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第68話 世界救いに行きますか

 通信機器からはジオルドが何かを発しているようだったが、ピアスを装着していないレオンには聞き取ることはできなかった。


「うん、ああ。私たちは問題ない。うん、聖女も怪我1つしていないよ。ああ、一旦ジオルドはそのまま待っててくれ。また連絡する。」

「お兄様?いつの間にジオルド様にもピアスを渡していたんですか?」

(俺とお兄様2人だけのお揃いアイテムだと思ってたのに・・・!)


「ふふ、ごめんね。レオンは結構顔に出やすいタイプだから内緒にしていたんだ。ジオルドが味方なわけではないけど、ちょっと気になることがあったから今だけ協力してもらったんだよ。」

「気になることって一体?」

「・・・レオンの言っていたシナリオ通りに進み始めているってことさ。」

「え?シナリオが?」

 ルークはコクンと頷いた。


「レオンの話では、世界樹に旅立つ前夜、主人公が選んだ騎士役の攻略対象者と密会するんだったよね?」

「はい。各攻略対象者によって場所は異なりますが、必ず前夜に旅立ちの決意を2人で話してましたね。」

(まあ恋愛シミュレーションゲームの醍醐味って感じのシーンだから、あそこはどのキャラも凝ったスチルだったよな)


「詳細は違えど、レオンとマリーは昨日世界樹に共に行こうと噴水の前で話していた。私はそれがその必ず発生する前夜の密会シーンに値するのではないかなと思っていたんだ。奇しくもレオンはマリーに愛を囁き、彼女もまたそれに応えていたしね。」

「・・・お兄様の仰ることも分からなくはないですが、俺とマリーはここ最近毎晩密会させられてましたし、今回も世界樹に行って穢れを祓うのが目的ではなくあくまで彼女のレベル上げ目的で、もう帰ろうかと」

「帰れないんだ。」

「え?帰れないって・・・お兄様、どういうことですか?」

 レオンの言葉を遮るように断言したルークの発言の意図が分からず、レオンは困惑した。


「扉がないんだよ!」

 真剣な表情で見つめる2人とは裏腹にフェルが横から気の抜けた声で発言した。

「扉って、神殿からここに来るあの扉のことか?」

「そうなんだ。レオンにゲームとやらのことを聞いてから気になって考えていたんだ。

 物語の設定だと言えば終いなのだが、現実ではマリーは複数の攻略対象者とともに世界樹に向かおうとしていた。普通に考えても聖女と騎士の2人だけで世界樹に向かうのは危険だ。彼女に特別な想いがなくとも、世界樹の穢れを祓うといった名誉ある行動を各国の王子たちが望まないわけはない。でもレオンの話では必ず聖女と騎士が2人で行って帰ってくるという。例え2人が今のレオン達のように誰にも言わずに向かったとしても気付いた者から後を追わないか?」

「・・・確かにそうですね。」


 レオンはゲームをやり込んでいる。そのためシナリオがあること、シナリオ通りに事が進んでいくことを前提に物事を考えてしまっていたが、ルークはレオンの話を信じつつも「ではなぜシナリオ通りに進むのか」という視点で考えていた。


「これは私の予想でしかなかったが、後を追わなかったのではなく、追えなかったんではないか、と思ったんだ。」

「つまり、入口がなくなると言うことですね。」

「うん。世界樹のあるこの空間に来るためには神殿からあの扉をくぐり抜けてくるしかない。あの扉がなければここには来られない。

 確証はなかったが、ジオルドは少し頑固なところがあるが根は優しい人だからね、フェルに頼んでピアスを渡し今夜神殿の扉を見張っててもらうように協力してもらったんだ。レオンの闇空間ダークベースだと私達の魔力は届かないようでやっとさっきジオルドと連絡がついたんだけど、やはり私の思った通りだった。」


 レオンはルークの話を聞くとそのまま考え込んでしまった。ルークの言った通り世界樹の穢れを祓に行く段階までシナリオが進んでいるとすると、後戻りはできないからだ。


(俺の影移動シャドウムーブメントでは影の中を移動するだけだから別空間にあるここから離脱することはできない。ゲームではHPが0になると神殿に戻されたが、それが現実でも起こるか分からない。主人公の転移スキルがあれば脱出もできたかもしれないが、今のマリーはそれを持っていない・・・)


「お兄様!どうしてそうなると思ったなら付いてきたんですか!このままでは・・・」

 狼狽え始めるレオンの手をルークは強く握った。

「レオン。レオンには言っていなかったんだが、国内の至る所にモンスターが溢れ始めている。私たちの住んでいたノーザスも襲われ、父上も限界のご様子だ。焦らせるようなことを言ってはいけないと思ったんだが、世界樹の穢れをこれ以上放置しておくわけにはいかないんだ。こんな話をしたらレオンは1人で行こうとしてしまうと思ったから、黙っていてごめんね。

 大丈夫だよ、レオンは十分強い。私もレベルが上がったからもう足手まといにはならないようにする。もしダメだとしても、私はレオンの側から離れたりしない。そう約束しただろ?」

「お兄様・・・」

「はいはいっ!フェルも一緒だよ!穢れなんてパパーっと祓って帰りましょ!」

「フェル・・・」


 レオンは両の手を暖かく包み込んでくれる2人の想いに頬を濡らし、決意を固めた。



「よし、じゃあ世界樹の穢れを祓って、みんなで帰りましょう!!世界、救いましょう!!!」

「「おーー!」」

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