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第57話 盟約を交わす

「・・・そろそろかな。」

 汗ばむ陽気が続く。季節は夏を迎えていた。

 

 マリーとユリウスが入学してから3ヶ月ほどが経過したある日、レオン達一行は校長室へと呼び出された。

 数回ほど見たことのある白い髭を生やした男がこの魔法学校の校長、エディオン=ザックバードである。


「君たちの耳にももう入っていることかもしれないが、世界樹に穢れが溢れ、モンスターたちが発生し続けている。マリーくん、君の光魔法でこの穢れを浄化し、世界を守ってほしい。」

「わ、私がですか?」

「うむ。古より世界樹に穢れが溜まりし頃、聖女が現れ、聖女が選びし騎士と共にこの穢れを祓い世界は再び平和になる。そう言われておる。どうか、マリーくん。君の力を貸してくれ。」

「・・・分かりました。私の力でみんなを守れるなら、私頑張ります!」

「マリー、君のためなら私も喜んで力を貸すよ!」

「俺も!」

「私もクリス様とマリー様をお守りいたします!」


(はいはい、何度も見たなこの光景。さて、ここからの選択でどのルートに入るか確定できるな。)



「・・・あれ?そう言えばレオンの兄君も光魔法の使い手ですよね?彼ではダメなのですか?」

「うむ。彼には世界樹を浄化するほどの力はない。初級魔法のヒールも入学してからやり続けているのじゃが、一日に10回ほどで魔力が枯渇してしまう。」

「あれ、ヒールってまだちゃんと魔法の練習してないマリーでも使えるって言ってたやつだろ?」

「ええ、ヒールは光の女神から加護をいただいた際に自然と頭の中に浮かんできたので、多分加護をいただいた方なら誰でも使える初級魔法かと。」

「なんだ、レオンがいつも褒めるからすげー人かと思ってたけど、そうでもないんだな。」

 ユリウスの発言を聞くや否や、レオンはその優れた身体能力ですぐさまユリウスの胸ぐらを掴み睨みつけた。


「おい、お兄様を侮辱したらお前でも許さないぞ。」

「ユリウス失礼なことを言うな。レオンも落ち着きたまえ。きっと君の兄君が光の女神の加護を受けられたのは偶然なんだよ。100年に一度世界樹の穢れを払うために1人の聖女が現れる。君だってこの言い伝えは知っているだろう?兄君の加護は間違いだったのさ。」

「・・・は?」

「光の女神はマリーのような純粋な清らかな少女とのみ契約するものさ。レオン、君だってその見た目通り闇属性じゃないか。光の女神と相対する存在の闇の女神の加護を兄弟で得るなんて、おかしいだろう?

 私は闇魔法の威力も素晴らしいものだと分かっているし、君の兄が、君が言うように優れている点もあるんだと言うことは信じよう。でも」

「分かった。もういい。黙れ。」

「なっ、レオン、クリス様に向かってなんて言葉遣いだ!」


「おい、黙れって言ったんだよ。」

 レオンが殺意を込めてロバートを睨みつけると、ロバートはその場から一歩も動くことができず、まともに呼吸することもできなくなった。

 レオンがクルッとロバートに背を向け校長の方を見ると、ロバートは額に大量の汗をかきながらその場にしゃがみ込んでしまった。


「エディオン校長。世界樹の穢れを払えばいいんですよね?では、俺と兄でやります。」

「いや、しかしルーク君の力ではそんなことは」

「兄ならできます。俺もサポートしますから。“聖女“でなければならないなんて言う決まりはありませんよね?光魔法が使えれば問題ないはずです。」

「確かにその通りじゃが・・・」

「なら俺たちに任せてください。兄には俺から話します。ああ、兄の部屋と俺の部屋も隣同士に変えてもらえますか?そのほうが何かと都合がいいので。授業も免除ですよね?準備ができ次第世界樹に向かいますので、いつでも入れるよう話を通しておいてください。

 それとこれから世界樹の穢れを祓うために俺は校内でも魔法を使いますが、悪用はしませんので気にしないでください。では、失礼しますね。」

 レオンは表情を変える事なく淡々と要望を伝え、にこやかに挨拶をしてドアに手をかけた。



 そんなレオンを呼び止めたのは、他でもない、マリーだった。

「ま、待って!レオン様も、そう、レオン様のお兄様も一緒に協力しましょう?別に騎士が1人でなければならないなんてどこにも書いてないですよね?」

「あ、ああ確かにのう。騎士を選ぶとしか」

「ね?じゃあ私と一緒にみんなでこの世界のために力を合わせましょう!」

「ああ、マリー、君はなんて素晴らしいことに気が付くんだ。私とロバートの力があれば問題ないだろうが、人数は多いに越したことはないね。」

「仕方ない、俺もマリーちゃんのためなら協力するよ。ほら、レオン、それなら文句ないだろ?」


「・・・仲良しごっこは勝手にやってくれ。正直お前達程度が何人集まろうが邪魔でしかないんだよ。」

「なっ、おい、聞いてなかったのか?お前の兄はヒールすらまともに使えないんだ。マリーの力がなければ世界樹の穢れを祓うなんてとてもできないだろ!」

「そうだよ、レオン。兄を侮辱され怒る気持ちも分かるが、冷静になるんだ、君らしくないじゃないか。」

「俺らしいってなんだよ?なあクリス、お前がいつもいつも平等って言いながら俺のことを見下しているその態度が気に入らないんだよ!そんなに言うならいいぜ、お前ら俺と勝負しようじゃないか。」

「勝負だと?」

「ああ、俺とお兄様が先に世界樹の穢れを祓うことができたら、お前らの領土の一部をアレース公国へ献上しろ。その代わりお前らの方が先に祓うことができたなら、アレース公国は全てお前らの好きにしていい。」

「・・・本気なのか?」

「命懸けで世界を守るんだからこれくらいの褒美がないとな。マリーにとっては何の損もないだろ。どうだ?」



 レオンの提案に戸惑うクリスとマリーだったが、ユリウスだけは満更でもない様子で手を挙げた。

「俺は賛成。どうせ何もしなくてももうすぐ俺の国じゃなくなっちゃうかもだし、ここで一旗あげれれば俺は次の王になれるからね。この勝負勝たせてもらうよ?」

「・・・分かった。レオン、君が真剣ならばその話乗ろうじゃないか。」

「決まりだな。校長、盟約の魔法、使えますか?」

「・・・本気なんじゃな。」


 盟約の魔法とは隷属の首輪同様に、強い効力を持つ魔法である。それなりの魔力のある魔法使いであれば誰もが使うことができるが、互いに不利益な盟約とならないよう、盟約の魔法を行えるのは盟約を交わす者以外の者が発動させる決まりがある。


「我、レオン=クラリウスはここに誓う。」

「我、クリストファー=ジョン=アルバイルはここに誓う。」

「我、ユリウス=ライトリヒはここに誓う。」

 エディオン校長が発動させた魔法に従い、3人の名を刻み血を垂らす。これで盟約は正式に交わされ、盟約を破ることは死を意味することとなる。



「・・・レオン様、本当に私たちと協力してくださらないの?」

「マリー、もうそんな奴放っておこうぜ。」

「そうだよ、私たちの力があれば問題ないさ!明日から共に特訓しよう!」

「でもレベルが・・・」



 レオンは盟約が完了すると、クリス達を見ることなく黙って部屋から出て行った。



(マリー・・・まさかな。)



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