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第93話 盟約を履行

 翌日裸のまま横ですやすやと寝息を立てて眠るリアンを起こさないよう、レオンはそっと着替え校長室へと向かった。


 中の様子を鑑定スキルで確認すると、すでにレオン以外の攻略対象者達は揃っているようだった。


「失礼します。」

 ノックと同時に扉を開けると、クリスは複雑そうな表情で、ロバートは鋭い眼差しで出迎えていた。


「・・・皆さんお久しぶりですね。レオン=クラリウス、ただいま戻りました。」

「おお、おお!レオン君、本当に無事で良かった!君がいなくなってから随分心配したんじゃよ。」

(嘘つけクソ校長。すぐにお兄様を俺の代わりの騎士役に仕立てやがったくせに。)


「・・・ご心配をおかけしました。世界樹の穢れを祓うため、随分魔力を消費してしまったようで、戻るのが遅れしまいました。」

「レオン、まずは君が無事だったことを喜ぼう。本当に良かった。だがしかし、我々に何の断りもなしに聖女のマリーを唆したこと、これは許すわけにはいかない!我々に言うべきことがあるだろう!!」


 エディオン校長との再会の握手を交わすレオンにクリスが大きな声を上げた。が、レオンはクリスの方を見る素振りも見せずに話を進めた。


「校長、世界樹の穢れを祓ったのは私と兄のルーク=クラリウスです。本日はこの3人と交わしていた盟約の確認、および盟約の魔法の発動をお願いしにお伺いいたしました。」

「なっ、貴様!クリス様のお言葉を無視するだけでなく、聖女を侮辱するとは!!」


 ロバートが腰の鞘を掴むと、レオンが圧をかけて睨み、その動きを止めながら魔法道具マジックアイテムを取り出した。


「ここに世界樹の穢れを祓った際の一部始終が録画されています。この道具は帝国管轄のこの街の道具屋で一般的に売られているものです。ご存知の方もいると思いますが、録画は一度きり。映像の改変も不可能です。」


 レオンの手元からクリスがジオルドに視線を変えると、ジオルドが淡々と説明を始めた。

「・・・レオンの言っていることは本当だ。私も開発に携わっているが、魔力を通すとそこから許容量まで自動的に録画が始まり、撮った映像を見ることしかできない。むしろ映像を変える等の魔力をかけようとすると壊れてしまうのがその道具の課題なんだ。」

「と言うことです。ま、見てもらった方が早いでしょう。」


 レオンが魔力を流すと、宙に映像が浮かび上がり、世界樹と交戦しているレオン・ルーク・フェルの3人の姿が映っていた。


「マリーはどこにいるんだ?」

「そう言うだろうと思って彼女の近くの映像も念のため撮影した。」


 レオンに見せられた映像は、戦っている3人、そして通路で眠っているマリーの姿だった。

「彼女ももちろんある程度は戦っていたが、世界樹の戦いの時は魔力切れで倒れていた。それが事実だ。」


 映像はレオンが世界樹の穢れを浄化し辺りが輝き出したところで終わっていた。

 映像が終わってもしばらくの間沈黙が続き、輝く世界樹を見ることができて涙を流して感動している校長と、言葉を探しているクリス達の中、ユリウスが口を開いた。


「映像だとレオンが浄化してたみたいだけど、お兄さんが光魔法の使い手じゃなかった?」

「・・・世界樹の戦いの最中、俺も光魔法が使えるようになったんだ。そんなことはどうでもいい。

 大切なことは、お前達と交わした盟約の条件だ。見た通り、俺と兄で世界樹の穢れを祓った。約束を果たしてもらおう。お前達の国内の一部、アレース公国へ献上しろ!!」


「分かった。私もデュメエル公国の次期王だ。約束を違えることはしない。ジオルド様も、ユリウスも次期国を背負う者として判断した結果だ。文句はない。」


(流石正義感の塊のクリス。お前以外とは既に話はついてることも知らずに、有難いことだ。)


「・・・クリス、流石は大国の王となる器だな。君の聡明さに感謝し、デュメエル公国からは・・・そうだな、元々我が国の兵を派遣していたサィノルト海岸一帯でどうだろう?」

「サィノルト海岸か・・・。」

「クリス様、あそこは世界樹から離れているためモンスターの出現が多く、持て余している土地です。問題ないかと。」

「そうか。では君の優しさに感謝し、我が国からはサィノルト海岸一帯を献上する旨を記そう。」

「判断が早くて助かるよ。ジオルド様とユリウスの国についてもこれでどうだ?」


 レオンが各国の地図にマークをつけると、それを確認するふりをして2人も了承した。


「・・・盟約の名の下にアレース公国へ土地の一部を献上したことを保証する。」


 校長が盟約の魔法を発動させるとすぐに

「俺のやりたいことは終わりましたので、今日付で学校は辞めます。」

 と告げ、部屋から颯爽と出て行ってしまった。



「校長先生、私は一度国に戻り父上へ盟約の件を説明したいのですが。」

「俺も説明しないと殺されちゃうな。」

「私も昨日お伝えした通り、帰らせていただきます。」

「・・・仕方ないのお。」



 クリス達に言い寄られた校長は、生徒達の王子としての立場や事の重大さを踏まえ、特例とし一週間のみの帰国およびその旨を他言しないことを条件に認めたのだった。


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