本当だった
放課後。
俺と結愛は2年3組の教室前に来ていた。雛野の様子を確かめるためだ。放課後始まってすぐにここに移動したからまだ教室にいるはず。
俺は廊下から2年3組の教室の中を覗く。
案の定、教室には雛野がいた。自分の席に座って勉強している。あんな噂が流れて周りの視線がすごいのに集中して勉強できるなんてすごいな。
「あいつすごいな。俺とは違うな」
「ちょっと待って。何か様子が変よ」
「え?」
後ろにいた結愛の発言が気になり、もう一度俺は教室を眺める。
結愛の言った通りだった。雛野から少し離れた所にいる女子数人が彼女を見て小声で何か話している。
廊下からだと女子たちが何を言っているかはわからない。でも、雛野を悪く言っているのははっきりわかった。
そう思っていると女子たちが雛野の席の前に集まる。
何か言いあっているようだ!!なんとかしないと!
「蒼空、待って!」
教室に入ろうとしたら、結愛が俺の右腕を掴んでくる。
「離してくれ!!雛野を助けないと!!」
「助けたいのはわかるわ。
でも、噂になっている私たちが助けに行くのは
状況を悪くするだけよ!」
「で、でも!!」
「大丈夫。他の人が助けてくれたらいいのよ」
「俺たち以外に誰があいつを助けられるんだ!?
他に誰もいないだろ!!」
「あら、あたしがいるわよ?」
後ろから声がしたので振り向く。だ、誰だ!?
「!!、高島!?なんでここに!?」
「説明は後。あたしが行ってくる」
高島はそう言うと教室の中に入っていき、雛野と女子たちの間に割って入る。
そこでまた言い合いが起こっていたが少し経つと女子たちが教室から出ようとする。
俺たちはバレないように教室から少し離れて女子たちが遠くに行くのを待つ。少し待ってから教室に向かうと中にいるのは高島と雛野だけになっていた。
俺はチャンスだと思って教室に入る。すると雛野が俺たちに気づいて驚く。でも今はそれを無視して扉の鍵をかける。
これで教室の中にいるのは俺、結愛、高島、雛野の4人になった。やっと雛野と話すことができる。
「な、なんであんたたちまで来るのよ!?」
「それは悪いと思ってる。
でも会って話す必要があったからだよ」
「私は蒼空についてきただけよ。
一応私も噂に関わっているし」
結愛の発言に雛野が驚いた様子を見せる。まさか、
「もしかして、お前も噂を気にしてるのか?」
「!!、そんなわけないでしょ!!!
なんで私があんな意味不明な噂を気にする
必要があるのよ!!私何も悪くないし!!
?、お前も?もしかしてあんたは気にしてるの?」
しまった。口が滑ってしまった。これ以上誤魔化すのは雛野にも失礼か。
「‥‥‥そうだ。俺は気にしてるんだよ。
たとえ本当のことじゃなくても、
周りに何か言われているのは落ち着かない。
俺は正直に答えた。
だからお前も正直に答えてくれ。
お前は、本当に噂を気にしてないのか?」
「‥‥‥」
「?雛野?」
「‥‥‥気にしてるわよ‥‥‥!!
気にするに決まってるでしょ!?
前にも言ったわよね!?
私は孤独に耐えられないって!!
そんな私が周りに何か言われてても
余裕でスルーできると思うわけ!?
完璧な人間なんていないのよ!!
私もそう!!なのにみんなが勝手に
私を完璧だと思い込んで壁を作ってる!!!」
「気にしてるに、決まってるじゃない!!!」
雛野は大声で言った。正直に言ってくれた。そして俺は決心した。
こいつを、助けたいと。
「‥‥‥あなたも誰かさんと同じで孤独が嫌なのね」
結愛が含みがあるようなことを言う。それ、誰のことだろうな???
「はぁ?誰かさんって誰よ」
「それは教えないわ。
ただ、似たような人がいることを覚えていて」
「‥‥‥あっそ。そいつとは一度会ってみたいものね」
‥‥‥俺、どう反応すればいいの??
とりあえず雛野を助けてくれた相手に礼を言うことにした。
「悪かったな高島。助けてくれて」
「気にしないでいいわよ。
お礼なら結愛からもらうし」
「‥‥‥前から思ってたんだけど、いつからお前
結愛を名前で呼ぶようになってたんだ?
そんなに仲良くなってたのか?」
「それは言えないわね。結愛のためにも」
「ちょっと桜!含みがある言い方やめて!」
‥‥‥本当に仲良くなってたんだな。完璧な俺でも完全に予想外だわ。
「さあ、噂をなんとかしなくちゃ」
「あんたは何もしなくていいわ。
私が噂の発端だし。
私があんたたちに関わらなければそのうち
噂は消える。それでいいでしょ?」
「よくねぇ!!お前が辛いだけじゃないか!!」
「はぁ!?勝手に辛いって決めつけるな!!
私は昔からずっと1人だったのよ!!
たしかに1人でいるのは大変だけど、
普段と変わらない生活だから余裕よ!!」
「そんなの理由になるか!!だって」
「うるさい!!私が良いって言ってるのよ!!
もうほっといてよ!!!!」
雛野は荷物をまとめて教室を出て行こうとする。
「待てって!!」
雛野が教室の鍵を開けた時に俺が彼女の腕を掴む。
「離して!!」
「離すかよ!!俺の話を聞いてくれ!!」
「なんて強引なやつよ!!!
自己中で勝手だし、自信満々!!
‥‥‥ああ、はっきりわかったわ。
やっぱりあの噂は本当だった!!!」
「あんたには、問題があったのよ!!!!」
雛野が俺を睨みながらそう言い、俺の腕を払って走っていく。
俺は1番言われたくないことを言われた。
でも、俺は全く心に傷は負わなかった。傷を負ったのは言った本人だけだった。それがすぐにわかった。
だって俺を睨んで言っていた時、
雛野は泣いていたからだ。
雛野、ごめんな。お前を辛い目に合わせてしまって。
俺は決めた。絶対に雛野を助けると。
友達になりたいから。仲良くなりたいから。話したいから。そんな理由なんかじゃない。
ただ、お前を助けたいだけなんだ。
許してくれとは言わない。
だって、俺は自他共に認める自己中だから。




