言うことはない
「悠凛会長、髪染めたんですね!」
「なんとなく染めた!
大学生って染める人多いだろ?
どう、似合ってる?」
「とても似合ってます!
艶のあった真っ直ぐな黒髪もよかったですが
茶色も似合ってます! 綺麗すぎます!!」
「そう!? いや〜照れるなぁ♪」
雛野ってこんなにテンション高かったっけ?
「そういえば澪里ちゃん。
会長って呼ぶの変えてほしいな。
もう会長じゃないし、今はアイツが会長だろ?」
「わ、わかりました!
では悠凛先輩って呼んでいいですか?」
「いいね! 先輩って呼ばれるの好きなんだよ〜!」
「了解です! 悠凛先輩!!」
「うんうん、苦しゅうない♪」
‥‥‥ユウ姉、何言ってんの??
それから雛野とユウ姉がしばらく話し続ける。
俺と結愛はそれを眺めてる。結愛がユウ姉の方を見て惚けているように見えるのは気のせいか?
「澪里ちゃん、楓は元気にしてるか?」
「!!」
「はい! 悠凛先輩みたいになるって
がんばってますよ! 頼りになる会長です!
癖のある性格は変わってないですけど」
「そうか。よくLINEは来るけど実際に
会ってはないからな。
楓はあの性格だから会長になったら
暴走しないか心配なんだ。
澪里ちゃん、アイツを支えてやってくれ」
「はい!!」
「ありがとう! 澪里ちゃんがいれば安心だ!」
「‥‥‥」
「ソラ? 様子が変だぞ?」
「いや、ちょっと頭が痛くなって」
「大変だ! 早く寝ないと!
さあ、さっきみたいに一緒に」
「ユウ姉!
大学の講義は昼からって言ってなかった?」
一緒に寝るのは勘弁してくれ!!
「あ! そうだった!
今から行かないと間に合わない!
行ってくるわ! 講義終わったら戻ってくる!」
「戻ってくるの!?」
「それじゃ2人とも!
しばらくソラのこと頼んだ!!」
「はい!」
「任せてください!」
ユウ姉は急いで家から出ていった。嵐のような人だ。
2人とも即了承するじゃん。そんなにユウ姉が好きなのか。
「蒼空にあんなに素敵なお姉さんがいるなんて‥‥‥
将来私のお義姉さんになるなんて最高だわ♪」
「ゆ、結愛?」
「あんた何言ってんの!?
悠凛先輩は渡さないわよ!!!!」
「お前も何言ってんの!?」
「ところで蒼空、妹もいるって言ってたよね?
あかりちゃんだっけ?」
「あ、ああ。中学3年生だな」
「早く、会いたいわ‥‥‥♪」
すでに可愛がる前提!? 緋璃ごめん。間違いなく厄介なことになったぞ。先に謝る。
完璧な俺は後に起こるような出来事を予測できるから。
「中学3年生ってことは私の妹と同じね。
もしかしたら同じ学校かも。
あかりちゃんってA中学?」
「A中学だな」
「ホントに!?
もしかしたら妹が知ってるかも!!
家に帰ったら早速話聞こう〜♪」
結愛、今日テンション高いな。ユウ姉の影響か?
「結愛って妹いるんだ」
「ええ。私は仲良くしたいんだけど
少し距離を置かれてるのよね。
思春期って難しい」
「難しいよなぁ」
「2人とも何に悩んでるのよ‥‥‥」
雛野が呆れた様子で言ってくる。思春期って大変だからな! 完璧な俺が言うんだ間違いない!
「あ、言うの遅れた。
雛野、わざわざ来てくれてありがとう。
テストどうだった?」
「ま、いつも通りね! 早く元気になりなさいよ!」
「わかった。たぶん明日は学校行けると思う。
熱もかなり下がったし。看病は大丈夫だぞ。
2人ともわざわざ時間取らせてごめんな」
「それはわかったけど悠凛さんが戻ってくるまでは
帰らないわよ。今の蒼空を1人にしておけない。
それに、悠凛さんに任されてるんだから!!」
「そうよ! 悠凛先輩の頼みは絶対成し遂げる!!」
どんだけユウ姉が好きなんだよ!? いや別にいいんだけど!!
「さあ、悠凛さんについて知ってること話して!」
「あんた、悠凛先輩について知ってること教えて!」
「え、寝てもいいですか‥‥‥?」
「だめよ!!!」
「ダメ!!!」
「はい‥‥‥」
今日の2人、別人なのかな??
性格変わりすぎじゃない??
「ただいま〜」
夕方。ユウ姉が家に戻ってきた。
「おかえりなさい! 悠凛さん!」
「お疲れ様です! 悠凛先輩!」
「おかえり‥‥‥」
「ありがとう〜あれ? ソラ?
なんでそんな疲れてるんだ??」
「誰のせいだと思ってるんだよ‥‥‥」
「え!? お姉ちゃんのせい!?
ごめん!! お詫びになんでもしてあげるから!
じゃあまずは、お風呂にレッツゴー!」
「しないよ!?」
「悠凛さんとお風呂‥‥‥」
「悠凛先輩とお風呂‥‥‥」
もう君たちに言うことはない。
「そっか〜残念。じゃあ家事は任せてくれ!」
「ユウ姉、いつ帰るの?」
「え?今日は泊まるよ?」
「はい!?」
「言ってなかったっけ?
風邪ひいてるソラを1人にするわけないじゃん!
大丈夫! お父さんとお母さんの許可取ったから!
久々の姉弟で生活だ!
緋璃もいればもっと最高だったけど!!」
「緋璃は来れないだろ。今年受験生だし。
家からここまでは結構遠いから
1人で来るのは心配だ」
「‥‥‥ソラって妹に対しては過保護だよね。
この、シスコン♪」
「ユウ姉だけには言われたくないけど!?」
「この2人、仲良いわね。いい兄弟だわ」
結愛さん? これのどこが仲良いのですか??
「雛野さん、私たちはそろそろ帰りましょうか。
悠凛さんがいれば安心だし、明日もテストだし」
「そうね。帰るわ」
結愛と雛野は鞄をもって立ち上がり、玄関に向かう。
「2人ともありがとう」
「澪里ちゃん、結愛ちゃん、サンキューな!
これからも私とソラをよろしく!!」
自分もよろしくってどういうことだよ。
「「はい!よろしくお願いします!」」
2人が同時に返事をした。
「「おじゃましました!!」」
また同時に言って外に出て扉を閉めた。
いつの間に、こんなに仲良くなってたんだ?
「結愛ちゃん、良い子じゃないか!
澪里ちゃんも前と変わらず良い子だし!
良い友達を持ったな!」
2人がいなくなった途端、ユウ姉がそう言ってくる。
正確にいうとどっちも友達じゃないけどな。
「うん。俺にはもったいないくらいだよ」
「そう卑下するな!
ソラは、もっと自分に自信持て!
なんたって、私の弟なんだから!!」
「‥‥‥うん」
「それにしてもソラ、アイツは来なかったのか?
ソラが風邪ってわかったら真っ先に来そうなのに」
「‥‥‥最近話してないよ。
今年受験生で忙しいだろうし」
「そうなのか?? そんなことないと思うけど。
アイツ、かなり勉強できるからな。
もしかしてソラ、アイツと何か」
「そんなことよりユウ姉、家事してくれるんだろ?
お腹すいたな〜」
「そうか!? それじゃあ晩御飯にするか!
ソラの胃袋掴んでやる!!」
いや〜お腹すいてたんだよな!
他に意図はないよ? ホントだよ?




