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第27話 採取マスター

 こうしてギルドの二階にオープンした鑑定士レンの店だったが、やはり金貨1枚で鑑定ができるという点が不審なのか、そもそも鑑定にさほど興味がないのか、レンの部屋には時折ヒルダが食事に誘いに来るくらいだった。


「これは、マティスさんの見込み違いかな。まぁ宿代わりになったし、とりあえず今日も採取クエストして来ようかな。」


 レンはクエストボードから採取クエストをあるだけ受注し、それら全てを通常の何倍もの量を納品した。



 1週間も経つと、レンのギルドランクはDランクに上がり、ギルドの職員たちはレンが鑑定士ということは知らなかったが、ギルド長が気にかける特別な男の子として、採取マスターとあだ名を付けられるほど顔の知られた冒険者となった。


 採取クエストだけでも随分とお金を稼ぐことはできたが、テントと食料などの物資を買ってこの街を出る分にはまだ至らなかった。しかしレンが一度に大量に納品することで採取クエストも随分と依頼が減ってしまい、思うように稼ぐことができなくなってきていた。


「採取クエストないー?」

「お、採取マスター!うーん、おかげさんでギルドの物品は潤ってるからなー。お前モンスターは狩らないのか?」

「うーん、ないならいいや。今日は部屋に戻るから依頼が来たら俺に回してー。」


 レンが金策を思い悩んでいると、ドアの叩く音とほぼ同時にマティスが入ってきた。

(マティスさん、それじゃノックの意味ないじゃん)


 レンが苦笑いしながら迎えると、マティスは

「レン、鑑定士の依頼を頼みたいんだがいいか?」

 と言ってきた。初めての鑑定依頼だ。


「え、もちろんですけど、マティスさんをですか?」

「いや、俺じゃない。連れてくるから支度ができたら声をかけてくれ。俺はドアの前で待ってる。」


(おー!初めての鑑定士の仕事!そのために少ない金で買ったんだから、活躍してくれて良かったー!)

レンはいそいそと用意しておいたローブを纏い、目元が分からないようマスクを付けると怪しい黒づくめの鑑定士の出来上がりだ。


(うん、まぁ安かったから黒のローブとマスクにしたけど、それっぽくなったな!)


 そしてギルドから貸し出してもらった衝立を用意し、鑑定士レンの店の支度が整った。

 レンがマティスの元に行くと、マティスは全身黒のレンを見てギョッとした様子だったが、特に触れることはしなかった。


「依頼人を連れて来るから中で待ってろ。」

 とマティスに言われるがまま、レンは衝立の奥の椅子に腰掛けて依頼人を待った。


 コンコンッ。

「どうぞ。」

「・・・失礼します。」


 ゾロゾロと部屋に人が入ってきた。依頼人は5人。


「こいつらはCランクのパーティだ。最近Bランクに上がろうと頑張ってんだが、中々うまくいってなくてな。一度お前に鑑定してもらったらどうだって提案したんだ。」

「あの、マティスさんにも伝えたけど、金貨5枚も払う余裕がないから、1人だけ鑑定してもらいたいんだけど。」


『はじめてのお客さんなので、5人で金貨1枚でいいです。』

 レンは衝立越しにギルドからもらった紙に書いて渡した。


「え、いいんですか?」

「まぁこいつがいいっつってんならいいだろ。じゃあお前ら横に並べ。」


 マティスの指示に従って並んだメンバーをレンは鑑定し、それぞれの名前とレベル、ATK(攻撃力)などの各種スキルの値を記して渡した。

「わーすごい!これが俺のステータス!!」

「ねぇ見て、私MPが貴方より高いわ。魔法も勉強してみようかしら!」

 冒険者たちは初めて見る自分のステータスに興奮して、紙を大切そうに眺めた。


 そしてレンはもう一つ紙を差し出した。そこにはタンク役と見られる男性が、実はスキルポイントを割り振っているであろうDEF(防御力)よりもAGI(素早さ)とATK(攻撃力)の数値が高く攻撃役向きであることや、DEXが低いとコントロールが悪く攻撃が当たらなくなることなど、目に付いた点を書き記した。


「・・・レンさん!ありがとうございます!今まで何も考えずに役割決めてたし、その役割に有効そうなものに女神の加護を使ってたけど、これからは今の自分たちの足りないところも考えてやってみます!!

 こんな綺麗な紙に書いてもらって、これじゃ全然足りないと思うんですけど、これが俺らが出せる金になりますんで、受け取ってください。」


 そう言って金貨1枚銀貨5枚を机に置くと、彼らは深々と頭を下げて部屋から出て行った。


 レンは彼等が部屋を出て行ったことを確認したフードとマスクを外し、嬉しそうに硬貨を懐に仕舞うとマティスが勢いよく肩を掴んできた。

「ちょ、マティスさん、顔が近・・・」

「レン、お前ステータスの意味も分かるのか?それにこの紙・・・お前どこからこれを盗んだんだ!」

「ちょ、一旦離れてくださーーい!!」


 レンはマティスからできる限り離れようとのけぞり叫んだ。


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