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第87話 協力

 コンコンッ。

「リアンちゃん、どうぞ。」

 夕食の後約束通りリアンはマリーの部屋を訪れた。


「失礼します。」

「どうぞ!適当に座ってね。ティーセット、借りて来たから淹れるね!」

「ありがとうございます。・・・指輪はこれですか?」

「あ、うん。いつもはネックレスにして首から下げてるんだけど。」

「拝見します。」


 リアンはルークからもらった指輪をまじまじと見つめた。

「・・・何度かルーク様からの連絡はあって、その時は使えるんだけど、私の方から話しかけても使えないみたいなの。」

「そうですか。宜しければ一度お預かりしても良いですか?」

「うん!私も使えるようにして欲しいし、お願いしてもいいかな?」

「はい。」


 会話が途切れると部屋に飾っている時計の音が聞こえるほどに部屋の中が静かだった。

(うっ、気まずい・・・。)



「ね、ねえリアンちゃんってルーク様やレオン様の妹さんなんだよね?」

「はい。養子ですので血の繋がりはありませんが。」

「その、どうして急に養子になったのか、聞いてもいい?レオン様のことって何か聞いていたりする?」


 リアンは手に持っていたカップを置くとマリーの瞳の奥を覗き込むように見つめた。真剣なリアンの表情にマリーもドキッとした。


「え、な、何?」

 マリーが目線を逸らしてもリアンは変わらずに真っ直ぐと見つめていた。


「マリーさんは、お兄様のことが好きなのですか?」

「お兄さんって、ルーク様のこと?」

「いえ。・・・レオンお兄様が学校に通っている時は恋仲のようだったと聞いていましたが、違うのですか?その後ルークお兄様とも特別な仲だったのかと。」

「・・・ルーク様に聞いたの?」

「ルークお兄様にも、聞きました。」


 マリーが返答に困り、口籠るとリアンは続けた。

「私は別にマリーさんがどなたと何をされようとそれを咎めるつもりもありません。ただ、ルークお兄様とは婚約関係にあるようですので、このままですとマリーさんは卒業後我がアレース公国に来られることになるかと思います。しかしながらマリーさんのご様子から、それはお望みではないのではないか、と感じましたが、どうでしょう。私の余計な詮索でしたら不躾に申し訳ございません。」


 リアンが頭を下げるとマリーは慌てて首を振った。

「リアンちゃんが謝る必要はないよ!その、リアンちゃんが言ってることは事実で・・・何て言えばいいか分からないんだけど、レオン様がいらっしゃった時はレオン様に惹かれたし、レオン様がいらっしゃらなくなってその後ルーク様と帝国内を回って、ルーク様にも惹かれていたの。お二人ともとても素敵だなって今でもその気持ちは変わってないんだけど・・・。ただその・・・」

「ジオルド様ですね?」


 リアンの言葉にマリーは固まり、ゆっくりと首を縦に振った。

「そうですか。」


 マリーは恐る恐る顔をあげ、リアンに聞き返した。

「リアンちゃんもジオルド様のことがお好きなの?」


 暗い表情のマリーを見て、リアンは心なしかいつもよりも楽しそうににっこりと微笑み返した。

「いいえ。ですが、ジオルド様は実は私との婚約の話が出ているのです。」

「・・・婚約?」

「はい。元々ルークお兄様と仲が良いジオルド様。お人柄ももちろんですが、お兄様との共同開発による魔法道具マジックアイテムも、商品として販売できるレベルまでいくつか開発が進んでいるのです。北と東の両国での友好関係をより強固なものにするためにも、アレース公国の王女となった私が嫁ぐことは最適でしょう。」


 前世の記憶でも、いつの時代も国同士の繋がりを強くするために婚姻関係を結ぶというのはおかしなことではない。しかし、それが自分が好意を抱いている相手に対するものともなれば、簡単に受け入れることはできなかった。


 より一層表情の曇ったマリーを見て、リアンは続けた。

「私はこの婚約に反対する権利を有しておりません。そのための養子ですから。

 ですが、学校に通うようになり、実際にジオルド様ともお話をして思ったんです。ジオルド様には好きな人と、マリーさんと結ばれて欲しい、と。」

「え?私と?」

「はい。ジオルド様はいつもマリーさんのことを想っています。マリーさんもお分かりでしょう?」

「そう、かな?ジオルド様はあまりお話をしない方ですし、今日はリアンちゃんとお話ししているご様子がとても楽しそうで・・・。」

「何を仰いますか。私はお兄様のこともあるので、ジオルド様にとっても妹のような存在に過ぎません。婚約の話も、ジオルド様に兄が提案をしましたが、まだ返答をいただいておりません。本来国を想うジオルド様にとってこれ以上にない提案にも関わらずです。どうしてか、マリーさんなら分かりますでしょう?」


 リアンの言葉にマリーの頬はほんのりと赤みを帯びていき、顔には笑顔が戻っていた。

「ジオルド様が、私のことを・・・?」


 リアンはまたにっこりと微笑んだ。


「私はお2人の力になりたいのです。ですからマリーさん、私に協力してください。」


 リアンはマリーの手を強く握りしめた。

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