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第72話 危険なお花摘み

 赤竜の攻撃も油断して受けた一撃以外は全てかわし、ただ一方的に攻撃する。心配していたルークさえも肩の力が抜ける一方的な戦いはあっという間に勝敗がつき、大きな雄叫びとともに赤竜は動かなくなった。


「レオン!怪我はないかい?」

「お兄様、問題ありませんよ。」


 赤竜が倒れるとほぼ同時にルークとフェルはレオン、そしてレオンが抱き抱えてぐったりとしているマリーの元へと駆け寄った。


「マリーはまた気を失っているのかい?」

「はい。魔力切れですね。ちょうど良かったです。フェル、さっきと同じように石を並べて紅茶を淹れてくれ。」

「了解です!」


 倒れた赤竜をレオンの闇空間ダークベースへと入れ、代わりにティーセットを取り出す。


 マリーが目を覚ます頃には、多少土壁の様子は異なれど、ほぼ同じ状況が完成していた。


「・・・うっ。あれ、私・・・。」

「マリー目が覚めたか。」

「レオン様、私、また眠ってしまったんですか?」

「ああ。疲れが出たんだろう。具合はどうだ?」

「まだ頭がぼんやりしてますが、大丈夫です。」

「ほら、魔力回復薬、もう1本飲んでおけ。」

「あ、でも、その・・・。」

「いいから飲め。」

「はい。」


 マリーはレオンから半ば強引に回復薬を渡され、見つめるレオンの圧に押されて回復薬を一気飲みした。


「マリー様、暖かい紅茶も淹れなおしましたので、どうぞ。」

「あ、フェルさん、ありがとうございます。あの、その・・・。」

「どうかされましたか?」


 フェルがキョロキョロとし出すマリーに顔を近づけると、マリーはレオン達に聞こえないようフェルの耳元で囁いた。

「お花を摘みに行きたいんですけど・・・。」


「お花?・・・あー!おしっこですね!」

 フェルは元々外で暮らしていたためか、この手の気遣いは出来ず、悪気なくマリーの乙女心を辱めた。マリーは真っ赤になって体を縮め、レオンはそんな2人の様子を見てため息をつきながら、闇空間からサバイバル用の簡易トイレを取り出しフェルに渡した。

 レオンの隣に座っているマリーが使うのだからレオンからマリーに渡すことも可能だが、これはレオンなりの気遣いだった。


「マリー様、これ組み立ても必要なので一緒に行きましょう。」

「あまり遠くに行かないようにな!」


 マリーは俯きながらそそくさと通路の方に向かい、フェルはそんなマリーの様子を面白がっているようにすら見えた。


「ふふっ、フェルは本当に明るくなったよね。」

「まあたくさん言葉を話せるようにはなりましたが、でも従者としての教育はまだまだですね。」

「でも彼女は従者と言うよりもレオンの友人に近いんじゃないかな?私はレオンが私以外にも本音で話せる人ができて嬉しいよ。」

「お兄様・・・。ありがとうございます。」


 2人の間には少し照れ臭い、暖かい空気が流れ、レオンは束の間の兄とのティータイムを満喫していた。

 


 一方、明るい広場から少しでも離れた場所で用を足したいマリーはフェルが組み立てた簡易トイレを手に5階層目の階段を降りていた。


「フェルさんは階段の上にいてください。私、ちょっとお花を摘んできますので・・・。」

「階段の下はモンスターいるかもしれませんから気をつけてくださいね。片付けは私がしますので終わったら呼んでください。」


 マリーはこの時フェルの忠告を右から左へと受け流していた。自分は聖女であるという自信、そして次に出てくる4階層目のモンスターが何か分かっている余裕のためだった。


(4階層目なら何か出てきても魔法で攻撃すれば倒せるし、臭いとかしたらやだからね。ふーー。ああでもまだ頭が痛いわ。魔力切れって二日酔いみたいな感じなのね、レオン様に言ってもう来るのはやめておこう・・・。)


「・・・さてと、<クリーン>。フェルさんはああ言ってたけど同じ女性同士でもトイレを見せるのは嫌だからな、うん。・・・<ファイヤ>。」

 生活魔法で体を清め、使用した簡易トイレは排出物とともに燃やして完了。燃やさずに埋める場合もあるが、土魔法の使えないマリーにとっては燃やす一択だった。しかし、この選択は良くなかった。


 レオン同様にマリーの魔力量は人並外れており、生活魔法及び光魔法については学校で一通り習ったことはあっても光魔法以外を使う機会はこれまでほとんどなく、ましてや朦朧とした意識の中狭い洞窟内での火は自殺行為とも言えた。


「え、ちょ、な、何よこれ!!!」

 マリーが放ったファイヤは火炎放射器さながらの勢いで放出され、瞬く間にあたり一面を火の海へと変えた。マリーが狼狽え動揺している間に近くにあった階段も全て炎に包まれ、マリーはどうすることもできずにパニック状態へと陥っていた。


「マリー様!!!これは一体、どうしたんですか!!ご無事ですか!?」

「わ、分からないわよ!ただちょっと、火を出しただけなのに!!!!!」

「とにかく私はレオン様を呼んできますので、マリー様は煙を吸い込まないように身を伏せていてください!」

「早く!早くして!!!ゲホッ、ゴホッ!」



 フェルは急いでレオンとルークの元へと駆け戻り、マリーはその間もどんどん燃え広がっていく炎に怯え、少しでも炎から離れようとパニック状態のまま奥へと進んで行った。


(いやよ、こんな所で私死にたくない!!!)


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