第56話 初めての街散策
それからと言うもの、事あるごとにクリスがマリーに声をかけるため、元々隣同士で授業を受けていたレオンとクリスの間に割って入るようにマリーが座ることが当たり前になっていった。
(俺としてはもう少し距離を保ちたがったが、まあクリスルートに入るならハッピーエンドだけは阻止しないとだからな・・・)
「レオン、こないだのノート見せてくれよ〜。」
「・・・俺はノートはほとんど取ってない。クリスかマリーに頼んでくれ。」
「マリーちゃん、貸して〜。」
「ユリー、また授業中寝ていたの?ふふっ、どうぞ。」
「ユリウス、授業を真面目に受けないのは良くないぞ!」
「はいはい。マリーちゃんありがとね。今度街にでも行って一緒にお茶しようね。」
レオンの横には何故かユリウスも座るようになり、各国の王子と聖女、そして騎士のロバートが行動を共にすることが増え、次第に他のクラスメイトは遠巻きに何か言うだけで声をかけてくることは減っていった。
(これでジオルド以外の攻略対象者は全員主人公の周りに固まっていることになるな。このルートはなんだ?仲が良さそうなのはクリスだが、ユリウスルートとも言い難い。いや、まだ序盤だから、判断はできないか・・・)
「そうだわ!今度のお休みの日にみんなで街に出かけてみませんか?私まだ街に行ったことないです!甘いものとか食べてみたいな!」
「えー、マリーちゃん俺が今度連れて行ってあげるよ?2人で行かない?」
「ユリウス、マリーを困らせるな!いい提案じゃないか。私も街には数回買い物に行ったきりでちゃんと見てまわったことはなかったから、是非ご一緒させてくれ!」
「わー嬉しい!楽しみですっ!」
マリーを中心に楽しむメンバーの中、唯一話の内容に反した顔をしていたのはレオンだけだった。ロバートもいつの間にか主人公の魅力にやられたようで、もうクリス同様マリーの天真爛漫な様子をいつも頬を赤らめながら見ていた。
レオンも半ば強制的にマリーの提案に乗せられた形で初めて街を散策することとなった。ルークに会えるのではないかと休日は一日中上級生の建物へ忍び込んだり、ゲームでルークが働いていた食堂や売店に張り込みをして過ごしていたため一年経った今でもいまだに街に行ったことはなかった。
「わー見て見て!お花屋さん、綺麗〜!あっちのお店は何かな?」
「こらこらマリー、あまりはしゃぎすぎると転んでしまうよ!」
「マリーちゃん、ここ雑貨屋さんだよ、入ってみる?」
いつものようにマリーを中心にクリス、ユリウス、ロバートがはしゃいでいるのをレオンが一歩手前でついてく。ここまでは学校内と同じだった。
「・・・なんであんたがいるんですか?ジオルド様。」
いつもと違うのはそう、レオンの隣にジオルドが立っていることだ。
「マリー嬢に誘われたから来たまでだ。私がいることが何か不服かな?」
「ルークお兄様の側を離れていいんですか?」
「ルークは休日は部屋で休むことになっている。・・・お前も知っていると思うが、ルークの魔力量と光属性の相性が悪い。ルークは回復するのも人より時間がかかるようだからな、休日は部屋にいるように指示されている。」
「なっ!それじゃお兄様に自由がないじゃないですか!」
「・・・帝国からの命令だ。それにマリー嬢がこれから光魔法を習得していけばルークの負担は軽くなるだろう。マリー嬢の魔力量は既にAランクということだからな、問題ないはずだ。」
レオンはこの日はじめてルークを光の女神と契約させたことが失敗だったと知った。光魔法の使い手ということであればどの国からも喉から手が出るほどに欲しい人材。そして崇拝する対象となる。母国では力を重視し過ぎているため父親からは良い評価を得られなかったが、帝国に行けばルークは主人公と同等の評価を受けられるものだと思っていた。しかし、ルークはレオンがどんなに手を尽くしてレベルアップをしても大量の魔力を消費する光魔法を扱うほどの魔力量には到達できず、ステータスボードにはない、MPなどを回復する自然治癒能力も圧倒的に低かったのだ。
一方で光魔法、回復魔法が使えるという人間は滅多にいないためルークの存在が貴重だということも事実。ルークは帝国に逆らうこともできず、日々魔力が枯渇して倒れるまで回復魔法を酷使させられていた。
「・・・お前が兄のために何かしたい気持ちがあるならば、同じクラスメイトとして一日でも早くマリーの力を目覚めさせるようにサポートするんだな。」
ジオルドは俯くレオンに呟き、マリー達の元へと近付いて行った。
その日一日は恋愛ゲームさながらに、主人公を中心に各国の王子たちがプレゼントを贈ったり、転びそうになるマリーを抱き止めたり、とドキドキするようなシーンを過ごして何事もなく終わった。
ゲームの世界で何度も見た街の散策シーンはレオンにとって気持ちが昂るものばかりだったが、それでもルークのことやわざとらしくはしゃぎ回るマリーのせいで終始気持ちは暗かった。
(一歩引いて見てるからよく分かるけど、マリーが転びそうになるのって必ず誰かが受け止められる距離でだけだな。あれは多分計算だろうな。よくやるこって。
ゲームの時も主人公みたいな誰からもチヤホヤされるのが当たり前のキャラクターって嫌いだったけど、現実で見るとより一層可愛いって分かっててやってるんだなって言うのが分かって嫌いだわ。)
「レン!お帰りなさい!」
「・・・ただいまフェル、いい子にしてたか?」
「うん!お土産は?」
「はいはい、これ街一番のケーキらしいぞ。俺は食べて来たから食べていいよ。」
「ありがとうー!!!」
フェルはレオンからケーキを受け取るとすぐに尻尾をこれでもかというくらい振りながら、大きな口で嬉しそうにケーキを頬張った。
(・・・やっぱり俺はフェルみたいな純粋な子のが好きだな。)
「今度は2人で街に行こうな。」
「うん!!」




