最後の仕上げ
朝になった。
携帯にセットしていたアラームで俺は目を覚ます。
ふと気づく。なぜか体が重たい。瞼も重たい。
がんばって目を開けると、
仰向けに寝ていた俺の上に結愛が乗っていた。
「!!」
よくわからない声が出た。当然だ。
健全な男子には刺激が強すぎる。
完璧なこの俺にもな!!
「んぅ〜、んぅ、ん〜」
「結愛!朝ですよ!起きてくださーい!!」
肩を叩くと、俺の胸に頬をくっつけた状態で寝ていた結愛が目を覚ます。
「ん〜、うるさ〜い‥‥‥」
なるほど。結愛は朝弱いタイプなんだな。
そんなところも可愛いな!
いやそんなこと今はいいわ!
結愛が俺の上で馬乗りになった状態で起きる。
「ぅ〜、おぁよう〜」
「おはよう」
普通に朝を挨拶をする。いやそうじゃなくてな?
「なんでお前、俺のベッドにいるの?」
「ん〜?夜中にトイレ行った後たぶん寝ぼけてた〜。
蒼空がベッドで寝てたのが羨ましかったから〜」
寝ぼけている結愛は可愛い口調でそう言う。
可愛ければ許されるって思うなよ!いや許しました。
だからベッドで寝ていいって言ったのに‥
俺たちは別々の部屋で着替える。さすがに視界に入る場所で着替えられるとこの俺でも反応に困る。
朝食は食パンを焼いてジャムをつけて食べる。あまり時間がないのでそれで済ませた。普通に今日は平日で学校がある。
「今思ったんだが、お前今日の
時間割の教科書持ってないんじゃ?」
「持ってないわよ。
だから今日の授業の3時間分
あなたの教科書貸して?」
「何言ってんだ!?
お互い授業の半分の教科書
忘れたと先生に言うつもりか!?
俺は完璧イケメンなんだぞ!?
わざと忘れ物なんてしたくない!」
「今、私あなたの彼女よね???」
結愛がそう言ってくる。そろそろ頃合いだな。
「いや、今日からもう俺たちは恋人じゃないだろ?
もうお前の悩みは解決した。
お前には今日の授業の教科書全部貸してやるから
別々に出よう。
それと前みたいに今日から俺に話しかけてくるな。
わかったな?」
結愛は何を言っているかわからないという表情で俺を見ている。そんなこともわかるの俺すごくね!?
「‥‥‥どうしたの?蒼空らしくない。
なんでそんな冷たいこと言うの?」
まあそんな反応になるわな。
昨日と今日で全く違うから。けど、それも都合がいい。
「悪い。俺はこういう性格なんだ。
自分が良ければそれでいい。
冷たいと思うかもしれないけど俺たちは
そういう関係だっただろ?
もう俺に話しかけるな。お互いのためだ」
思ってもないことを言うのはさすがの俺でもキツいものがあるな。
「はぁ!?何よそれ!?
わかったわよ!!!!!
蒼空のことなんて知らない!!!!!!」
結愛はそう言って俺の家から出ていく。
俺の教科書を全部持っていって。
ちゃっかり持っていきやがったよ。
俺の元カノ恐るべし。
悪いな、結愛。最後の仕上げには必要なんだよ。
それに今日が金曜日なのも都合がいい。
俺は教室に入り、自分の席に座る。
結愛はもう席に着いている。
全く目を合わせてくれない。これでいい。
そして俺は授業のたびに教科書を忘れましたと言う。
そりゃクラスのみんなには笑われる。
俺には相当な屈辱だ!!!
頭脳明晰なのに!!!!!
完璧なのに!!!!
でもお茶目ポイント稼げるからいいか!!
全部忘れるってお茶目どころかヤバくね???
そうして今日最後の授業が終わり、放課後になる。
今日、結愛とは1度も話してない。目も合わせていない。よし、完璧だ。
クラスメイトが不思議に思っている。それはそうだろうな。
付き合っていることになっている俺と結愛が何も話さないどころか彼女が不機嫌そうなんだから。
それでも猫かぶってたのはさすが俺の元カノ。
さて、そろそろ始めるか!!




