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第73話 最後の戦い

「マリーが!?分かったすぐ行く!フェルはお兄様と一緒に追いかけて来てくれ!」


 レオンはフェルに事情を聞くと入れ替わるようにしてすぐに5階層へと向かった。

「ゲホッ!これは、すごいな・・・<ウォーター>!」


 狭い洞窟内では火を消しても煙が籠り、レオンの視界を遮った。

(くそっ、階段の下にはいなそうだな、奥に進んだか。)



「キャー!!!!!」

 レオンが鑑定スキルを使おうとしたその時、奥の方から女性の叫び声が聞こえた。


「そっちか!」

 レオンが全速力で声の方向へと走ると、そこにはモンスターに襲われながら逃げ惑うマリーがいた。


「あれは、ミノタウロスか!」


「ブモーーーー!!!」

「やめて、来ないで、殺さないでー!!!」

 マリーはミノタウロスの大きな斧の攻撃を間一髪で避け続けていたが、顔をぐしゃぐしゃに歪めながら逃げ回るマリーを見てわざと外しているようにも見えた。


「マリー!光魔法を使って反撃するんだ!!!」

「レオン様!た、助けて!!!いやー!!」

「マリーしっかりしろ!君の魔法なら倒せるはずだ!」

「いやー!!!!!」

(あれはもうダメだな。仕方ない・・・。)


 ミノタウロスがマリー目掛けて斧を振り下ろそうとしたその瞬間、レオンはルークからもらった剣でその攻撃を受け止めた。レオンの数倍もある体格のミノタウロスであっても、桁違いのステータスを持っているレオンの前では敵ではなかった。


「マリー!俺が受け止めてるから攻撃しろ!」

「あ、あ、あ・・・もう、もういやー!!!」

「マリー!そっちに行くな!マリー!・・・くそっ!」


 マリーはレオンを置いてその場から走り出してしまった。反対にマリーをいたぶっていた間に仲間のミノタウロス達が集まって来ており、レオンを囲むようにジリジリと間合いをつめて来ていた。


「ブモー!!」

「・・・この、うっせえんだよ!オラァ!!!オラ、オラー!!!」


 レオンは斧を弾き飛ばしその勢いのままミノタウロスの体を真っ二つに切断した。

 そして次々に襲いかかってくるミノタウロス達を切り裂き、フェルとルークがレオンに合流した頃には、レオンはミノタウロス達の亡骸の上に立ち、その全身は真っ赤に染まっていた。



「レオン!!!!!」

「はぁはぁ・・・お、お兄様。フェル。」

「大丈夫か?<ヒール>!」

「あ、ありがとうございます。俺はだ、大丈夫です。流石にちょっと動き回って息が上がりましたけど・・・。」

「そうか。・・・マリーは?」


 レオンは顔を拭きながら呼吸を整え、

「奥へと進んでしまいました。もうここは世界樹のすぐそばです。もしマリーが世界樹まで到達してしまっていたら、戦闘が始めっているはずです。お兄様は先程の赤竜レッドドラゴンの時同様に通路から出ないでください。いいですね?」

 とルークに念を押した。


「死なれちゃ困るんで先に行きます!途中のモンスターは倒せないかもしれないので、気をつけて来てください。フェル、お兄様を頼んだぞ!!」

「レオン!!!」

 レオンはルークの呼びかけに振り向くことなく、マリーの元へと急いだ。


(嫌な感じだ。今のマリーの光魔法はレベル5になってるのか?くそ。先に操って仕舞えば良かった・・・。)



 レオンの嫌な予感は的中した。

 マリーは5階層目の通路にはおらず、最奥の世界樹のある場所まで辿り着いていた。通路から見下ろす形で聳え立つ世界樹の麓に彼女の姿を確認した。


「マリー!!!」

 

 世界樹に穢れが溜まるとモンスターとなる。そしてその世界樹の無限の力を使い、穢れが祓われるまで世界樹は暴走を続ける。ゲームの設定では暴走する世界樹の攻撃を騎士役の攻略対象者が捌き、その間に主人公が光魔法で浄化を続けるのだ。

 しかし主人公の聖女であるマリーは既に世界樹の攻撃が当たり、世界樹の麓の白い花々を赤く染めながら横たわっていた。



 マリーの元まですぐに駆け寄ろうと飛び降りたレオンの行く手を世界樹の無数の枝が襲いかかる。

「くそっ、これじゃマリーに近づけない!!」


 本来ゲームの世界では今のレオンよりもレベルの低い攻略対象者であっても世界樹の攻撃を捌き切っていた。にもかかわらず、今のレオンを持ってしても捌くだけで手一杯だった。



(これもゲーム補正なのか!?どうする、このままマリーが死んだら光魔法はもう無理だ!どうする!?)


「くそっ、さっきの戦いで疲れて、もう捌き切れない・・・<暗黒球ダークスフィア>!これで攻撃は一旦当たらないだろ・・・うわっ!」

 レオンは攻撃が当たらないよう体を魔法で包み込んだが、その球体ごと世界樹の枝に包み込まれてしまった。


「くそ、どうすればいいんだ・・・何か策を練らなければ・・・。」

 外の世界から隔絶された暗闇の中で焦りながらも今できることで作戦を考えていると、奇妙な音が聞こえてきた。


 ピシッピシッ



 それは絶対無敵の防御だった暗黒球が、初めて破壊されようとしている音だった。




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