表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/102

第40話 特訓開始

 翌朝目を覚ますと、離れていたはずのフェルがレンにくっつくように暖をとっていた。レンもフェルのふわふわのしっぽが体に被さり、冬の寒さの中でも心地よく眠ることができた。


「・・・おはよう。」

「おはよう、フェル。とりあえず朝食にしようか。」


 レンの作り出したウォーターを使って顔を洗い、2人はホーンラビットを食べながら今後のことを決めた。

「闇魔法が使えるようになったけど、ヘレナ様が言っていた闇を移動する魔法と言うのがまだピンとこないんだ。恐らくだけど闇魔法のレベルが低くて使えないんじゃないかと思う。複製で取得した火魔法と土魔法ももっと色々できるようになりたい。

 俺はしばらく闇魔法のレベル上げをしたいんだけど、どうかな?」

「・・・良いと思う。でも火魔法と土魔法は諦めるべき。」

「どうしてだ?今これはレベル2になってるから、最大のレベル5まで上げたいんだが。」

「それは無理。複製だから。」


 フェルの説明は曖昧で、レンが理解できずにいると、フェルは自分のステータスを確認しろと催促した。レンが再度フェルのステータスを鑑定し、複製の記載を確認すると、

【複製スキル レベルー:自身が把握した対象の能力を複製し、自身の能力として扱うことが可能。但し複製以上の力能力は扱えない。生涯に一度だけ複製スキルを複製することが可能。】

 と書かれていた。


「フェルが俺にこの能力をくれたのは・・・」

「複製スキルを複製した。ヘレナ様にスキルの譲渡の仕方を教わっていた。」

「そうなのか・・・ありがとな、フェル。」

 レンがフェルの頭を撫でると、フェルの表情に変化はないものの、しっぽがパタパタと揺れていた。


(なるほど、銀狼フェンリルと言っても尻尾は正直なんだな。)



「複製はただのコピーに過ぎない。レンはあいつらから火と土をコピーした。それはあいつらの力のコピー。あいつら以上の魔法は使えない。」

「・・・そう言うことか。ありがとうフェル、理解したよ。」


 ゲームの記憶の中でやっていたような火魔法をイメージしていたが、それは発動しなかった。MPが足りない、魔法のレベルが足りないからだと思っていたがそうでは無かった。男たちからコピーした火魔法と土魔法はいずれもレベル2となっているが、レンが努力しようとしまいと、これらのレベルが上がることはないと言うことだ。


「よし、じゃあ尚更俺の闇魔法のレベルを上げておかないとな!移動のなんとなくのイメージはついてはいるんだけど発動する気がしないから、当分の目的は闇魔法のレベル上げにしたい。

 今闇魔法で俺が扱えるのはこの<闇弾ダークボール>と<闇矢ダークアロー>だけのようだ。」


 レンが頭の中に浮かぶ呪文を唱えると、黒い玉と黒い矢が出現した。

「これをとにかく使いこなし、闇魔法のレベルを上げていきたいと思う。フェルもそれでいいか?」

「問題ない。私の目的はレンといること。」

「・・・OK、じゃあ危ないかもしれないから、離れててね。」


 レンはそこからMPが切れ動けなくなるまで、ひたすら終わりの見えない未開の地に闇魔法を放出し続けた。レンの特訓の間、フェルは何も言わず、お腹が空くとホーンラビットを狩り食事の支度を行いひたすら見守り続けた。


 ヘレナのいた洞窟の入り口を拠点とし、土魔法で窪みを作ると雨風も防げる、それなりに快適な住処ができた。寒い夜は火で暖まりながら体を寄せ合い、レンはフェルのもふもふの毛を布団代わりにして眠った。


 こうしてレンの闇魔法のレベルが2になる頃、次第にあちらこちらに花が咲き始め、季節は春を迎えるようとしていることを2人に告げた。



「まだレベル2か・・・。」

 数ヶ月毎日必死に魔法を続けているレンであったが、やっとレベルが上がっても、望んでいる転移魔法に近しいものは覚えることができずにいた。


「レン。モンスターを狩らないの?」

 ここ数ヶ月、レンはモンスターを狩っていない。時折襲ってきたホーンラビットを狩ることはあるものの、自主的にモンスターを狩ることはせず、ただひたすら誰に当てるでもない魔法を放出し続けていたのだ。


「モンスターを狩った方が、早く強くなれる。これ常識。」

 フェルの言っていることはレンの望む魔法のレベル上げとは違い、ステータスのレベルアップ方法だ。生活魔法の時同様、ひたすらに扱い続けることでコントロールも上がり、レベルも上がる。レンはそう思っていた。しかし、それは本当だろうか?


「・・・やってみる価値はあるか。」

 できることならば可能な限り何も殺したくはない。そう思い、何かを殺すことなく魔法を使い続けてきたレンだったが、変わりゆく季節に焦りを感じないことはなかった。


 そしてその日からレンはホーンラビットを自主的に狩ることにした。もちろんレンがこれまで行ってきた特訓も無駄ではなく、すでに闇弾も闇矢も想いのままにコントロールすることができるようになっていたため、目に見えるところにいなくとも、鑑定で位置を特定して狩ることができた。


「レン、大量。」

 レンが狩ったものをフェルの脅威的な身体の能力で取りに行き、捌いて食べる。食べきれない分は燃やして土に埋める。埋めた後は両手を合わせて瞑想する。これが日課となっていった。


 いつからか数えることも止めるほどにホーンラビットを倒すと、レンのレベルはレベル15となり、MPもよほどのことがない限り枯渇することは無くなった。そして苦戦していた闇魔法のレベルも3となった。


「確かにモンスターを倒した方が早くレベルが上がるな。頑張ろう!」



 しかしレンのやる気とは裏腹に、その後は灼熱の時期が過ぎ去り、過ごしやすい時期になってきても、闇魔法のレベルが上がらなかった。レンは次第に露骨に焦りを露にし始め、口数も減っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