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第46話 レベル上げ作戦開始!

 その日は移動で疲れていたこともあり、フェルの紹介もしないままルークの部屋で眠ると、翌朝はルークの声で起こされるというレオンにとってこれ以上の幸せがないほどの朝を迎えた。


「・・・おはようございます、ルークお兄様。」

「ふふっ、よく眠っていたね。さ、朝食にしようか。」

 直視できないほど輝いて見えるルークに高鳴る鼓動も抑えながら、レオンはルークと共に食卓へ向かった。


「あれ?」

 ルークは当主代理として座っていた母ルージュの席にスッと座り、レオンにその前に座るよう促した。


「驚いたかい?今はね、僕が当主代理なんだよ。」

「え?あの、お母様は?」

「・・・レオンが家を出て行ってから色々あってね。彼女達の行いが明るみに出たことでお父様によって処刑されたよ。」

 母親のことを彼女と呼び、処刑されたという事実を、朝食のクレープを切りながら何事もなく話すルークの姿に、レオンはルークが変わったことを実感した。もちろんレオンも変わった。家を出る前は考えられなかったほど生死を彷徨う経験をし、目の前でたくさんの人間が死んできたのだ、変わらないはずがなかった。

「そうですか。」

 レオンは驚く様子もなく、久しぶりのまともな朝食を楽しんだ。


「あの、フェルも一緒に食事をしてもいいですか?」

「ああ!昨日一緒にいた子だね。もちろんだよ。」

「ありがとうございます。フェル、出ておいで。」

 フェルは昨日泣きじゃくるレオンのそばでじっと立っていたのだが、そのままレオンが寝てしまいそうだったため闇空間ダークベースが閉じる前に戻っていた。レオン自体はこの空間内を覗いたことしかなかったが、フェルはこの暗闇の中が落ち着くということで、好んでこの場所に入ることも少なくなかった。


「・・・おはよう。」

「フェルさんだったね?私はルーク=クラリウス。レオンの兄だよ。昨日は碌に挨拶もできずすまなかったね。」

「フェル。よろしく。レンはレオンと呼んだ方がいいの?」

「あ、お兄様、俺は外でレンと名乗っていたので、フェルもレンと呼んでいたのですが、そのままでも問題ないでしょうか?」

「ああ。好きに呼ぶといいさ。ただお父様の前や周囲の目がある時はレオン=クラリウスなのか、冒険者のレンなのかを使い分けると良いんじゃないかな?」

「分かりました。

 ・・・あの、そう言えばエマは元気にしていますか?」

 レオンの問いにルークの手がピタリと止まった。


「・・・実はね、エマはもうこの屋敷にはいないんだ。」

「え?」

「しばらくは私の側仕えとして働いてもらっていたんだが、屋敷にいてもらうより安全かと思って退職金を渡して出て行ってもらったんだよ。今頃はきっと別の屋敷で働いているか、好きなことをしていると思うよ。」

「そうだったんですか。会えないのは少し残念ですが、でも確かに屋敷にいるよりはその方が良いですね!」


 ルークはレオンに真実を伝えなかった。これはエマが死んですぐに考えていたことだった。

(すまないね、レオン。愚かな兄を許しておくれ。)



「そうだ、レオンに会わせたい人がいるんだよ!2人とも、入ってきて!」


「・・・レン、久しぶりだな!いや、レオン様って呼んだ方がいいか?」

「2人とも!元気そうじゃないか!」

「レンがルーク様を紹介してくれたおかげよ!私の毛並み、随分良くなったでしょう?」

 レオンがルークを尋ねるように伝えた2人の獣人だった。村での様子とは打って変わって、溌剌とし血色の良い顔付き、装飾の付いた服を着こなす2人の姿にレオンは心からルークの元へ送って良かったと感じた。


「お兄様、俺のワガママを聞き入れてくださり、ありがとうございます。」

「何を言うんだい。むしろレオンのおかげで私はこんなにも素晴らしい騎士に巡り会うことができた。私の方こそお礼を言いたいくらいだよ。」


 ルークはレオンが考えていた通り、獣人だからと2人を見捨てたりはしなかった。その事実がたまらなく嬉しかった。


「ふふっ、すっかり大人になったかと思ったけど、レオンの泣き虫癖は変わってないね。

 私はね、レオンのように屋敷を出ることは叶わなかったが、できる限りの情報を2人を通して知ったつもりだ。まだまだ知らないこともたくさんあるだろうが、力のない私でもできることをやっていきたいと思っている。レオン、強くなった君の力を、まだ私のために使ってくれるかい?」

「もちろんです!俺の気持ちはあの日から何も変わっていません!

 私、レオン=クラリウスは自分の力の全てをルーク=クラリウス様のために捧げることを誓います。」

 レオンはルークの手を握り、膝をついて誓った。


「ありがとう。そのためにはまず成人の儀までに私の力を上げる必要がある。レオン、そのことも覚えているかい?」

「もちろんです!そのための力がついたから俺は戻ってきたんです!お兄様、俺にお任せください!!」

「ああ、私の最強の剣士だからね。レオンの言うことならば私はなんだってやるさ!頼りにしているよ!」



 そうしてその日からルークのレベル上げ作戦が実行されることとなった。



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