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七河蒼空は、外見以外に問題あり  作者: とい
第1章 学年一の美少女と。
25/60

『七海結愛』

 俺が放課後に結愛と別れた宣言をして結愛からの連続コールが届いた土日が過ぎて、月曜日。


 俺は最初、結愛が土日のように超話しかけてくるかと考えてた。だが家の玄関で靴を履いているときに気づく。


     俺、別れたことになってるから

   結愛が俺に話しかけてくるのは無理では?


 そう思った。あんなに目立ちまくった破局宣言したんだ。猫をかぶってる結愛は周りの視線を気にして前と同じ感じになるのではないかと。


 これは勝った。さすが俺!


 家では休まらないかもしれないが、学校なら心が休まる。いや結愛と話するのは超楽しいけどね!


 いや、普通逆じゃね?


 何はともあれ、靴を履いた俺はたまに欲しいと感じる平穏な時間がやってくるとウキウキしながら家の玄関を開ける。



 

     「!!!!!!!!!??????」




      「少し遅いわよ蒼空、おはよう」




      !!!!!!!!!!??????




           は?????


 理解が追いつかないが、玄関を開けるとそこには結愛がいた。


  なぜ??????完璧な俺がわからないだと!?



 「え??、え????、なんでいるの????」


 「そんなの決まってるでしょ。

  あなたと一緒に登校したいからに

  決まってるでしょ。

  当たり前のことを聞かないでよね」



     !!!!!!!!!??????


 まだ理解が追いつかない。頭脳明晰の俺が!?


 意味わからんがとりあえず聞きたいことを聞く。


 「‥‥いつからいたんだ?」


 「ついさっきよ。

  さすがにずっと待ってるなんて怖いでしょ?

  普段学校に来る時刻と

  蒼空の家と学校の距離を考えると

  大体この時間でしょ??

  あなたのことはなんでもわかるんだから」



      !!!!!!!!!???


 いや、後半の言ってることが怖いわ!!


 俺は何も言い返せない。当然だ。


 俺が家を出る時刻を逆算するという意味不明なことを結愛がしてるんだから。


 「あなたの家に入れないから前で待ってたの。

  せっかく朝ごはん作ってあげようと思ってたのに」


 「いや、インターホン押せばよかったのに。

  それなら家の中に入れてたぞ?

  わざわざ外で待っていなくても」


 「こんな朝早くにインターホンを押した挙句に

  家の中に入るなんて迷惑でしょ?

  だから素直に外で待ってたの」


 いや外で待ってるのも迷惑度でいえば変わらないような気がするとは俺には言えない‥!しかも心臓に悪い!


 「それに外で待ってたら同じマンションに

  住んでる人に挨拶もできたわ。

  これは間違いなく蒼空の彼女と思われてるわね♪」


 「既成事実の作り方が凄まじいな!

  お前の攻撃力やばすぎるわ!!」


 「でも、そうね‥やっぱりこれがベストだわ」 


 そう言って結愛は俺の前で手のひらを上にして犬にお手をさせる飼い主のようなポーズをする。え、これなんのプレイ??


 「蒼空、合鍵。いや愛鍵ちょうだい♪」


 「!?」


 なんで 2回言った!?

 同じ意味だよね!?そうだよね!?


 でも鍵なんて自分の分と家族に渡した分しかない。



 「悪いが、合鍵は家族に渡してるから無いんだ」


 「じゃあ、あなたが使ってる鍵をちょうだい」


 「何言ってるんだ!?俺が家に入れないだろうが!」


 「私とあなたが一緒に出入りすればいいじゃない」


            ‥‥‥?


     意味がわからない方がいい気がする。


 「‥‥‥とりあえず今は渡せないな」


 「‥‥‥わかったわ」


 え、何この空気??俺が悪いの??

 完璧な俺でも反応に困るよ????


 まあ、結愛は俺を救ってくれたし、特別だと思ってる。それくらいは‥


 「ま、まあなんだ。今度、鍵作ってくるわ」


 「!!!!!!」


 結愛がこれ以上ないくらい驚いていて、嬉しそう。


 パァーと輝いてるような笑顔を向けてくる。


 なんか見てるこっちが恥ずかしくなってきた。


 「うん!!待ってる!!!!!」


 超嬉しそう。やばい今の結愛の顔が眩しすぎて見れない。


 完璧な俺が一方的に負けて、一緒に学校に行くのだった。


 もしかして俺、押しに弱い???





 学校に着きました。俺はもう悟りました。


 こいつはもう、クラスで猫かぶるのをやめたのだと。


 授業の合間の休み時間。俺は席に座って頬杖をついた状態でぼんやりしていた。


 「そ〜ら♪」


 すると誰かが後ろから抱き着いてくる!!こんなことをするのはもはや1人しかいない!


 「!?ゆ、結愛?」


 さすがに恥ずかしくて結愛を引き剥がそうとするが、全然剥がせない。前も思ったがこいつ力強くない?


 「恥ずかしがらなくてもいいのに。

  私たちの仲でしょ?」


 「いや、付き合ってないよ??」


 結愛が周りの人に聞こえないように小声でこう言う。


 「たしかにそうね。

  でも私はあなたにくっつきたい。

  あなたは本当の自分を

  知ってて受け入れてくれる私と一緒にいたい。

  それでいいんじゃない?」


 「‥‥‥その通りだな。

  でも告白の返事を保留にしてるのに最低だな、俺」


 「そんなことない。

  あなたは初めて本当の自分を知っている人と

  仲良くなれたからもっと一緒にいたいってだけ。

  そんなのみんな普通にやってる。

  友達付き合いと同じようなものよ」


 「‥‥‥そうだな。そうかもしれない。ありがとう。

  結愛は良いやつだな」


 「やっと気づいたの?

