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第86話 ライバルには負けない!

 マリーが震える声で研究室を飛び出して行った後、ジオルドは追いかけたい気持ちをグッと堪えた。

「・・・本当にこれで良かったのか?」


 ジオルドの言葉にリアンは紅茶を飲み干すとまたにっこりと笑った。

「女性の気持ちはジオルド様より私の方がよく存じております。彼女の態度も、貴方に惹かれているからこそです。もう少しですよ。」

(最も私も言われた通り動いているだけですが、流石はお父様。予定通りね。)


「では私もそろそろ失礼いたします。しばらくは彼女が来ても私の話題を振ってくださいね。」

「ああ・・・。」


 リアンが去った後、静かな研究室でジオルドは1人、マリーのほとんど手付かずで残されたカップにそっと彼女の名前を呼び、重ねるように唇を落とした。



 ♢



 寮の自室へ戻ったマリーはポロポロと溢れ出る涙を抑えられず、モヤモヤとする言い表せない気持ちを枕を壁に投げつけることで発散していた。

「もうっ!もうっ!!あの子教室で動きを見せないと思ってたら!いつの間にあんなに親しくして!ムカつく!!私がジオルド様ルートに進もうとしてるから、あの子もジオルド様ルートの妨害してるの!?もう何なのよ!

 ・・・あ〜。ハーレムルートで卒業まで進もうと思ってたのにな・・・。ジオルド様がいないんじゃハーレムの意味がないわ・・・。やっぱり私は主人公みたいに誰に対しても平等なんて無理だな・・・。」



 悶絶しながらマリーはリアン達の言葉を思い出し、首元の指輪に向かって魔力を込めた。

「これでいいのかな?・・・ルーク様、ルーク様、聞こえますか!?」


 リアン達の言葉が真実ならば、本来はこれですぐに使用できるはず。だが、指輪からは何の応答もなかった。


「・・・壊れてるのかな。ジオルド様には聞きづらいし、今度リアンさんに聞いてみようかな。

 よし、目元が腫れちゃわないようにお風呂入りに行こ。」


 マリーは反応のない指輪を外し、寮の大浴場へと向かった。


 マリーは前世の日本人だった記憶が関係しているのか、他の生徒達に比べいつも湯船に浸かり長湯をするタイプだった。大半の生徒は体を洗って少しすると出て行ってしまうので、いつも広い湯船を独り占めしていた。


「ふぅ〜・・・。やっぱりお風呂は気持ちいいな・・・。入浴剤とかあればもっと最高なんだけど。」


 この日は夕食前ということもあり、マリー以外にはまだ誰も来ていないようだった。水の滴る音を聴きながら、マリーは今後のことを考え始めた。


(私って公表はされてないけど、一応今はルーク様の婚約者なのかな。将来の話もしたし指輪ももらったし・・・。レオンは死んじゃったからそのポジションがルーク様って感じかな。ルーク様ももちろん格好良いし、一緒に旅してた時は素敵だったけど・・・やっぱりドキドキするのはジオルド様・・・。ルーク様には悪いけどルート変えたいなぁ。

 ジオルド様ルートだと、バッドエンドはジオルド様に刺されて死ぬっていう最悪のエンディングだったけど、ハッピーエンドなら普通に一緒に王宮で暮らすだけだよね。ジオルド様が色々研究してるアイテムに私の前世のアイデアとかで力になれれば、ジオルド様も喜んでくれるよね・・・。)



「ご一緒してもよろしいですか?」

 考えに集中していたマリーを驚かせたのは、リアンだった。


「え、あっ、もちろんです!あ、リアンさんだったのね。ごめんなさい、考え事をしていて気付きませんでした。」

 

 音を立てずにスラリと伸びた脚から順に入浴し、普段は長い髪で見えない首元が覗くリアンの姿は、同性のマリーも唾を飲み込むほど妖艶だった。


(綺麗・・・。で、でも私の方が胸は大きいし、可愛い顔してる!!負けてないわ!)



「私マリーさんと一度2人きりで話がしてみたかったんです。」

「本当ですか?私もリアンさんとは仲良くしたいなって思ってました!

 あっ、ルーク様とお話ができる指輪なんですけど、やっぱり壊れてるみたいで、魔力を込めても反応しなかったので後で見ていただけませんか?」

「あら、そうなんですか。では夕食を終えたらお部屋にお伺いしてもよろしいですか?」

「ありがとうございます!あ、私には敬語じゃなくても大丈夫ですよ!名前もマリーって呼んでください!」


 マリーが主人公の必殺技である輝く笑顔を見せても、リアンはいつものようににっこりと微笑見返した。


「ありがとうございます。ですが私、マリーさん達より歳も下で、敬語の方が使いやすいんです。マリーさんが宜しければ私のことはリアンとお気軽に呼んでください。敬語も無くて大丈夫です。」

「そ、そう・・・?じゃあお言葉に甘えてリアンちゃんって呼ぶね。」

「はい。」



 その後会話も続かず、暑くなったマリーはまた逃げるように出て行った。

(あの子、何だか苦手・・・でもジオルド様がああいう静かな子好きだったら・・・。

 ううん!今はどうか分からないけど最初はジオルド様も私への好感度高かったんだから、大丈夫よ!うん!)



 マリーは自分を奮い立たせ、夕食を終えると部屋でライバルであるリアンを待ち構えた。


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