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第80話 卒業、そして進学

 嘘の共有ほど、容易く信頼関係を築けるものはない。

 マリーはルークの指示通りに聖女として行ったことや設定を暗記し、2人は各地での聖女と騎士としてのパフォーマンスを見事にこなした。


 マリーは移動の馬車の中、ルークの横にべったりと張り付き離れようとはしなかったが、これは側から見れば通例通り聖女と騎士が恋人関係に発展したものと見えてルークにとっても好都合だった。マリーが人目のつかないところで口付けなどを要求した際のみ、「レオンに悪いから」とルークは要求を躱していたが、腕を組んだり手を繋ぐことはむしろ率先して対応していた。



 各国でのパレードや破損した街での奉仕作業は3ヶ月にも及んだが、その長旅も今日で終わり、2人は学校への帰り道を迎えていた。


「・・・今日でルーク様との旅行も終わりですね。学校でもまた会えますよね?」

「マリー、私はもう学校を卒業するんだ。」

「え!?それじゃ学校では会えないってことですか!?」

「ああ。先の戦いで父上が怪我を負っていてね。アレース公国に帰り、王位を継承するんだ。」

「え、ルーク様が王様になるってことですか!?」

「ふふ、そうなるね。マリーにもいつか来て欲しいと思っているが、まだ公国内の仕事も片付いていない中、君を一緒に連れて行くのは心苦しい。君にだから言うけれど、私はアレース公国をより良い国にしていきたいと思っている。そのためには今の公国のままではいけないんだ。一度公国の制度を全て見直さなければならないと考えている。どうだろうか、マリー。私のために力を貸してくれないか?」

「ルーク様のためなら、何でもしますわ!光魔法で治癒院を開いて帝国一の医療国家にするとかはどうですか?」

「それもいいね。」

「えっ」


 ルークはマリーの手をとり、その指に口付けをし、指輪を渡した。


「しばらくは離れ離れになるけれど、君にこれを渡そう。魔力を通せばいつでも私と話ができる。何かあればいつでも呼んでくれ。」

「ルーク様・・・!ありがとうございます。大切にします!」

 ルークはニコッと微笑む、マリーは指輪を嬉しそうに見つめながら、ルークの肩にもたれかかり、2人の長旅は幕を下ろした。



 ♢



 草木が芽吹き、春の訪れを感じる頃、ルークとジオルドは学校を卒業した。ルークは国に戻りアレース公国の王となるべく床に伏せる父の指導を受け、ジオルドは研究員としてそのままアースガルド帝国魔法学校に勤めることになった。

 そしてマリー、クリス、ロバート、ユリウスの4人は最高学年である三学年へと進学した。


「皆さんとまた同じクラスになれて、私嬉しいですっ!」

「ああ、私もだよ。」

「マリーちゃん、街に新しいケーキ屋さん出来たんだって。今度俺と行こ!」

「ユリウス、抜け駆けはやめないか!」

「ふふ、みんなで行きましょ!マリー甘いものだぁい好き!」


 ルークとの旅を経てもマリーの態度が変わらずクリス達との関係を維持したのはルークからの指示だった。ルークは自分との関係がバレてマリーの学生生活にヒビが入るようなことがあってはいけないと、レオンと自分との関係を誰にも言わないよう念を押していた。これは周りからちやほやされていたいという気持ちが強いマリーにとっても願ってもない申し出だった。


(好感度の分かる鑑定水晶は壊れてしまったみたいでみんなの好感度が分からないけど、こんなにちやほやしてくれるんだからみんな私のこと好きなのよね。レオン様がこのまま戻って来なくても、何もなく卒業すればルーク様の王妃様になれるし、学校生活楽しんでってルーク様も言ってくれたから何しても大丈夫だよね。

 世界樹の戦い以外バトルシーンなかったはずだし、恋愛ゲームとして残り一年楽しむわよー!)



 こうしてマリーにとって最高の学校生活が始まった。

 マリーは他のメンバーの目を盗み、それぞれの攻略対象者と密会を重ねた。


 攻略対象者達はそれぞれ誰にも言えない悩みを抱えている。本来はゲームの中で正しい選択肢を選択し続けることで各攻略対象者からの悩みを聞き出し、それを優しく受け止め包み込み、愛を育んでいくのがこのゲームの醍醐味だ。しかし前世の記憶を持っているマリーにとっては、「正しい選択を選択すること」は非常に簡単なことだった。


 各国の王子は自分の弱さを何故か感じ取り、誰にも知られたくなかった自分を否定することなく受け入れてくれる主人公のマリーにどんどん惹かれていった。


 教室では攻略対象者たちがマリーをもてはやし、騒がしい時間を抜け出して研究室に行けばジオルドがマリーの好きな紅茶を出して静かな甘いひと時を過ごすこともできる。街に行けばなんでも好きなものを買い与えられる。



(ああ・・・ゲームではハーレムルートなかったけど、それが実現できるリアルって最高!!)



 夢のようなひとときにより、マリーは転生して良かったと心から思えるようになっていったのだった。



「転生万歳!!!!!」



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