第7話 ピンチです!
嫌な予感がする。そう分かっていながらも、レオンの身体は吸い寄せられるように静かに執事の部屋へと近づき、そっと息を殺して中の様子に耳を澄ました。
「・・・お前が余計なことをしたせいでジーク様のお耳にも入り、今ではルーク様よりも忌々強いあの餓鬼に気を取られておいでだ。ルージュ様は大層心を痛めていらっしゃるご様子。いいか!!ジーク様が身寄りのないお前を引き取ってくださったのはあの餓鬼の監視のためだ。それを、お前は恩を仇で返すようなことをした!奴隷商に売っ払ってやってもいいんだぞ!!!」
バンッと大きな音と怒鳴り声が部屋に響き渡り、レオンもつられてビクッと体を寄せた。
「も、申し訳ございません。奴隷にするのだけは・・・お許しください。レオン様にも魔法を使わないようお伝えいたしましたし、今後は魔法を教えることは致しませんっ!!」
女性が涙声ながらに執事に懇願している。いつもの明るい声とは違い、悲しそうな声ではあるが、この声の正体がすぐに誰か分かった。
自分のせいで懇意にしてくれているエマが怒られ、奴隷にするとまで言われている。レオンは助けに入るべきかどうか、グッと拳を握りしめた。
「・・・本来ならルーク様の成人の儀が終えたらと思っていたが、クラリウス家のためを思えば、分かるな?」
「えっこれは一体・・・。」
執事はエマに小さな小瓶を渡し、エマの背後に回り込み、エマの体に手を当てながら続けた。
「これをあの餓鬼に飲ませろ。食事か飲み物に混ぜるんだ。うまくやればお前にはメイドを辞めても一生暮らせるだけの金を渡してやろう。・・・失敗すれば、分かっているな。」
執事はそれが何かを口にはしなかったものの、何であろうかということは容易に想像がついた。
中の2人の様子がわからないレオンにさえもそれが何か推測することは簡単だった。
その時、青冷めているレオンの後頭部がズキズキッと傷み始め、レオンは頭を抱えながらも音を立てないように注意を払いながら部屋まで戻った。そしてそのままベッドに倒れ込んだ。
♢
「お前は俺を裏切らないか?」
見覚えのある月夜に輝く噴水の前で、男女が2人座っている。
「私は絶対に貴方を裏切ったりしない!」
「・・・なら、俺も、俺の全てをかけてお前を絶対守ってやるよ。」
月明かりに照らされながら黒髪の男が女の頬に触れながら優しく微笑む。
(・・・あ、これは『キミコイ』のレオンルートで世界樹に向かう前日の夜のスチルだ・・・)
「お前になら何でも話せる気がするから不思議だな。
俺は、ガキの頃にエマっていうメイドに殺されかけたことがある。母親が亡くなってからエマが母親代わりでもあったし、大切な人だと想っていたのに、彼女はそうじゃなかった。兄のルークの成人の儀の晩餐で毒を盛られたんだ。
・・・本当はさ、晩餐の前日の夜、エマと執事が俺を殺すって話してたのを偶然聞いちゃったんだけど、エマがそんなこと訳ないって思って、普通に食事したら案の定毒で死にそうになった。馬鹿だよな。
運良く助かったけど、兄貴を当主にするために俺は邪魔者なんだって気付いて、それ以来兄貴のことも信じられなくなって、部屋に引きこもってた。
魔力が多いってことから学校にも通わせてもらえるようになったけど、あんまり読み書きも得意じゃねぇからさ、お前が色々教えてくれて、最初は余計なお世話だって思ってたけど、本当はすげえ助かったんだ。ありがとな。誰も信じられないと思ってたけど、お前のことなら信じられる。」
2人の顔がそっと近づき、噴水に2人の重なったシルエットが映し出される・・・
♢
「あー!!」
レオンは声を上げながら飛び起きた。そして今見たことを忘れないよう、すぐに机に向かった。
(今のはレオンが過去の話をするシーンだ!レオンのことあんまり好きじゃなかったし、レベル上げで疲れてたからストーリー結構読み飛ばしちゃったんだよね。
でもこれで思い出した、エマって名前聞き覚えがあると思ったらレオンが人間不信に陥る原因を作ったメイドか。
兄様の成人の儀まであと8年もあるのに、僕がゲームと異なる動きをしたからゲーム補正なのかな・・・)
コンコンッ。
「レオン様、起きていらっしゃいますか?入りますよ?」
いつもなら嬉しいエマの入室だが、対処法が分かっていない中で会うことができなかった。
「ご、ごめんエマ!風邪を引いてしまったみたいだから、今日はご飯はいいや。ケホケホッ」
「・・・かしこまりました、それではキッチンから何か果物を貰ってきますね。」
「ありがとう!」
扉越しだったためエマの表情は分からなかったが、いつもよりトーンが低いように感じた。
(さて、毒殺か。ゲームの世界では運良く助かったみたいだけど、どうするかな・・・ゲームの中では状態異常で毒になった場合はポーションだったけど、今の僕は無一文で当然そんなもの持ってない。8年も早く毒殺されるなら、当然僕のHPも低いだろうから助かる可能性も低くなってくるよね・・・)
「ステータスが分かれば解決策が見えてくるかもしれないんだけどな〜。
もうーーー!!ステータス!ステータスーーー!!!」
レオンはどうにもならない苛立ちで机をバシバシと叩いた。
「あーー!<ステータスオープン>してよ!」
レオンが不意に発っした言葉で、目の前に一枚のボードが浮かび上がった。
読んでいただきありがとうございます!
少しでも面白い・続きが気になると思っていただけましたら
下にあるポイント評価欄・画面下の『☆☆☆☆☆』からポイントを入れていただけると幸いです。
皆様からの応援をいただけたら嬉しいです。
これからも執筆を続けられるようがんばりますので、
応援よろしくお願いいたします!