第19話 初めてのギルド
「ごめんなさい!」
リリーに起こされるまでアルの尻尾にくっついていたレオンは、起きて早々アルに謝罪した。アルに怒られることを覚悟していたレオンだが、アルは何も言わず、フンッとそっぽを向いて黙って部屋を出て行ってしまった。
リリーに案内されながら井戸で顔を洗い、昨晩と同じ場所で朝食を摂り終えると、全員でカルラの屋台へ向かった。
「そうかい、気をつけて行くんだよ。これ、持っていきな。お腹が空いたらお食べ。」
街を出ることを伝えると、カルラはニカっと笑って、串焼きを10本ほど包んでくれた。
「ありがとう!カルラさん!!また戻ってきたらお手伝いするね!!行ってきます!!」
「行ってらっしゃい!」
レオンはカルラからもらった串焼きをアイテム袋に入れ、屋台を後にした。屋敷を出た時にあった不安は、もうすっかり無くなっていた。
♢
「さて、ギルドに行ってレオンくんの登録を終え次第、街を出よう。俺とソフィアで必要なものは買ってくるから、アルとリリーが付き添ってやってくれ。」
ゾイドの指示に従い二手に分かれ、レオンはリリーに手を繋がれながらノーザスの冒険者ギルドを訪れた。
「ここが冒険者ギルドだよ!冒険者ギルドでは登録料さえ払えば誰でもなれるし、発行されるギルドカードが身分証にもなるからね。」
「冒険者ギルドへようこそ。ご用件をお伺いいたします。」
「この子の登録をお願いします。」
「お願いします。」
レオンは受付の台に背伸びして頭を出した。
「かしこまりました、文字は書けますか?」
「書けます。」
「ではこの紙に記入をお願いします。」
受付の女性から渡された紙とペンを受け取り、レオンは台の下で壁にあてて記入をし、返却した。もちろんクラリウスの苗字は記入しなかった。
「はい、それではここに指をあてて血を一滴垂らしてもらえますか?」
女性から出された器具についている針先に指をあて、器具に血が出るとパッと点灯し、カードが生成された。
「はい、これがレン様のギルドカードですよ。登録料で銀貨1枚いただきましたが、紛失した場合はカードの消失魔法を行う必要がありますので、再発行時には金貨1枚となりますので気をつけてくださいね。
レン様はFランクのスタートになります。ランクはF・E・D・C・B・A・Sランクまでございます。FからEへは依頼を1件こなしていただければランクアップとなります。Fランクの状態ですとギルドカードの期限が1ヶ月となりますので、早めに達成してくださいね。」
「依頼って、薬草採取とかですか?」
「そうですね、今ですと薬草10本、毒薬草10本の採取クエストが出ています。」
「あの、採取したのがあるんですけど、それでも平気ですか?」
「はい、構いませんよ。」
「じゃあ、これお願いします。」
レオンがアイテム袋から薬草を取り出すと、虫眼鏡のようなものを取り出し、女性が受け取った。
「確かに10本ずつありますね。ではそれぞれ銅貨1枚と交換で、銅貨2枚となります。」
「あの、もう少しあるんですけど、引き取ってもらえますか?」
「はい、構いませんよ。」
「じゃあ・・・。」
レオンはアイテム袋に詰め込んでいたありったけの薬草を台の上に置いた。何かの役に立つだろうと、家を出ると決めた前日の夜に裏山で見つけられるだけ摘んで置いたのだった。
(薬草なら結構どこにでもあるし、お金にしておいた方がいいよね。)
「・・・少々お待ちください。」
女性は薬草・毒薬草を抱えると、奥の部屋に行ってしまった。
数分も経たないうちに女性は戻り、
「薬草は67本、毒薬草は49本ございましたので、合計で116本となります。端数は切り捨てとなりますので、銅貨11枚の交換となりますが、よろしいでしょうか?」
「はい、お願いします!」
換金を終え、ギルドカードのランクもEにしてもらうなり
「早く行くぞ。」
とアルに急かされてギルドを退出した。
初めてのギルドカードは自分がファンタジーの世界で生きているという証明にもかんじ、レオンは嬉しそうにカードを眺めながら歩いた。
「そういえばレオンくん、お名前どうして変えたの?」
リリーの一言にレオンはギクッとした。
「え、な、何のこと?」
レオンはリリーの顔を見ることができなかった。
しかしリリーの言葉はレオンが予想していたものとは違った。
「だって、レオンくん、レンって名前で登録したよね?」
「え?」
レオンが慌ててカードを見ると、確かにそこには「レン」と書いてあった。
「あーーー間違えちゃった・・・!」
「ぷっ、お前自分の名前も書けねーのかよ!!」
「もう、やめなよ!!
・・・あ、アル、私ちょっと用事を思い出しちゃったから、門のところで合流でいいかな?」
「ああ。変な虫がついてきたら困るからな。ちゃんと掃除しとけよ。」
「じゃあ、後でねー!」
リリーは颯爽と駆け出し、人混みの中に消えていった。
♢
「ねぇ、ストーカーはキモいからやめてくれない?」
「お前、いつの間に!!」
リリーが向かったのはギルドから後をつけていた男たちの元だった。男たちは幼いレオンが大量に薬草を入手していたことから、レオンを捕まえようと考えたのだ。
「あの気持ち悪い髪の色、あいつ奴隷かなんかだろ?お前らBランクのパーティらしいじゃねぇか。金には困ってねえだろ?俺たちにもあいつ使わせてくれよ。そうだな、金貨1枚で買ってやるよ!どうだ?悪かねぇだろ?」
「・・・言いたいことはそれだけ?」
「おい、調子に乗んなよ。Bランクだろうと女1人相手なら楽勝なんだよ!お前も俺たちが使ってやってもいいんだぞ、あぁ?」
(下品な男。これは、虫以下。ゴミね。)
「おい、何とか言ったら」
「会話もしたくないから、サヨナラ。」
騒ぐ男の首から大量の血が溢れ出す。逃げ出そうとした男も、走ろうとした瞬間にはもう意識を失っていた。
「あー、最悪。汚れがついたわ。これは慰謝料でもらってくね〜。バイバ〜イ。」
リリーは倒れる男の腰から財布を盗り、門へと歩いて行った。
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