  これからも私の魅力に気づいてね♪」


 そう言って結愛は後ろから抱き着いている状態で俺の頬に自分の頬をくっつけて頬ずりしてくる。


 「ん〜〜♪」


 「‥‥‥」


 うん、これはお前がさっき言ったやつと違うよね??




 昼休み。


 「蒼空、一緒に食べましょ」


 すぐに結愛が俺の席の前に来た。すごい勢いで来たのでこの俺でも驚いてしまった。


 「あ、ああ。でも俺は購買でパン買ってくるから

  待ってもらうことになるぞ」


 「大丈夫。あなたの分も作ってきたから」


 結愛はそう言って2つのサイズの違う弁当箱を見せてきた。たぶん大きい方が俺の弁当だ。



 「マジで!?結愛の手作り!?」


 「もちろんよ。蒼空への愛妻弁当♪」


 「それは違うがサンキュー!!

  結愛の料理美味いし!」


 「フフ、違わないけどそう言ってくれて嬉しい。

  ありがとう♪

  じゃあ前の席とくっつけましょうか」


 そう言うと結愛は俺の前の席を反対に向けて俺の席とくっつける。


 「‥‥‥え?ここで食べるの??」


 「?ダメなの?」


 「いや周りに人いるじゃん!!

  完璧な俺は他の人の配慮も忘れないんだ!」


 「私は別にいいと思うけど。

  だって私たちを見てる人ほとんどいないし」


 そう言われて周りを確認すると、確かに誰も見てない気がする。え、なんで???


 「ね?いいでしょ?」


 「わ、わかった」


 「言質取ったからね?」


 「?」


 不思議に思いながら俺は結愛から受け取った弁当の箱を開ける。


 す、すげぇ。超美味そう。


 ご飯が弁当の半分を占めていて、残り半分には唐揚げ、卵焼き、ひじき、ポテトサラダ、タコさんウィンナーなど。超栄養バランス良くて見た目も素晴らしい。


 これ絶対美味いわ。早く食べよう!


 「いただきまーす!」


 「いただきます」


 そう言った時、俺は違和感に気づく。


 「ごめん結愛、箸渡されてないんだけと?」


 「あ、ごめんなさい。箸は私の分しかないの」



           !?



 「‥‥‥え?じゃあ俺食べられないってこと?」


 「何言ってるの、箸はあるじゃない」



           ??



 「‥‥‥いや結愛の分だけだろ!?どうするんだ!」


 「そんなの2人で同じ箸を使えばいいじゃない」


 そういうと結愛はさっき俺に渡してきた大きい弁当を自分の方に持って行く。え、なんで??結愛の方に弁当が2つ。



       ‥‥‥そう言うことか。


 さすがにどういう事かわかった。この俺は察しがいいからな。鈍感主人公とは違う!!


 こいつ恐ろしいこと考えてやがる。しかもわざと箸を持ってこなかったのだろう。


 俺を恥ずか死させる気か?


 「さっき言質取ったから蒼空に拒否権はないわ」


 「‥‥‥はい」


 完璧な俺は理解した。完全に結愛のペースだと。俺のペースに持っていける日は来るのだろうか。


 結愛は大きいサイズの弁当に入ってる唐揚げを箸でつまんで、俺の方に差し出してくる。


 「はい、あ〜ん♡」


 「え!?ちょっとま!?」


 俺の口に唐揚げを押し込んでくる。ま、マジか。いや、美味いな!本当に美味い!


 「美味しい?」


 「う、うん。超美味い」


 「ありがとう♪じゃあ次はーー」


 こうして結愛からずっと食べさせられるのだった。俺は餌もらう雛鳥か??



 そしてかなりの時間がかかったがなんとか完食することができた。俺は今日の昼、一度も箸を触ってない。


 「ごちそうさまでした♪」


 「‥‥‥ご、ごちそうさま。

  すげー美味かった。サンキューな」


 「!どういたしまして♪

  私も蒼空との間接キス美味しかった♡

  ごちそうさまでした♪」


 や、やばい。結愛の行動力が常軌を逸している。


 こいつ、なんでここまで俺を恥ずかしくさせることができるんだ。恋する乙女ってこんなもん??


 これは完全に俺のことが好きだと伝わってくる。その好意にまだ応えられない俺は申し訳なくなる。


 

 結愛はこんな好意丸出しなことをしてるのにクラスのみんなは、なぜか何も言ってこない。ていうかほとんど俺たちを見てない。いや、見ていても何も驚かない。


 え、なんで???メンタル強くない??


 結愛って周りに猫かぶってたよね?学年1の美少女って言われてるよね??


 なんで誰も気にしてないんだ???


 完璧な俺にすら、何もわからないのであった。





 そして今日以降、七河蒼空について言われることが増えた。


 『七河蒼空は、外見以外に問題あり』



 『あの七海結愛を夢中にさせる何かがある』




 そして新たに言われ始めたことによって、蒼空に興味を持つ人が増えていくのは間違いない。



 学年一の美少女の頼みを解決したことにより、蒼空にとって初めて理解してくれる人が出来た。


     それが『七海結愛』だった。



    七河蒼空はこれからも行動を続ける。


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