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七河蒼空は、外見以外に問題あり  作者: とい
第1章 学年一の美少女と。
20/60

よくがんばったね。

 結愛が俺に馬乗りになっている状態で、今1番俺が人に知られたくないことを言おうとしている。


 頼む、違っていてくれ!!!!!!

 知られていたら俺はもう生きていけない!!!




  「あなたが必死に私を助けた本当の理由は」





  「()()()()()()()()()()()()()でしょ?」





    ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥




 「本当のあなたは周りの評価を気にしている。

  それに気づいたら1つおかしいことがあった。

  それはあなたが私に()()()()()()


 ‥‥‥だめだ‥‥‥もう完全にバレている‥‥‥



 「蒼空は最初、私に最低な要求を2つしたわよね??

  『胸揉ませろ』と『頬にキス』。

  本当のあなたに気づくまでは言葉の通り

  最低だと思った。

  でも本当のあなたがこんなこと言うわけがない。

  何か他の理由があるはず」


          「‥‥‥‥‥‥」



 「そこで気づいた。

  あなたはわざと私が絶対拒否するような

  要求をしたのでないかと。

  そんなことをする理由はただ1つだけ。

  後に言う()()の要求を通したいから。

  先に無理難題を言っておけば、

  後に軽くなった要求が通りやすくなる。

  その要求は、『友達になってくれ』だった」



       「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」



 「蒼空は、本当に私と友達になりたかったのね。

  いえ、少し違うわ。友達が欲しかったんでしょ?

  今思えば私がなんでこの要求をしたか聞いた時、

  あなたは言い淀んでたし

  明らかに普段と様子が違った。

  それに、要求で友達になってというのは

  明らかに今まで友達がいなかった人のセリフ。

  友達って要求されてなるものじゃないでしょ?

  あなたらしくないミスだったわね」



  ‥‥そうだよ。後になってミスったと思ったよ。


  けど、その程度のミスでバレるとは思わないだろ。


 「それに蒼空が私を友達候補に選んだのは、

  ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

  それと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

  たぶん理由は、

  弱みを握ってくるようなことをするだけでなく

  本性を明かした私は、

  他の人よりも隠していることが少ないと

  判断したからでしょ?

  あなたは人の隠している本性が

  わからなくて怖いから。

  だからこそ本性を明かしてきた私が適任だった」




       ‥‥‥お前は名探偵か?




   俺のことに関していえば間違いなく名探偵だ。


  自分が犯人で、徐々に追い詰められてる気分だ。




 「あなたは周りに自分を認めてほしくて

  がんばったけど、うまくいかなかった。

  自分で自分を褒めるくらい悪化していった。

  そしておそらくこう考えたのでしょ?

  その他大勢の評価を一気に変えるのが難しいなら

  まず友達を作って、

  その人から認めてもらえばいい。

  しかもそれで孤独が解消できるとも思った。

  でもあなたは他の人の自分に対する考えが

  分からず友達になろうなんて言えなかった。

  友達を作る方法がわからなかった。

  そんな時に私があなたに相談をしたから、

  その報酬として友達になってくれって

  言ったんでしょ?しかも私は適任だった」




  もういい。バレていることがわかった。




 「かなり長くなってしまったわね。まとめるわ。

  周りの評価を気にしていて

  それを変えたいと思って

  がんばってる。けど上手くいかないから、

  友達が欲しくなった。

  孤独感の解消にもつながる。

  そう思って今は、友達を作りたいという

  自己中心的な考えで行動をしている。

  それが本当のあなたよね???」

  



  「‥‥‥そうだよ。反論する気すら起きない。

   それが本当の俺だ。

   周りの評価を変えたい、自分を認めてほしいと

   思ってるくせに人が自分に対して何を考えてるか

   知るのが怖い。報酬という口実がなければ

   友達になることすらできない。

   これが本当の俺なんだよ。

   自分に自信なんてねぇよ。

   あるわけないだろ。俺はずっと1人だったんだ。

   俺はみんなが持っている当たり前なものが

   欲しかったんだ。

   休み時間に気軽に友達と話したい。

   昼食をとりながら友達と話したい。

   友達と一緒に帰って寄り道してみたい。

   そんなことをずっと考えてきたんだよ。

   さあ笑えよ。笑ってくれ、いっそ殺してくれ。

   俺はもう生きていける気がしない。

   友達になってもらえるようにがんばったのに、

   断られた挙げ句に本当の自分を知られた。

   こんな臆病で色々矛盾しまくってる

   クソダサい本当の俺を。

   こんな俺を誰が好きになる?

