第65話 キャラになるって恥ずかしい!
レオンはルークに思い出せる限りの各攻略対象者毎のストーリー展開を説明した。そしてルークの指示に従い、主人公が好感度MAXの状態で世界樹の穢れを祓う旅に出る前に発生する、このゲームの山場とも言える各キャラクターとの密会のシーンを強制的に発生させたのだ。ゲームのシナリオ通りの流れになるように。
「レオン様・・・」
(げっ、キス待ちの顔してる・・・スチルもそうだったもんな、仕方ないか。)
レオンはマリーの顔にそっと手を当て、優しく唇を重ねた。
「私、レオン様には嫌われているとばかり思ってました。あの猫耳の子に中庭に来るよう言われた時も、何かお叱りを受けるのかと。」
「・・・厳しいことを言ってばかりで悪かったな。中々気持ちを素直に出すのが苦手なんだ。」
「いえ!レオン様は幼少期からお部屋にこもってらしたんですもの、無理もないですよ。私の前ではありのままのレオン様でいてください。」
「ありがとう。」
(いやその設定、何でお前が知ってんだって話になるだろ。この女馬鹿なんだな。)
「・・・誰にも言っていないんだが、俺の兄には複製スキルという他人の能力をコピーする能力がある。だからマリー、君が危ない目に遭ってまで世界樹に行く必要はないんだ。ただマリーも知っている通り、兄の魔力は少なくてな、世界樹の汚れを祓えるほどの光魔法を自力では覚えられないんだ。俺は君が光魔法を最大の5まで習得したら、兄に複製させ、俺が兄を連れて穢れを祓って戻って来ようと思う。」
「そんな!私もご一緒します!」
「ダメだ。世界樹までにはモンスターがウヨウヨいる。俺は、君を傷つけたくないんだ!」
「レオン様・・・。」
(何その設定!複製スキルなんてゲームになかった気がするんだけど、でも私もシナリオと全く同じ動きをしているわけじゃないし、何よりレオンも闇属性で兄が光属性だもんね。むしろ私が行かなくていいならラッキーじゃない!レオンルートはハッピーでもバッドエンドでも私は死ななくて済むし、このルートに沿っていくのがいいのかも。何よりこの勝負に勝てば、他の3人から領土を一部もらえる話になってたし、北の国は不遇の地と聞いてたから悩んでたけど、問題ないじゃない!私天才!)
「・・・レオン様とご一緒できないのはとても残念ですが、お気持ちを無碍にするわけにはいきませんものね。分かりました。でわ、私は光魔法のレベルを上げるよう努めればいいのですね?」
「ああ。騎士団の治療を任されているだろう?あれを魔力が切れるまで続けてくれれば自然と上がるはずだ。クリス達には俺から話すわけにはいかないから、マリーから説得できるか?」
「もちろんです。私もモンスターと言えど命を奪うのは本意ではなかったので、皆さんを癒す力を伸ばしたいと言えば分かってくださいますわ。」
「頼む。誰かに見つかってはいけないからな、そろそろ部屋に戻ろう。またマリーの光魔法のレベルが上がる頃、フェルを使いに出すよ。」
「え、レオン様、そんな事務的にしかお会いできないなんて、寂しいです!」
立ち去ろうとするレオンにマリーは後ろから抱きついた。
『レオン、ダメだろ。君は今マリーのことを愛してやまないはずなんだから!』
耳元ではピアス型のイヤホンからルークの声が聞こえてくる。偽物の鑑定水晶を作った際にルークは水晶とピアスも購入していた。ピアスからは対になっているピアスを装着している者同士が魔力を通せば話せるようにし、水晶にはレオンの闇影人形の魔力を定着させ、闇影人形の見聞きしているものをレオン以外の者も見聞きできるようにしたのだ。
「あーじゃあ、定期的に会おう!な!それでいいだろ?」
「・・・レオン様は本当に私のことを想ってくれているのですか?」
「想ってるよ!君のことが心配だからこそ、俺も無事に戻って来られるように訓練しないとって思ってるんだよ。」
「それなら心配ありませんわ!私レオン様のステータスがわかるんです。レオン様は他の方の何倍、何十倍も強いんですもの、絶対大丈夫ですよ!」
(あーそういうの言っちゃうのね・・・)
『レオン、ここでマリーに君の本心がバレたら意味がない。本気だという証明をしなければ!』
「でもさ、クリス達にバレるわけにはいかないだろ?少なくとも今は敵対しているわけだから。」
「それもそうですけど、マリー寂しい。」
(あーーー面倒だな。そういえば確か・・・)
レオンは抱きつくマリーの方に体を向け、顎をクイッと上にあげて再度口付けをした。
「俺の気持ちはこれで分かるだろ?何か用がある時はフェルに言ってくれればすぐに会いに行く。いいな?」
「ひゃ、ひゃい。」
「いい子だ。じゃあ、風邪引かないうちに部屋に戻れよ、いいな?」
レオンは目をハートマークにして呆けているマリーの頭にポンと手を置き、その場を少しでも早く去ろうと駆け足で去って行った。
(ヒーーーあいつSキャラ褒めてたから強引にいった方が良いと思ったけど、何だこれ!!恥ずかしいーーー!)




