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第20話 ノーザスを出発

「お待たせ〜!」

 リリーが合流するなり、ゾイドを先頭にパーティメンバーとレオンは門へと歩みを進めた。


 門を通るためにはギルドカードの提示が求められた。

 ゾイドたちは何度かノーザスに来ているため、門番とも顔見知りのようだった。


「『深紅の稲妻』の皆さんと・・・奴隷を買ったんですか?」

「いや、この子は違うよ。訳あって隣街まで一緒に行動することになってね。これがこの子のギルドカードだ。」

「へー、レン、ね。黒髪だけならまだしも、両目とも黒目っていうのは珍しい子だね。」

 門番は顔をしかめ、レオンを見下ろした。


(黒髪黒目って、そんなに珍しいのか・・・嫌な目つきだな・・・)


「そういえばここだけの話ですけど、王様のとこにも黒髪の子供がいるらしいですよ。何でもメイドに手をつけて生まれた子供だとか。確か名前が」

「おい、確認が終わったんならもう行っていいか?俺たちもヒマじゃないんでね。」

「アル、そんな言い方はよしなさい。すまないね、もういいだろうか?」


 レオンは門番の話に冷や汗が止まらなかったが、アルのおかげで助かった。門番はレオンにカードを返却し、無事にノーザスを旅立つことができた。


(僕は一度も外に出たことがなかったけど、やっぱり公国直属の門番とかは名前を聞いたことがあるんだ・・・)


 レオンはノーザスを出てからしばらくの間、黙々と地面を見つめながら歩いた。ノーザスの街の中はレンガで舗装されていたが、街を一歩出ると土が慣らされているだけだった。



「レオンくん、疲れたらお姉さんに言ってね!抱っこしてあげる!」

 リリーは時折レオンに気を配っては、アルに「甘やかすなよ」と注意をされていた。レオンももちろん自分の力で歩くつもりではいたが、やはり5歳児の体力には限界があり、1時間も経つ頃にはパーティの後方を歩くようになっていた。

 そんなレオンを見かねて、ゾイドは木陰を見つけ、休憩しようと提案してくれた。

 この旅路中の飲食等のレオンに必要な物資に関しては、鑑定のお礼に含めるということで合意したため、レオンはゾイドから水袋を受け取り、呼吸を整えた。


「あの、僕、ギルドカードを間違えてレンで登録されてしまったんですけど、これは直さないでこのままレンと名乗ろうと思います。」


 レオンが歩きながら考えた答えは、レオンの名前を捨ててレンとして生きるということだった。黒髪黒目が珍しいとされる世界で、レオンの名前をそのまま使うことにリスクを感じたのだ。

 パーティメンバーは何も言わなかった。


(名前を変えるなんてやっぱり変に思うかな・・・)


 シーンとした空気が流れる中、沈黙を破ったのはアルだった。

「いいんじゃねーの?俺もアルフォンスだけど、みんなアルって呼んでるし、好きなようにしたらいいだろ。」

「そ、そうだね!レンくんって呼びやすいし、いいと思う!」

「うむ。よし、ではそろそろ出発しようか。レオ、レン君には申し訳ないが、5日分の食料しか持って来ていないから少しペースを上げるよ。ついて来れなくなったら交代でレン君を背負わせてもらいたい。いいね?」


 こうしてレオンは自身の名前を「レン」と改めた。




 ゾイドの言った通り、パーティの足は早くなった。最初は旅に慣れないレンのペースに合わせていたが、間に合わないと判断してメンバーに負担をかけてでもペースを上げることを優先した。

 レンも負けじと食らいついてはいたものの、すぐにゾイドに抱き抱えられ、その次にアルとリリーの背に乗ることになった。


「よし、今日はここにテントを張ろう。」

 ゾイドの指示に従い、手慣れた手つきでゾイドとアルがテントを組み立て、レンとリリーは枝を探し、ソフィアはアイテム袋から食材を取り出した。


(あー僕今日はいいとこなしだな・・・みんなにおんぶに抱っこで、鑑定のお礼にしては申し訳ない・・・)


「レンのおかげで枝がたくさん見つかったね〜。えらいえらい。」

「でも、僕みんなの足を引っ張っちゃって、ごめんなさい・・・。」

「レンくんは気にしすぎだよ!ゾイドを助けてくれた恩人じゃない!もっと子供らしく、みんなに甘えていいんだよー!」

 リリーはにっこりと笑ってレンの頭を撫でた。それでもレンの気持ちは晴れなかった。



 翌日も今日こそは1人で歩くと決意するレンであったが、むしろ慣れない野宿で疲れも取れず、早々にバテてしまった。

 3日目には歩き始めてすぐに足が攣ってしまい、丸1日運ばれる状態となった。


(このままじゃダメだ・・・ゾイドさんもいつもよりペースが遅いって言ってたし、みんなだって野宿は辛いのに申し訳ない・・・)


 レンは罪悪感から自分にできることを、と思い、いつものようにリリーと枝を探している間に食材となり得るものを鑑定スキルで探し始めた。


(あ、あそこに兎がいる!アルさんも兎肉美味しいって言ってたし、捕まえたらみんな喜ぶかも!)


 レンは兎が逃げないよう、こっそりと近づいていった。<ファイア>か<ウォーター>で捕まえようと考えていると、突然兎がレンを目掛けて突進してきた。

 レンは前世の記憶の兎を想像し、今世の兎に対しての知識は一切なかった。この世界の兎はレンが考えているよりも凶暴で、サイズは1回りほど大きく、5歳児のレンにとっては突進されるだけで大きなダメージになる。


(や、やばい。呪文が間に合わない・・・)

 レンがせめてもの抵抗として腕で頭を覆っていると、痛みが一切なかった。そっと腕の隙間から目を開けてみると、そこには兎を剣で突き刺したアルがいた。


「おい、ガキ。危ねぇから勝手に森に近づいてんじゃねーよ。」

「アルさん・・・!」


 レンはアルに抱き抱えられ、泣きながらみんなの元へと戻された。

「レンくん、大丈夫?急にいなくなったから心配したよ〜。」

「森で兎に襲われかけてた。ったく、武器も持ってねぇくせに森に近づいてんじゃねーよ。」

「ご、ごめ、ごめんなさ、い。」

 レンは更に迷惑をかけたこと、そして兎に飛びかかられた恐怖から涙が止まらなくなってしまった。リリーはタオルでレンの顔を拭きながら、背中をポンポンと叩き、レンを落ち着かせようとした。


 数分後、レンは我に帰り、改めて謝罪した。

「本当にご迷惑をおかけして、ごめんなさい。僕、何かみんなの役に立たなきゃって思って、兎を狩ろうと思ったんです。ごめんなさい。」

「まぁでもおかげで兎肉が手に入ったからね、危険なことはもう分かっただろうし、誰も怒っていないよ。」

「・・・ゾイドさんは優しすぎますよ。」


 アルは不服そうに、焼き上がった兎肉を頬張った。



 レンはその日、いつものようにリリーに抱きつかれて寝ているテントを抜け出し、見張りをしているアルに近寄って行った。



読んでいただきありがとうございます!

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皆様からの応援をいただけたら嬉しいです。

これからも執筆を続けられるようがんばりますので、

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