気づいてよ
教室に着いた。指定されている自分の席に座る。
さすがに結愛もテスト直前だと話しかけて来ないようだ。教科書を読んで最後の確認をしてる。お互い頑張ろうな!
さあ、いよいよテストが始まる。
はい、終わった。
あっけなかった。勉強しすぎたようだ。過去最高の出来かもしれない。
これは勝った! あ、昨日受けてなかった。
「蒼空、お疲れさま」
今日の最後のテストが終わって学校が終わった直後に結愛が話しかけてくれる。
「おつかれ! どうだった」
「別に普段通りね。蒼空は?」
「超出来たぞ! 過去最高かもな!さすが俺!」
「そうなの、よかった」
結愛が本当に安心したような様子を見せる。え、俺テストで心配されてた??
いつものように結愛と一緒に帰る。いや、最近は一緒に帰ってなかったか?
「明日でテストも終わりね。がんばりましょ」
「ああ!俺は完璧だから最後まで気を抜かない!
いや最後まで終わったとしても気を抜かない!」
「それは気を抜かないと疲れると思うけど」
「‥‥‥俺は完璧だから疲れない!」
「そうね。風邪は引くらしいけど♪」
「‥‥‥俺だって風邪を引く時がある。お茶目だろ?」
「ちょっと強引じゃない? 可愛いからいいけど♪」
「‥‥‥結愛にはホントに敵わないな」
「あら?私もあなたに敵わないわよ?
何もしなくても一緒にいるだけで、
こんなにドキドキするもの」
「‥‥‥反応に困ります」
「ふふ、蒼空ってホントにカッコよくて、可愛い♡」
「ベタ褒めやめて!? むず痒いから!」
結愛にはホントに敵わないな。完璧な俺が言うんだ間違いない。
「‥‥‥結愛、今回はありがとう」
「どうしたの?私何かした?」
「色々助けてくれただろ?
鼓舞してくれたり、看病してくれたり、
そして何よりあのチョコは助かった」
「そうなんだ。やっぱりチョコが正解だったのね」
「なんで俺がチョコ好きって知ってたんだ?」
「蒼空の家に泊まった時にチョコを置いてあるのを
見たのよ。一人暮らしの家に
ひとくちチョコがあるなんて
よっぽど好きじゃないと買わないでしょ?
それにひとくちチョコなら
そんなに荷物にならないし
外でも気軽に食べられる。
鞄の中に入れてたんじゃない?
つまり、外でも食べるくらいチョコが好き」
「‥‥‥結愛、探偵の素質あると思うぞ?」
「面白そうだけど探偵になるのは無理ね」
「え?なんで?」
「だって、あなたのことしか気にならない」
少し微笑んで言ってくる。まるで今の俺の感じた思いを見透かされてるみたいだ。
「‥‥‥平然とそんなこと言わないでくれ」
「‥‥‥何か変なこと言った?」
なんで言った結愛よりも俺が恥ずかしくなってるんだ?気づくと結愛の家の前に着いていた。
「あ!もう結愛の家に着いたな!じゃあ帰るわ!
明日のテスト最終日も頑張ろう!」
挨拶して走って帰る。
「ちょ、蒼空!?」
結愛の驚いた声が聞こえてくるが、俺はそのまま走って離れていく。
だって今の俺の顔、結愛に見せられない。
ついに俺の許容量が限界を超えた。つまり、顔が真っ赤になってる。こんな情けない顔、見せられるか。
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「帰っちゃった‥‥‥」
蒼空が走って去っていく様子を眺めながら私は呟く。
「平然とそんなこと言わないで、か」
蒼空は一つ勘違いをしてる。もしかして今までのことも勘違いしてるのだろうか。
顔が熱い。まるで熱があるようだ。私は自分の言ったことに悶えている。当然だ。他の人に聞かれたら、黒歴史になるようなことを言ったから。
だって昔、周りのことを気にしていた私が。相手の顔を伺っていた私が。
「私が、平然と言えるわけないじゃん‥‥‥
あなたが好きだから隠さずに伝えてるの‥‥‥
言わないと気持ちに気づかないじゃん‥‥‥
気づいてよ‥‥‥蒼空のばか」




