第49話 いざ出発!
「こ、これは素晴らしい!!INTはCランク、それ以外は全てのランクがSランクです!!属性は・・・や、闇属性です。」
「や、闇属性ですって!?」
「実在したのか!やはりあの恐ろしい見た目。魔族との子供なのではないか・・・。」
「INTというのは鑑定士たちの発表で知力だと言われていた値だよな?それが低いということは頭が悪いということか?」
「確かに、良い噂は聞かないな。まともに教育も受けていないようだぞ。儀式中の態度も悪かったしな。」
「力は強くても頭は伴わないか。ハハハッ!」
レオンが15歳の成人の儀を迎えると、ルークの時と同様にその年の話題はクラリウス家の話で持ちきりになった。違うのはルークが褒め称えられた一方で、レオンは誹謗中傷の的になったと言うことだ。
(ま、予想通りの反応だな。正しくはステータスの中でもばらつきがあるんだけどね。500超えてればSランクって感じかな。
それにINTは言葉通りだと知力だけど、この世界だと魔法を覚える能力になるから、俺には不要だから複製してないんだよな。バカ呼ばわりはムカつくけどルークお兄様のためを思えば結果オーライか。)
もちろんINTが知力だ、と言った各ステータスの値に関して昨年鑑定士たちが発表できたのはレオンのおかげだった。
レオンはルークが魔法学校に旅立った後、貴族としてのあるべき姿を学べば学ぶほどに、過去の行いに対する不安が付き纏った。これからクラリウス家の者としてルークの側にいるためには、過去の自分の罪が明るみに出るわけにはいかなかった。そのためレオンは影移動を使ってマティスたちの様子を盗み聞きし、あの焼死体がどのように処理されたのか確認をした。
あの時は無我夢中だったため地中に埋めることもせず、焼けた小屋とともにそのまま放置してしまった。そしてその事件と同時に有名な鑑定士レンが突如として姿を消した。誰であろうと関連づけて考えることは当然だと思っていたのだが、レオンの予想は外れ、事件については酔っ払った男達の火の処理が原因として処理をされていた。
(刺し傷とかもあったと思うけど、全員消し炭状態になってたのかな?この世界なら冒険者が死ぬのは日常茶飯事だし、犯人の追及とかはしないのかもな。まぁ、とりあえず俺との関連は触れられていなそうだな。良かった。)
レオンの考え通り冒険者は命をかけて仕事をする職業。ギルドからのクエスト報酬以外では報酬も得られず、安定した職業ではない。そのためまともに職をつくことができない者達や金に困っている者など、なんらかの事情を抱えている者がなる職業だ。彼らが死んでいたところで大した調査も行われない。
放置していても問題はなかったかもしれないが、この件に関してはジークが手を回し、絶対にレオンに調査が行かないようにしていたのだった。鑑定士レンの存在についても、この街以外への情報漏洩が行われないよう、徹底的に圧をかけていた。
そんなことはレオンは知る由もなかったが、常に不安に駆られていた事件が無事にただの事故として処理が終わっていることに安堵し、その後ヒルダとマティスにこっそりと顔を見せに行った。
ヒルダは泣いて抱き付き、マティスは「無事だと思ってたよ」と言いながらも安堵した表情を見せた。
そしてマティスを通して各ステータスがどういった意味を示すのか、帝国の鑑定士たちへ進言するよう依頼をした。これは今後ルークがこの国を支えるようになった際、今の特化型の冒険者や騎士たちのステータスでは限界が来ると思ったため、そして帝国内において所謂脳筋国と思われているアレース公国の力を知らしめるためでもあった。
その後鑑定士たちはマティスの内容を踏まえた調査・実験を行い、ようやく公式に全てのステータスの意味が帝国内に発表されたのだった。
「レオン、話があるから来なさい。」
「・・・かしこまりました。フェルは部屋に戻っていろ。」
成人の儀を終え屋敷に戻るとすぐにジークから声がかかった。
「なんでしょうか、父上。」
「・・・お前がどのような態度を取ろうが、私は力のあるものこそこの公国を治める者として相応しいと考えている。意味は分かるな。」
「・・・俺はそうは思いません。それにこの力を公国のために使おうという気は微塵もありません。我が国にはルーク兄上のような、公平に物事を捉え、慈愛の心を持ちながらも冷静に判断を下せる。そういった方が相応しいと考えています。
それに俺のような容姿も悪く、出来の悪い者が上に立とうだなんて、国内での反発も多いでしょう。ましてや闇属性。追放されてもおかしくない立場だと分かってますよ。」
「闇属性は未知の属性だが、文献によれば強大な力を有するとある。お前のその力があれば反発する者もいなくなるであろう。公国の力を帝国内に知らしめるためにその力を震え。明日から私と共に各地を回れ。」
ジークはルークが旅立った後、何度か屋敷に来てはレオンに態度を改めるよう指摘をしていた。レオンに次期国王になれ、と言っているのだ。もちろん国王になりたくないレオンはそれに逆らい続け、より一層屋敷内での態度や、度々街でもトラブルを起こすようになった。今日の成人の儀においても、一国の王子として相応しい正装をせず、何度も欠伸をしたりと王子でなければ罰せられるような態度をとっていた。
「何度言われようが、俺はこの国のために働く気はないので。父上、闇魔法には人の意識を操るものもあります。意味は分かりますよね。」
レオンがジッとジークを見つめると、この国一の力を誇り、幾重の戦いを経験してきたジークですらも背筋が凍りついた。
「来年から俺も帝国の魔法学校に通うので。手続きも済ませておきますから。では、失礼します。」
「・・・お前がルークにそこまで従うのは何故だ。」
「家族だからですよ、本当の意味でね。」
ジークはその後屋敷には来なくなり、レオンは宣言通り翌年ルークの待つ魔法学校へ入学した。従者は1人だけ連れて行けるということで、従者としてのスキルはまだまだではあるが、フェルが泣き付くので一緒に連れて行くことになった。もちろん始めからフェル以外の従者を連れて行くつもりはなかった。
屋敷の仕事は主にシンに任せ、見送るシンに手を振りながら2人は初めての馬車に乗って、帝国へと向かった。
「レン!帝国ってどんな感じかな!!」
「俺も初めて行くからな。でもきっとここよりももっと色んな人がいて、美味しいものもたくさんあるぞ!ただ帝国に着いたらフェルは俺の従者だからな。言葉遣い気をつけるんだぞ?」
「分かってるよ〜!楽しみだねっ!」
(本当は影移動ですぐに行けるけど、でも久しぶりにフェルと一緒にのんびりするのも悪くないな。)
馬車から見る景色を楽しみながら、馬車は帝国への入り口へと2人を乗せて進んで行った。




