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第83話 ライバルキャラの登場

 少女が教室に足を踏み入れると騒がしかった教室の空気は一変した。クラスメイト達全員が息を呑むほどの美しい少女は、静かな教室の中、その外見に相応しい澄んだ声で言葉を発した。


「はじめまして。リアン=クラリウスと申します。訳あって最高学年での入学をさせていただきましたが、皆様の足を引っ張ることがないよう努力いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。」


「クラリウス・・・?」

「え、まさかアレース公国の?」


 リアンが挨拶を終えると同時に生徒達は一斉にざわめき始め、担任はそれを諌めるように咳払いをし、帰りの挨拶をするととともに、リアンも担任に続いて教室から出て行ってしまった。

 2人が出て行った後の教室は帰り支度をしつつも一様にリアンの話題で持ちきりになっていた。クリス達も例外ではなく、むしろ公国の次期当主を担う可能性が高い彼らにこそ、興味をそそる存在だった。


「なぁなぁ、クラリウスってことはレオンやルーク様の妹ってことかな?」

「年代的にもその可能性が高いだろうが、妹君がいるとは聞いたことがなかったな。」

「はい、私の情報でもクラリウス家の子供は2人と聞いていました。もしかしますとレオンがいなくなったために養子を取られたのかもしれませんね。」

「そうだな。マリーは何か聞いていたかい?」


 皆がリアンの存在を楽しそうに噂する中、マリーだけは顔が真っ青になっていた。


(そんな。せっかくゲームの山場をクリアしたと思ってたのに・・・)


「マリー、大丈夫かい?顔色が悪いな。」

「マリーちゃん、保健室行く?」

 ユリウスに不意に顔を覗き込まれ、マリーはやっと現実に戻ってきた。


「わっ、ユリー、驚かせないで!」

「だって何度も呼んだのに反応がないからさ。大丈夫?具合悪い?」

「顔色も悪いように見える。私が保健室まで連れて行こう。」

「いや、俺が連れてくからクリスはロバートと一緒に寮に戻ってろよ。」

「いや、最初に気が付いたのは私だ!」


(また始まった・・・もう、頭痛くなって来た。あーイライラする。)

 バンッ!!


 マリーは想いのままに両手を机に叩きつけた。普段のマリーは決してやらないような行動に、3人は一斉に目を丸くしてマリーを見つめた。


「・・・ごめんなさい、先に失礼しますね。また明日。」

 その表情はいつもと変わらないにっこりとした笑顔だったが、3人は鞄を持って振り向きもせずにスタスタと教室から出ていくマリーを呼び止めることすらもできないほどに驚いていた。



(あーーやっちゃった。でももう毎日毎日正直迷惑なんだよね。ジオルド様の所で休憩させてもらおう。)


 マリーは廊下を歩きながら主人公らしからぬ行動に反省しながら、ジオルドの研究室まで真っ直ぐに向かった。しかし、扉を何度叩いてもジオルドからの返答はなく、この日は憩いの時間を取ることなく寮へと戻ることになってしまった。



 制服のまま自室のベッドに倒れ込むと、マリーは前世の記憶を思い出そうと目を閉じた。

「あのリアンって子、多分第二弾で出てくるって言われてた主人公を妨害するキャラクターだよね?ビジュアルだけはサイトに載ってたけど、それ以外の情報はあんまり知らないんだよね・・・。

 んー。とりあえず王道で行くなら悪役令嬢って感じ?分かりやすくクリス様達に近づいてきてぶりっ子してくる感じかなぁ。ま、でも今はみんなの好感度高いっぽいし、このままハーレムルートで卒業式まで進めて、最終的には誰かの王妃様になって、その後は優雅に幸せな生活・・・!転生した時は孤児で教会暮らしとか本当しんどかったけど、耐えたんだから残りの人生は幸せに暮らさないと!!

 がんばれ私!がんばれマリー!えい、えい、おー!!」


 マリーは部屋の中で1人自分にエールを送り、その日は気持ちをリフレッシュさせるために寮の浴場に長く浸かり、ぽかぽかの体でベッドに入ると昨日寝付けなかったのが嘘のようにすぐに眠りにつくことができた。



 ♢



 翌日以降リアンの出方を伺っていたマリーだったが、彼女は一向に近づいてこようとする素振りを見せることはなく、教室の片隅で静かに読書をしていた。クラスメイト達もリアンの周りだけが時が止まっているかのような、その神々しい様子に、中々声をかけられずにいたが、マリーの時同様に先陣を切って声をかけたのはクリスだった。


「やあ。私はクリストファー=ジョン=アルベイル。デュメエル公国の第一王子だ。気軽にクリスと呼んでくれ。こっちは私の騎士であり従者のロバートだ。」

「あ、俺はユリウス=ライトリヒ!ユリーって呼んでね!俺もヘルメス公国の王子だよ!」

 ユリウスもクリスに負けじと後ろからひょっこりと顔を出し、声をかけた。マリーもそれに続くように

「私はマリアンヌです。マリーって呼んでください。分からないことがあればなんでも聞いてくださいね。」

 と声をかけた。


 リアンは読んでいた本を閉じ、すっと立ち上がり頭を下げると、

「クリス様。ユリー様。マリー様。ロバート様。ご丁寧にご挨拶いただきありがとうございます。リアン=クラリウスです。どうぞ私のこともお気軽にリアンとお呼びください。」

 と微笑んだ。その笑顔は女のマリーですらもドキッとするような、妖艶な笑みだった。


「あ、ああ。よろしく、リアン。ところで君はアレース公国のクラリウス公爵の御令嬢なのかな?」

「はい。直接の血縁関係はありませんが、昨年養子になりましたので、戸籍上は公爵家の第3子となります。公爵家の人間としての教養を養うため、この学校に入学させていただきました。」

「そうなのか。君の兄君達のことはよく知っているよ。ぜひ仲良くしてくれ。」

「ありがとうございます。何か分からないところがありましたら、お声がけさせていただきますね。」


 リアンがにっこり笑うと、無神経なクリスでもそれ以上話を続けることはできず、挨拶を済ませるとそそくさといつもの位置に4人は戻って行った。


(なぁんだ。拍子抜けね。この子暗そうだわ。彼女はとりあえず問題なさそうだから、まずはテストに向けて頑張らないと!)



 その後はクラスメイト達も含め寡黙なリアンを遠巻きで眺めるだけになり、彼女は常に教室の端で読書をしている存在となった。



 その後もマリーは定期的にクリス達を巻いてはジオルドの研究室で黙々と勉強に励み、中間試験を迎えた。


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