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第5話 ルークライト

 翌朝エマに起こされ、顔を洗い、服を着替え、食卓へ向かう。

 唯一レオンに許されている部屋から出られ、ルークに会える時間であった。


「ルークお兄様、おはようございます」

「おはよう、レオン」


 貴族の食卓らしく、無駄に大きなテーブルで、庶子の子であるレオンはルージュの意図で一番端の席と決められている。


「はぁ、馬から落ちても元気そうね。野蛮な血のおかげかしらね。」

 朝から不快な香りを身に纏い、怪訝そうな顔でレオンを見つめる女。ルークの母のルージュだ。


「・・・ルージュお母様、おはようございます。おかげさまで歩けるまでに回復いたしました。」

 レオンはにっこりと満面の笑みでルージュに言い返した。


 これまでのレオンであればルージュに怯え、下を向いて黙り込むことしかできなかった。光の時もそうだった。言いたいことを飲み込み、ただグッと我慢してその場をやり過ごしていた。しかしそれは何の解決にもならないことを光は身を持って知っている。今世では前世の二の舞にはならないことを、堅く決意したのだ。


「ふんっ」

 ルージュはそのまま席につき、無言の朝食が始まった。



「っぷはぁ〜!あー怖かった。生まれて初めて言い返したからすっごいドキドキしたけど、何だか気分がスッキリした!」

 部屋に戻っても心臓がドキドキしていた。


「レオン様、入りますよ。」

 コンコンとノックの音と共にエマが入ってきた。レオンが朝食の後に部屋に来て欲しいとお願いしたのだ。


「エマ、朝の時間に来てくれてありがとう。あのね、エマは魔法は使える?」

「え、魔法ですか?」


 予想していなかった質問にエマの目が丸く見開いた。

「生活魔法と、少しですけど風魔法が使えますよ。」

「本当!エマにお願いがあるの!僕に魔法を教えて!」


 レオンはエマに駆け寄って食い気味でエマに懇願した。

「え、ですが魔法は15歳になってから使えるようになるんですよ?」

「でも、生活魔法はもっと子供の子も使える子もいるってお兄様に聞いたよ!生活魔法だけでもいいから教えてよ!お願い!」


 エマはうーんと言いながらも、必死でしがみつくレオンを見て最後には

「仕方ないですね、奥様には内緒ですよ」

 と魔法を教えてくれる約束をした。



 そしてその日から、エマが本の読み聞かせをしてくれていた仕事の合間の時間が魔法を教わる時間となった。



「生活魔法は、辺りを明るくする<ライト>、コップ一杯分程度の水が出る<ウォーター>、薪に火をつける<ファイア>、この3つが主ですかね。あとは私は風属性でしたので、雑草を刈り取るくらいしか使えませんが、<ウィンドカッター>が使えます。

 魔法は目に見えない精霊様がお力を貸してくださっています。生活魔法は各人が持つ適正によっても威力が違うようですが、適正にかかわらず、生活が豊かに暮らせるよう絶対神オーディルヘルム様が与えてくださったものだと言われています。」


「エマは詳しいんだね〜!」

 淡々と説明してくれるエマに素直にレオンが驚嘆していると、エマはばつが悪そうな顔をした。


「エマ?どうかしたの?」

「あっいえ、では早速ライトからやってみましょうか!

 杖などの補助具があるとやりやすいのですが、このように手で丸を作って、この中が明るくなっていくイメージでやってみてください!あったかくなってきたら<ライト>と詠唱してくださいね!」


 レオンはエマに言われた通り、手で丸を作り、そこに出来た暗闇が明るくなっていくイメージをした。少しずつ手があったかくなるのを感じたが、何度やっても光ったと思いきやすぐに消えてしまった。


「レオン様、初めからうまくいくことは少ないんですよ!少しずつやっていきましょう!続きはまた明日にしましょうね。」


 ゲームの中では最初から攻撃力が高く、高難度の魔法が使えたレオンだったので、すぐにできると思っていた分、出来ないことが不思議で堪らなかった。レオンは部屋に戻ってからも<ライト>を繰り返してみたが、灯りを維持することができなかった。



「何でだろう?ゲームの中とはやっぱり違うのかなぁ。グズな光の魂が混ざったからグズになったとか・・・?笑えない・・・。んーレオンが真面目に努力して魔法を覚えてたとも思えないしなぁ。」


 レオンはベッドに横たわりながら魔法に必要と言われたイメージについて考えた。


(ライト・・・光り。そういえば馬から落ちて目を覚ました時に見たお兄様は、天井の光が重なって、本当に天使のように輝いていたなぁ・・・お兄様のキラキラした光り・・・)


 レオンは身体中がポカポカと熱くなるのを感じ、不意に呪文を唱えた。

「・・・<ライト>」


 レオンの身体中から光が溢れ出した。目を開けていられないくらいの輝きは、部屋からも漏れ出し、庭にいたエマと共にルークが慌てて部屋にやってきた。2人は眩しさに耐えられず腕を顔を覆いながら、光り輝くレオンを見た。

「レオン!この光は、一体・・・」

「ルークお兄様!エマ!僕、<ライト>が使えるようになりました!」

「これが<ライト>?!レオン様、一旦光を止めてください!!光が消えるイメージです!!!」


 エマに言われ、レオンが暗闇をイメージすると光はスゥッと消えた。


「この光はルークお兄様のキラキラをイメージしたら出来たので、<ルークライト>という魔法にしようと思います!!!お兄様いいですか?」



 レオンは初めて出来た魔法が嬉しくてこの日は終始はしゃいでいた。

(イメージ!お兄様をイメージして描けば、魔法が使えるんだ!さすがお兄様!!!)



 ただの生活魔法のライトが窓から溢れるくらいの輝きを放ち、その後も疲労を見せない5歳児に、大人たちの目の色が変わったことに気付きもしなかった。


読んでいただきありがとうございます!

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皆様からの応援をいただけたら嬉しいです。

これからも執筆を続けられるようがんばりますので、

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