気になったのよ
俺、なぜか生徒会副会長に勝負を申し込まれました。
「‥‥‥なんで?」
素直にそう思った。気づいたら口に出てた。この俺が気の利いた返事ができないだと!?
「‥‥‥あんた、面白い噂あるじゃない」
「!?」
ま、まさか『あれ』のことか!?あんな噂に興味持ったとか言わないだろうな!?
いや、俺は完璧だからそんなの気にしてないけど!
「それって、まさか」
「そうよ!
『あの七海結愛を夢中にさせる何かがある』よ!」
あ、そっちか〜‥‥‥ん、んん????
「俺、そんなこと言われてんの??」
なんじゃそりゃ。しかもなんか微妙に否定しづらい。もしかして結愛も知ってるのか?
「気づいてなかったの?
あんなに多くの人に影で言われてるのに。
あ、そっかあんたその七海以外とは
人と話してないもんね!そりゃ気づかないわ!」
こ、コイツ俺の心にグサグサ刺さるようなことを連呼しやがって!!いや完璧な俺は気にしてないけど!
「‥‥‥それで、その噂がなんか関係あるのか?」
「あの七海を夢中にさせたのは普通にすごいからね。
今まで何人の告白を断ってきたことやら。
しかもあいつ猫かぶってたんでしょ?
それなのにあんたと会ってから
あいつは猫かぶりをやめて
今は教室で見た通りあんたに夢中。
人目を気にしてないほどにね。
あんたにはあの女を夢中にさせるほどの
何かがあるってことじゃない」
そういうことか。だから最近告白される回数が多くなってきたのか。なんか名誉なことかもしれない。
「私、今まで男に興味持ったことないんだよね。
たぶん七海も同じ。
だってあいつ本性隠して
周りに合わせてたんだから。
たぶん誰にも気を許してなかったんじゃない?
それなのにあんたのことになると
本性を出すようになって、
さっき私にしたみたいに牙を向く」
たしかに。結愛は極端すぎる。この俺ですら少し驚いてるくらいだ。だってあいつ、デレデレなんだもん。でも時々、俺に対しても容赦ないけどな。
「いや、そんなのわからないだろ?
単純にカッコよかったからって
理由かもしれないぞ?」
「それはありえないわね。
あいつは学年問わずカッコいいと言われてる奴らに
告白されてきたんだから。
それならその時点で誰かに夢中になってるでしょ。
だからあんたに夢中になったのが
そんな単純な理由のはずがない。
それにあいつ、3週間くらい前に本性出して
あんたのことについて大声で語ってたって
噂を聞いたわ。あんたをバカにするな!とか。
あんたの悪口を言った人は殺す!とか。
自分とあんたの邪魔したら叩き潰す!とか。
そんなこと言ってたらしいわよ」
‥‥‥!?俺、そんなの知らないぞ!?
まさか昨日の告白を断った後に釘を刺しておいたとか言ってたのって、このことなのか!これは結愛には聞けないな。
「だからあんたのことが少し気になったのよ。
あの猫かぶり女をそこまで本気にさせたから。
もしかしたら私も興味持つかもしれない
それにあんたは、いやなんでもないわ」
「‥‥‥興味をもってどうするんだ?」
「それは、私の勝手でしょ!!」
何か隠されたな。まあ別に興味ないから良いや。完璧な俺は、スルーも完璧なのだ。
「勝負する必要はあるのか?」
「大いにあるわ!!
私、魅力がない人大っ嫌いなのよ!!
そんな奴らが近寄ってきたり、告白してきたり
するのはホント迷惑!
関わる相手が私にとって有意義じゃないと
時間の無駄!!
だから勝負してあんたと関わるのが有意義か
確認したいのよ!
あんたは他の奴よりまだ可能性あるし!」
こ、怖い。なんでこんな子が男に人気なんだ?
学校の男子の事がよくわからないんだが??
それに、あんた自分のこと
完璧って言ってるじゃない。
だから勝負してそれが本当か確かめたいと思った。
だって容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群
なんでしょ?」
「性格も良い点が抜けてるぞ!!」
「聞いた通りあんた、すごい性格してるわね‥‥‥
やっぱり少し似てるわね」
「似てるって?」
「あんたには関係ない」
辛辣すぎない?
「とりあえずわかったが、2つ聞きたいことがある」
「言ってみなさい」
なんでこんなに上から目線なの??メンタル強い俺は動揺なんてしないけどな!
「1つ目。勝負ってなんの勝負するんだ?
言っちゃ悪いが男と女で体格、体力に差があるから
運動は負ける気しないぞ?
他にも負ける気は無いけどな」
「その余裕が腹立つわね。
問題。なんで今の時期に私が勝負しろと
言ったかわかる?」
「‥‥‥中間テストか」
「そう! 勝負するのはテストが1番!」
‥‥‥もう雛野については何も思わない方がいい気がしてきた。完璧な俺でも疲れるわ。コイツ恐るべし。
「中間テストで勝負よ!」
テストか〜。けどテストで勝負するって友達っぽくない?すごくワクワクする!あ、こいつとはほぼ初対面だった。
まあ良いや、友達らしいことができるなら!!
2つ目に対する返答次第では受けてもいいと思った。
「中間テストで勝負する気なのはわかった。
じゃあ2つ目。
俺がその勝負を受けるのにメリットあるのか?
俺は別にお前みたいに乗り気じゃないし。
意味がないなら普通に勝負したくないぞ」
「もちろんそう言うと思って考えてあるわ!
勝った方が負けた方になんでも1つ命令できる!
これでどう!?」
「え、興味ないからいいわ。
じゃ、この話はなかったことにー」
「待ちなさいよ!?」
俺がソファから立ち上がろうとしたら雛野に腕を掴まれて止められる。え、帰らせて???
「興味無いってなによ!!
この私に興味ないの!?
こんなに可愛い私になんでも命令できるのよ!?
男なら普通泣いて喜びなさいよ!!」
「は!?お前なかなかすごいこと言うよな!
どれだけ自分に自信あるんだよ!!」
「あるに決まってるでしょ!?
あんたも自分のこと完璧とか言ってるから
同類でしょ!!」
「‥‥‥確かにそうだな。
けどそんなこと言っていいのか?
もし俺が勝てばここでは言えないような
命令するかもしれないぞ?」
「そんな心配無用よ!!
だって私が絶対勝つから!
万に一つもないけど、もし負けたら
なんでも言うこと聞いてあげるわ!
そんなことありえないけどね!」
‥‥‥はぁ。なんか疲れてきた。
「もしあんたが私に勝ったら、今よりも
周りの奴らに興味持たれるわよ!!
なんたって副会長の私に勝ったということに
なるのだから!
あんたに憧れて話しかけてくれるかもね!
告白される回数も今まで多くなるかもね!!」
「!!」
そうか!
これって周りの評価を上げるチャンスなのでは?
副会長に勝ったというインパクトは大きい。
そしたら友達ができるかもしれない!!
そんなのこの勝負受けるしかない!!!
「わかった勝負を受けよう!
見返りはそれでいい覚悟しろ雛野!」
「なんか急に早口で大声になったわね‥‥‥
あんたそんなに私にヤバい命令したいの??」
「めんどくさいからそういうことでいいわ」
「めんどくさいって何よ!?」
その反応がもうめんどくさいわ。
こうして、今日から8日後の中間テストで勝負することになった。
俺は雛野の話を聞き終わり、生徒会室を出て廊下を歩く。そしてふと思う。
雛野澪里はめんどくさい女だと。
この俺が言うんだ間違いない。




