キャラ立ちすぎ
翌日の5月11日、水曜日。
俺は当然勉強に明け暮れている。俺は頭脳明晰とはいっても勉強を疎かにしては当然学力は下がる。
普段から勉強はしているが、やはりテスト前になると勉強量が増えるのは当たり前だ。しかも今回はテスト勝負。普段よりもかなり勉強している。完璧は俺は努力を怠らない。
今日は1人、誰もいない教室で勉強している。結愛は先に帰った。それは彼女が提案した。昼休みにその話をした時に理由を聞くと、
「蒼空の邪魔したくないのよ」
そう返された。むしろ助かってるくらいなのに。
「一度も邪魔なんて思ったことないぞ?
むしろ結愛に助けられてる」
「!、そう言ってくれるのは嬉しいけど、
蒼空が勉強に集中してる所を見ると、
あなたにちょっかいかけたくなるの」
‥‥‥結愛なら大いにあり得る。完璧な俺が思うんだ間違いない。
「‥‥‥そういうことか。わかった。
それなら仕方ないな。
結愛には悪いが、お互いがんばろうな!
絶対テストで勝ってみせるから!」
「がんばって!」
「おう!」
このような経緯でしばらくは結愛と別々で行動だ。
朝も家に来ないし、帰りも一緒に帰らない。いるのは教室の休み時間と昼休みくらいか。
結愛がいない生活は、かなり寂しいのだと今さら気づいた。やっぱり結愛は俺にとって特別で大切な存在なんだ。
勉強の合間のチョコってなんでこんなに美味いんだ?
家から持参したひとくちチョコを食べる。勉強する時は糖分が大事って聞くからな。う、美味すぎる‥‥‥
気づくと校舎から出ないといけない時刻になってきた。いや〜勉強したわ。達成感ある。いやまだ何も達成してないんだけど。
最初は少し勉強したら帰るつもりだったが、少し経つと急に大雨が降ってきた。折り畳み傘は持ってるけどやはり雨が降ってない時に帰りたい。
降り畳み傘を常に持っているのはさすが俺といったところか。決して入れっぱなしの状態を放置していたわけではない!
ずっと勉強しながら待ったが全く勢いが衰えないため仕方ないと思い帰ることにする。
俺は図書室を出て廊下を歩き、下駄箱で靴を履いて外に出ようとする。
すると、玄関で誰かが立ち往生していた。女の子。
おそらく傘を持っておらず雨が小降りになるのを待っているのだろう。
そして、その子は雛野だった。せっかくだし俺は話しかけることにした。
「あれ、雛野じゃん。なんでこんな遅いの?」
「!?、なんだ、あんたか。
遅いのなんて勉強してたからに決まってるじゃん」
「そうか、実は俺もなんだ。
俺は教室で勉強してたが雛野は?」
「なんで言わないといけないの??」
え、それくらい教えてくれてもいいだろ?怖い。この俺が少しビビってるなんて。
「‥‥‥私も教室よ。今日は静かだったから」
「なるほど。
お前も俺と同じで雨が止むのを
待ちながら勉強していたが、
結局大雨のまま今に至ると」
「そうよ。あんたと同じって所がムカつくけど」
この子、常に攻撃しないと気が済まないのか?
「事情はわかった。
要するに傘忘れて困ってるの、助けて誰かー!!
って感じだな」
「そんなこと言ってないけど!?
勝手に私が助けを求めてる風に
言うのやめなさいよね!!」
「いや、だってそうじゃん。
今もこうして雨が弱くなるの待ってるじゃん」
「しつこい!あんたはさっさと帰りなさいよ!!」
この子、手がつけられない。完璧な俺が言うんだ相当だぞ。でも雛野の置いて帰るのはなんか嫌だな。やっぱりこうするのがベストか。
「わかった。じゃあお前はこれ使ってさっさと帰れ」
俺はカバンから折り畳み傘を取り出し雛野に渡そうとする。
「!、いらないわよ!
弱みにつけ込もうとしても無駄!!」
雛野は猛反発。そんなことで弱みになるかよ。
「そんなんじゃないって。俺今日傘2本持ってんの。
普通の傘と折り畳み傘。
完璧な俺は準備も良いんだ。
お前に風邪引かれたら勝負にならん」
「‥‥‥」
勝負の話になると言い返せなくなったな。やっぱり勝負の話でゴリ押すのが雛野に有効らしい。
それをすぐに見抜くとは、さすが俺だ!
「俺と雛野の体格差を考えたらこれがベストだろ?
ほら、さっさと帰った帰った」
俺は雛野に折り畳み傘を渡す。
「!、あ、あり、あんた覚えてなさいよ!!」
雛野はそう言いながら俺を睨んだ後に走って帰っていった。いや素直にお礼言えないタイプかよ。
ツンデレツインテールだと?キャラ立ちすぎだろ。俺くらいキャラ立ってるな!
ま、俺は傘なくても学校から家まで近いし別にいいか。
そう思いながら俺は大雨の中を走って帰るのだった。
雛野のやつ、無事に傘を返してくれるのだろうか。
今日で一つわかったことがあった。
雛野澪里は、ツンデレツインテ副会長。




