒した。恥ずかしい。怖い。でも、友達になりたい。


 「‥‥‥」


 「友達に、なってくれ!!!」


 右手を差し出す。いわゆる握手の形。信頼の、証。


 「‥‥‥」


 「‥‥‥」


 雛野から返事が帰ってこない。顔を下げているため目が合わない。


 何を考えているかわからない。何と返事してくるかわからない。その時間が、俺を不安にさせる。でも、誠意は見せたはずだ。



      「よろしくお願いします!!」




          「‥‥‥やだ」



          「‥‥‥え?」



     俺は、思わず顔を上げてしまった。



       そこには、涙目の雛野。




  二度目の、完璧な俺と、友達になってください。




          失敗‥‥‥?





 「そ、そうだよな! 俺と友達になりたくないよな!

  あんな噂あるくらいだし、迷惑だよなっ!」



      自分で言ってて悲しくなってきた。




 やっぱり俺と友達になってくれる人なんて、いないよな。




     「‥‥‥ごめん、言葉が足りなかった」



           「え?」



   「‥‥‥あんたから頼まれる形なのは、やだ」




    「ど、どういうことでしょうか?」



 雛野の言いたいことが読めない。完璧な俺が言うんだ誰にも読めないだろう。




       「‥‥‥な、七河蒼空くん」



       初めて、名前を呼ばれた。



          「は、はい」




     「わ、わた、私、私‥‥‥!!!!」




         「う、うん?」





   「私と‥‥‥!!友達になってくださいっ!!」





         「‥‥‥え???」




 「素直になれない私と、友達になってください!!」





          「‥‥‥え!?」




   「あんたから私にお願いする形は嫌なの!!

    私からお願いしたいの!!!」



         「ふ、ふぇ?」




   「私は、友達がいません!!!

    ひとりぼっちです!!!

    寂しいです!!悲しいです!!

    本当は友達が欲しいです!!!

    でも、素直になれません!!!

    信頼してる相手にしか、素直になれません!!

    でも、私はあんたと友達になりたいです!!」




          「う、うぇ?」



   「口が悪い。気が短い。素直になれない!!

    こんな私と、友達になってくれますか!!」




      顔を下げて手を差し出してくる。


   俺、友達になってほしいと言われてる???



   う、嘘だろ?こんな俺に?情けない俺に?




       「お、俺でいいのか‥‥‥?」




          「‥‥‥はい?」




 「そもそも俺たち、会ってから時間経ってないし、

  お互いのことまだ全然知らないし。

  それでも、いいのか‥‥‥?」



 な、何言ってんだ俺。ダサすぎるだろ。



 「‥‥‥あんた、さっき自分から言ってなかった?」


 「そうだけど!!

  いざ言われると覚悟が足りなかったというか!!

  勇気が足りなかったというか!!!」



 「‥‥‥じゃあ悠凛さんのことは全部知ってるの?」



           「え?」



 「悠凛さんの好きな男のタイプとか知ってるの?」



       「し、知るわけないだろ」



 「あんたは、お互いのこと知らないって言ったけど!

  家族のことでも知らないことなんていっぱいある!

  それなら友達なんて、知らないことだらけでしょ?

  なんで知り尽くしてないといけないの?

  それなら喧嘩なんてしないでしょ?

  いっしょにいて新しい発見なんてないでしょ?

  知り尽くしていて、楽しいことなんてあるの?

  苦労しないのが友達なの?

  効率が良いのが友達なの?

  違うでしょ? そうじゃないでしょ?

  友達なんて、知らないことがあって普通じゃない?

  それに、これから知っていけばいいじゃん!」



         「!!!!!!」



    「友達って、そういうものじゃないの?」





    ああ‥‥‥雛野に言われて、やっと気づいた。



 友達が欲しいと言っておきながら、俺自身が友達になることを恐れていたんだ。


 距離を置こうとしてたんだ。



 そんなことにも気づかず、友達が欲しいなんて言っていた。意味不明にも程がある。



 それを人に言われて気づくなんて、情けなさすぎる。




  「改めて聞きます! 本心で返事してください」




      「私と、友達になってください」




     満面の笑みで手を差し出してくれる。


 俺のことを信頼してくれてることが目に見えてわかる笑顔。


 本当に、俺と友達になりたいと思ってくれてる。そんな笑顔。



        雛野、ありがとう。



   その笑顔に俺は、自分の出来る笑顔で返す。




  「はい。こんな俺で良ければ、お願いします」



 そして差し出された手に自分の手を重ねて、握手する。すごく堅苦しいかもしれないけど、これが俺たちにとってはちょうど良いのかもしれない。




       七河蒼空。高校2年生。




       初めて、友達ができた。


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