   今まで俺に告白してきた人はみんな

   俺の外見に惹かれたからだ。

   本当の俺なんて誰も見てない。

   受け入れてくれない。

   ああ、やっぱり俺は、俺には」



 

     「俺には、問題があるんだな」




 俺は全てがどうでもいいと感じるようになり、自分の顔を右腕で隠す。


 こんな至近距離で本当の俺に気づいた七海に笑われたら、本当に生きる希望が無くなると思ったからだ。


 「何言ってるの。

  私がなんであなたに

  このことを伝えたのかわかってる?

  私は他の人とは違う。

  ()()()()()()を含めて、

  蒼空が好きなんだと知ってもらうためよ」


 結愛が信じられないことを言う。本当の俺を含めて好き?あんなに情けなくてダサい本当の俺も好きだと?


 「‥‥‥何言ってんだ。そんなわけないだろ。

  本当の俺を好きになる要素がどこにある?」


 俺は右腕で顔を隠しながら、結愛と目が合わないようにしながら言う。


 「蒼空、こっち向きなさい」


 「‥‥‥」


 「向きなさい」


 「‥‥‥いやだ」


 嫌に決まってる今の俺の顔なんて見せられるわけが、




        「そら!!!!!」





 七海が俺の右腕を払って両手のひらで俺の頬を挟んで無理やり目を合わせてくる。見るな恥ずかしい。


 「ふざけないで!!!!

  本当のあなたが情けない!?

  ダサい!?カッコ悪い!?

  そんなこと私は一度も思ったことない!!

  だって蒼空のその友達になりたいって思いから

  生まれる自己中心的な考えは、

  美しいじゃない!!!

  そんな自己中心的な考え聞いたことない!!!

  今時の小学生すらそんなこと思わないわよ!!!?

  その考えは可愛くて、穢れがなくて、美しい!!

  可愛いすぎる!!!ずるい!!!!

  そんなの知ったら好きになるに決まってる!!

  それにその美しい自己中の考えの影響で

  無自覚に優しさまで備わってる!!!

  意図的に優しい奴なんかよりよっぽど好ましい!!

  なんなの!?決して完璧じゃないその性格が、

  あなたを完璧にしているんだから!!!

  むしろ他の人に知られてなくてよかった!!

  本当のあなたを知られたらみんな好きになる!!

  絶対に他の人なんかに

  本当のあなたを見せてあげない!!!!

  知っているのは私だけでいい!!!

  学年一の美少女と言われている

  私がここまで言ってるの!!!!

  恥ずかしいことなんて1つもない!!!

  自信を持っていい!!!完璧なんだから!!!

  この私をここまで夢中にさせたんだから!!!

  私は、ずっとあなたを認め続ける!!!!」

  



    七海にそう言われて、涙が止まらない。


    彼女は、本当に俺の欲しいものをくれる。


    七海が俺の上半身を起き上がらせ、


       俺は座った状態になる。


      そして俺を抱きしめてくれる。


      気づけば七海も泣いていた。



 「よくがんばったね。

  辛かったよね。

  寂しかったよね。

  私も周りを気にしていたからよくわかる。

  孤独は辛い。耐えられない。

  私と蒼空は似た者同士。

  だから私は本当の蒼空に気づけたのかもしれない。

  そう考えると私の生き方は間違ってなかったんだ。

  だってあなたをこんなにも好きになれたんだから」


 温かい。七海の言葉が温かい。彼女は本当に俺に欲しいものをくれる。こんなにもらっていいのだろうか。


 「でもこれだけは先に謝っておく。

  私は、あなたの友達にはなれない。

  だってこんなにも好きだから。愛してるから。

  友達なんかで我慢できない。

  都合がいいかもしれないけど、運命だと思ってる。

  あなたと似た者同士であること。

  あなたに会えたこと。

  あなたに相談したこと。

  本当のあなたに気づけたこと。

  だから、私はあなたの彼女になりたいの。

  大丈夫。友達なんて無理になる必要はない。

  もしあなたに告白を断られても、

  絶対にあなたを見捨てない。

  だって、そんなことで見捨てるほど

  私の気持ちは軽くないから。

  今度から二度と私の蒼空に対する

  気持ちをバカにしないでね。軽く見ないでね。

  こんなに気が合うのに離れていくわけがない。

  もしかしたら今後も周りから

  認められないかもしれない。

  でも私はあなたを認める。評価する。

  私からすると蒼空は完璧。だってあなたに」



 「『七河蒼空』に、問題なんてないんだから」



 「っ、ああっ、ああっ‥‥‥!!」


 声を我慢していたが、もう我慢できない。


 初めて本当の俺を、ダサい俺を受け入れてくれる人が現れたのだから。


 俺は七海に抱きしめられながら、号泣した。


 七海。ありがとう。ありがとう。ありがとう。


 俺は初めて、自分に問題はないと思うことができた。


   俺たちは、また2人でしばらく泣いていた。

  

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