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七河蒼空は、外見以外に問題あり  作者: とい
第2章 自称『完璧』な男の子VS通称『難攻不落』な女の子
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言ってほしかった

 夜になると体調は元に戻っていた。


 神が俺に味方してくれたのか!? ありがとう!!


 でも念のため、結愛に言われた通り夜遅くまで勉強せず早めに寝ることにした。


 これで明日、ある程度マシな状態でテストを受けることができる!


 雛野、覚悟しろよ! 俺が絶対勝つからな!!




 5月18日、水曜日。


 いよいよテスト1日目。俺は普段より早く起きた。


 でも、それは目覚ましで起きたわけではない。


 辛くて、目が覚めたのだった。


 時計を見ると6時。アラームは6時半にしていた。


 今起きるつもりなんてなかったのに。


 頭が痛い。喉が痛い。気分が悪い。体がだるい。上半身を起こすことすら苦労した。


 「な、なんでだよ‥‥‥」


 昨日の夜は何ともなかったじゃないか。


 元気だったじゃん。普段通りだったじゃん。いつも通りだったじゃん。


 なんで今こんなに辛いんだ?


 こんな状態ではテストなんて受けられない。どうすればいいんだ。


 とりあえず冷えピタ貼ろう。動くのは辛いけど必死に身体を動かして探すが見つからない。


 ま、まずい。どうしよう。どうすれば‥‥‥




      ーーポーン、ピンポーン。



 「んぅ‥‥‥? !? 俺、あのまま寝てたのか!?」


 玄関のチャイムで目を覚ました。


 家の外に誰かいるので急いで玄関に向かい鍵を開け、ドアを開ける。


 「‥‥‥蒼空? どうしてパジャマで出てきたの?

  そんなあなたも可愛いけど」


 「ゆ、結愛!? なんでここに!?」


 「なんでって、今日からテストだから勉強は

  大体終わったでしょ?

  今日からまた一緒に行こうと思ったの。

  それに、あなたの体調も気になるし。

  ねえ、顔赤くない?」


 「! そうか? そんなことないと思うけど?」


 「それにあなたがパジャマなまま訪問者に会うとは

  考えられない。あなたは、完璧だもの」


 疑われてる!! その言葉は嬉しいけど!


 「いや〜寝坊したんだよな!

  完璧な俺でも寝坊することあるんだよな〜!

  お茶目だろ?むしろチャームポイントだと

  おもーんぅ!?」


 俺は続きを言えなかった。


 俺の口は結愛に手で抑えられ、デコとデコがくっついている。


 結愛に距離を詰められたため、俺たちは玄関で向かい合うことになる。そして扉が閉まった。これで周りの人には見られない。


 ま、まだその測り方なのかよ‥‥‥


 結愛が俺の口に置いていた手を離してくれる。


 そして顔も離してくれた。


 「‥‥‥熱あるじゃない! どうして隠すのよ!」


 「いや〜熱はないと思ったんだよな〜!

  熱あったしても体調は大丈夫だし!

  テストは受けれそうだぞ!

  今から準備してくるからそこで待ってて!」


 振り向いて中に入ろうとする俺の腕を結愛が掴んできた。


 「‥‥‥もう我慢しなくていいから。

  私の前くらい、素直になりなさい。

  私に、甘えなさい」


 俺、これ以上結愛に甘えてもいいのだろうか。


 情けないよな? でも、甘えたいと思ってしまった。


 そう思ってしまうほど、結愛を信頼してるんだ、俺。


 「‥‥‥ごめん。テスト受けたかったんだよ。

  自分のために。だから誤魔化そうとした。

  本当はチャイムで目が覚めたんだ。

  その前は気づいたら意識がなかった。

  今も辛い。頭痛いし、喉痛いし、気分悪いし、

  体はだるいし、もう嫌だ。

  結愛、助けてほしい‥‥‥」


 「‥‥‥」


 え? 無言?? 失望されたのだろうか。さすがに情けないことを言いすぎた‥‥‥恥ずかしい。


 「‥‥‥ふふ♡」


 「??」




       「可愛すぎる!!!!」



           !?



 結愛が普段口から出ないような大声で言ってきた!!


 「うぇ? ど、どうした結愛」


 「もう!! なんでそんなに可愛いのよ!?

  ずるい! ずるい!! ずるい!!!

  もうなんでもしてあげたくなっちゃう!!!

  可愛い♡ 今のもう一回言って!!!

  動画に残すから!! さあ早く!!」


 「ゆ、結愛さん? ちょっと落ち着こう??」


 「ご、ごめんなさい。つい本音が出ちゃった。

  さあ、今から1日中看病するわ!

  近くの店で何か買ってくる!!」


 「ちょ、ちょっと待って!!

  まだこの時間だと店は開いてないだろ!」


 走り出そうとした結愛の手を思わず掴んでしまった。


 いや、展開早すぎるわ。俺でも理解が追いつかない。


 「頼む側の俺に言う権利無いと思うけど、

  テストは受けてくれ。

  学校休んでもらうのは申し訳ないよ。

  だからテスト終わってから来てほしい、です‥‥‥」


 本当に何を言ってるんだ俺は‥‥‥今日だけで黒歴史を作りまくってるぞ!! あれだ!! ベッドに入ったら恥ずかしさで悶え死ぬやつだ!!!


 「わ、わかったわ。可愛すぎる発言をそんなに

  連発しないで‥‥‥私の心臓がもたない」


 ‥‥‥俺、そんなに結愛に対して攻撃力高いの??


 「今からコンビニで色々買ってくるわ。

  とりあえず飲み物は買わないと。

  もしかしたら冷えピタも売ってるかもしれないし。

  私がテスト受けてここに来るまで、それで凌いで。

  私が買い終わって戻ってくるまで、

  家でおとなしくしてて!」


 「あ、ああ」


 結愛が近くのコンビニに向かって走り出す。


 「結愛、ありがとう!!!」


 走って行く結愛に俺は大きい声で言った。本当にありがとう。ありがとう。



 「はい、これ」


 戻ってきた結愛が色々入ったレジ袋を渡してくれる。


 「本当にありがとう、結愛」


 「気にしないで、あなたのためだもん」


 うん、そのセリフは刺さりまくる。


 なんと冷えピタも売ってたらしい。本当に助かった。


 「ご両親には連絡した?」


 「したよ。さすがに休むことは連絡しないとな。

  でも来てもらうのは悪いから友達が必要なものを

  色々買って来てくれたから大丈夫って伝えた」


 「‥‥‥友達か」


 「いや、さすがに自分の親相手には誤魔化すよ!?

  女子が看病に来てくれるなんて言えないし!!」


 「もうっ、素直じゃないわね。

  俺の女が来るって言ってほしかった」


 「それアウトですよね!?

  違う心配で今から俺の家に来ることになるわ!」


 「まあいいわ。

  私もあなたのご家族にまだ会う勇気ない」


 なんでそんな緊張するの? 何を言うつもりなの?


 「じゃあ行ってくるわ。

  私が来るまで、おとなしく待っててね♪」


 「わかってるって。結愛、テストがんばれ!」


 結愛は俺の言葉を聞くと歩き出す。俺はそれをしばらく眺めていた。そしてある考えが頭から離れない。




    ごめん雛野。テスト受けられなくなった。


          本当にごめん。


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