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七河蒼空は、外見以外に問題あり  作者: とい
第2章 自称『完璧』な男の子VS通称『難攻不落』な女の子
50/60

言うわよ

 5月20日、金曜日。


 ついに来たテスト最終日。


 「おはよう結愛」


 「え、蒼空?」


 結愛が驚いている。驚くのも無理はない。


 だって俺がすでにマンションの下で結愛を待っていたのだから。


 「さすがにこれ以上待たせるのは申し訳ないからな。

  相手に迷惑をかけないようにはしたい。

  俺は完璧だからな!」


 「ふふ、そうなの。

  私はパジャマ姿の蒼空を見たいから

  早く来てるって言うのに」


 「‥‥‥はい?」


 「冗談よ」


 冗談に聞こえないよ!?




 教室に着いた。指定された自分の席に座る。


 この流れは昨日と同じだな。


 さあテスト最終日、油断せずに頑張ろう。





 はい、終わりました。やっぱり今回は勉強しすぎたみたいだ。自信しかない、さすが俺!



 でも、1日目のテストは受けれていない。その分の再テストが今からある。


 でも再テストは取った点数の9割しか評価されない。100点とったとしても、90点扱いになるということだ。



  つまり、雛野との勝負に負けたということだ。




 「蒼空、今日再テストよね?」


 昨日と同じく結愛が話しかけてくる。話の内容は全く異なるけど。


 「そうだな。だから今日は先に帰ってくれ」


 「待ってもいいわよ?」


 「いや、さすがに今から3教科分受ける時間を

  待ってもらうのは申し訳ない」


 「わかったわ。蒼空の心に負担かけるのは嫌だし、

  先に帰ってるわ。終わったらまた連絡して?

  再テストがんばってね」


 「ああ、ありがとう。またな!」


 俺は結愛と別れて教室を出て、再テストの指定された教室に向かう。


 さあ、俺だけ残り3教科だ。がんばるぞ!


 あ、購買でパン買っておかないと。




 はい、終わりました。ホントに勉強しすぎたな。これが再テストで9割扱いなのがもったいないくらいだ。


 ても休んでなかったら、勝てたかもとは思わない。


 そんなifの話をしても意味はないし、言い訳みたいにそんな話をしたらこれまでがんばってきた雛野に失礼だ。


 それに、負けが確定してるけど心地よい。


 もう夕方だし、そろそろ帰るか。


 再テストを受けた教室から出て廊下を歩く。




       「待ちなさいよ!!!!」



          「ぅえ?」



 思わず変な声が出てしまった。


 だって雛野が後ろから話しかけてきたから。


 「なんで雛野がいるんだ?

  午前中にテストは終わっただろ?」


 「‥‥‥生徒会の仕事で残ってたのよ!

  だから今会ったのは偶然!!

  待ち伏せてなんかないから!!!」


 「いや別に疑ってないけど?」


 「!? そんなことより、勝負の結果について

  話があるわ。ついてきて」


 そう言って雛野が先に歩いて行く。


 勝敗なんて、もう決まってるだろ?




 空き教室に来た。前に俺が風邪引いた時に安静にしてた場所だ。今となっては黒歴史だな。


 「それで?勝負の件だっけ?」


 「そう。勝負の勝敗についてよ」


 「そんなのもう決まってるだろ?」


 「そうね。決まってるわ」




        「あんたの勝ちよ」




         「‥‥‥は?」




        聞き間違いか???



   「聞こえなかったの?あんたの勝ちよ」



       聞き間違いではないらしい。



  「なんで!?俺は1日目を休んだ!!

   合計点で間違いなく俺が負けてるだろ!?」




        「何言ってんの??」



   「私がいつ、()()()()()()()()って言ったの?」



         ‥‥‥は??


    雛野から勝負の内容は聞いてなかった。


      でも、さすがにそれは。


  「普通この時期に勝負って中間テストだろ!?」


   「確かに中間テストを利用するとは言った」


   「でも、()()()()()()()()()()()()言ってない」


  「それに、あんたには勝負の内容を伝えてない」



        どういうことだ!?



  「じゃあ、勝負の内容って何なんだよ!?」


        「そ、それは‥‥‥」


     何で言うのを躊躇ってるんだ!?



     「教えてくれ!!何なんだ!?」



          「‥‥‥」



        「雛野!!!!!」



    「わかったわよ!!言うわよ!!!!」




    「()()()()()()()()()()()()()よ!!!!」




        「‥‥‥は???」



 「聞こえなかったの!?あんたに魅力があるかよ!」



       「ど、どういうこと?」



 「この勝負の内容を先に話したら意味ないでしょ?」


 「は、はあ? まあ確かにそうだな?」


 「私が単純にテストで勝負なんてすると思った?

  私が知りたいのは頭がいいってことじゃない。

  頭がいい人なんてどこにでもいる。

  そんな簡単に目に見えることをその人の魅力だと

  私は思わない。

  テストを利用したのは結果じゃなくて過程を

  見たかったから。

  つまりテストにがんばってる、

  あんたの魅力を知るためよ」


 ‥‥‥たしかに雛野はテストの合計点で勝負するなんて言ってなかった。


 それに俺が圧倒的に不利だと言ってた。今までは俺に勝つ自信があるからだと思ってた。


 でも、それは勝敗の結果に左右するのは雛野の感じ方次第だからか‥‥‥?


 知らない人の魅力に気づくかなんて、あまりにも抽象的すぎるから、俺が不利って言ったのか?



 「な、何だよそれ‥‥‥じゃあ俺は」



 「テストで勝負だと勘違いしてただけなのか!?」


 なんてことだ。勝手に勘違いしてただけだった!!!


 「そうなるわね。それについては謝る。私が悪い。

  勘違いさせてごめんなさい」


 「え!? 雛野が素直!?」


 「素直って何よ!?」


 「わ、悪い。つい本音が」


 「本音!? 私が素直じゃないと思ってんの!?」


 悪い思ってた。たぶん全員が思ってた。


 そうか、俺は勝負に勝ったのか。


 え。ちょっと待て!! 


 勝負の内容があれで、それで俺が勝った!!?


 つまり、つまり‥‥‥そういうことか!?


 「いやそんなことどうでもいい!!」

  俺が勝負に勝ったってことは!!!!」




    「俺に、魅力があったのか!!?」



 「そ、そうよ‥‥‥!!こんなこと言わせないでよ!」



        「そ、そうか‥‥‥」



 「そうよ。だから勝負はあんたの勝ち。

  なるべく早く結果を言いたかったの!!」



          「‥‥‥」



 「? あんた、どうしたの?急に黙り込んで」




          「‥‥‥」




  「え!? ど、どうしたの!?

   勝てて泣くほど嬉しかったの!?」



  そうだよ。感極まって涙が流れちゃったんだよ。


          お茶目だろ?


      俺、最近泣きすぎじゃない??


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