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第71話 俺のモンスター、マリー

「ルークお兄様、少しよろしいですか?」

「ああ。」

「マリー、少し様子を見てくるからここで休んでてくれ。」

「はい、レオン様。」


 レオンはルークを連れて3階層の中程まで戻った。

「やっぱりモンスターはリポップしてませんね。」

「そうだね、彼女の光魔法レベルはまだレベル4なんだよね?」

「はい。どれくらい使えばレベルが上がるのか分からないのでなんとも言えませんが、俺の記憶が正しければ世界樹の穢れを祓うためにはレベル5に達している必要があるはずです。残りの4、5階層でレベル5に達し、それを俺が複製コピーして世界樹の穢れを祓えれば、みんなダンジョンから出られると思います。そのためには・・・。」

「もう一度彼女を操るんだね?」

「はい。」


 ルークは少し考え込んだ素振りを見せたが、レオンの提案以外にダンジョンを出る術がないことは事実だった。


「レオンの提案には賛成だけど、彼女の様子を見るにレオンの魔法の副作用は強いみたいだ。まだ顔色も悪いし頭痛も治っていないようだよ。もう少し休ませた方がいいかもしれない。」

「・・・お兄様、お言葉ですが世界樹の穢れはどんどん増していきます。ゲームの中では世界樹へ出発すると同時にダンジョン外にモンスターが溢れ出して、残りの攻略対象者達も力を合わせて戦っているという設定でした。もしかすると今街にモンスターが発生し始めてるかもしれません。」

「そうなのかい!?ちょっと待っててくれ。・・・ジオルド、ジオルド?聞こえるかい!?」

『・・・・・』


 ルークがピアス型通信機に魔力を通してもジオルドからの返事は一向に聞こえなかった。

「反応がないな。ジオルドには常に魔力を通しておいてくれと頼んだから、やはり外でも何かあったのかもしれない。レオンの言う通りなら、悠長なことは言ってられないね。

 ・・・分かった。彼女には申し訳ないが、また操らせてもらおう。ただね、レオン。いくら彼女のHPが高く、自己回復力があるとしても怪我をしたら痛いことに変わりはないはずだ。レオンだって同じだ。攻撃が当たれば痛いんだ。全てを避けるのは無理かもしれないが、彼女のことも守ってあげてほしい。ダメかな?」

 

 ルークが眉を八の字にしてレオンを見つめると、レオンの心臓はいつもギュンと痛くなる。

(くぅ・・・お兄様、俺がこの顔に弱いこと知ってるな・・・。)


 レオンははぁと深いため息をつきつつも少し嬉しそうに応えた。

「お兄様のお願いを俺が断ったことありますか?分かりました、でわ彼女はボス戦の時同様に俺が援護しながら進みましょう。その分お兄様の守りが手薄になってしまいますので、フェルの側から離れないでください。いいですね?」

「うん、ありがとう、レオン。」



 話が着いた2人はマリーとフェルの元へと戻り、マリーのHP、MPが全回復していることを鑑定で確認した後再度闇魔法を行使した。


「よし、では4階層に行きましょう。」


 マリーを先頭に光魔法を放ち、マリーに攻撃が当たりそうな場合はレオンがカバーしながら真っ直ぐに進む。基本的にはマリーは全てのモンスターを倒すか魔力切れで倒れるまでひたすら光魔法を放つためルークに危害が及ぶことはないが、それでもレオンは時折ルークの様子を見ながら進んで行った。


 3階層目までは一撃で倒せていていたモンスター達も強くなり、マリーは4階層フロアのボス戦に行く前に魔力が切れ、レオンは意識を失う前にマリーに魔力回復薬を飲ませた。意識が失うとレオンの魔法が一度切れてしまい、マリーが正気に戻った時に辻褄が合わなくなる危険性があるためレオンはマリーの意識が切れないよう鑑定スキルでマリーのMP残量も常に確認していた。


暗黒霧ダーク・スモークを使いながら鑑定スキルも使ってると流石に俺もさっき回復したのにもう半分もないな。早くマリーの光魔法のレベルが上がれば問題ないんだが・・・)


 ただ無心で魔法を放つ兵器のようなマリーの攻撃で、あっという間にまた3階層目と同じく通路の奥から光が見えてきた。

「お兄様、フェル。4階層目のボス戦に入りますので2人は終わるまで通路から出ないでください!」

「分かった。レオン、気をつけてね!」

「はい!マリー行くぞ!」


 レオンは真っ直ぐ歩き続けようとするマリーを抱き抱え、フロアボスのエリアに足を踏み入れすぐに上空へと飛んだ。


「・・・やっぱりな。」

 4階層目のフロアボスは【赤竜レッドドラゴン】。ゲームの中でも戦闘が始まる前に口から炎を出し、ヒロインと攻略対象者が火傷を負った状態で戦闘が開始する。課金ガチャで手に入れたアイテムを身につけておけば火傷などの状態異常にならないものもあったが、課金をしていないプレイヤーにとっては、毎ターンごとにHPが削られるため初見殺しとも言える技だった。


(あのゲーム本当に恋愛シュミレーションゲームにしてはバトル要素に力入れすぎなんだよな。それが楽しくて男性ファンもいたみたいだけど、女性ファンのためにもバトルは少しで良かったのにな・・・)


「ほらよっと。お前が火を吹くのは連続じゃできないのは分かってるからな!その間に攻撃させてもらうぜ!!マリー、行けー!!」

「<女神の斬撃ライニングスラッシュ>・・・<女神の斬撃>・・・」

(なんか俺、カッコ悪いな・・・。ドラゴン見たら流石に俺も戦ってみたくなってきたわ。〇〇〇〇マスターみたいじゃん。)


 赤竜はマリーの攻撃を受けて大きな悲鳴をあげると鼻息を荒くして体を大きく回転させた。


「あ、やべ。」


 レオンはすぐにマリーを抱き抱えたものの、赤竜の尻尾に当たり、2人は勢いよく壁へと叩きつけられた。

 ガラガラと崩れる岩肌に土煙が立ち込み2人の姿は見えないが、赤竜は喜んでいるかのように雄叫びをあげていた。



「レオン!マリー!!」

 通路から様子を見ていたルークは慌てて2人の元へと駆け寄ろうとしたが、フェルはにっこり笑いながらルークを止めた。

「ルーク様、大丈夫ですよ。」



 フェルの言葉通り土煙が収まってくると、黒い球が壁にめり込んでいるのが見えた。

「あれはレオンの・・・」


「ふー。暗黒球ダークスフィアも使っちゃったからMPが結構やばいな。回復薬飲んどくか。マリー、魔法を使うのをやめろ。」

(回復薬は残り5本か。マリーももうすぐ魔力切れになりそうだし、4本で5階層目か。こいつ倒してレベル5になればいいけど。)



「よし、マリー再び攻撃開始だ!!」


 レオンは回復薬を飲み干すと暗黒球を解除し、マリーの放つ魔法が赤竜に当たるように位置取りをしつつ軽やかに赤竜の攻撃を避け、一方的な攻撃を続けたのだった。



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