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第2話 攻略対象になってる!?

 小鳥のさえずりでレオンの目が覚めると、もう随分と日が昇っているようだ。鎮痛剤が効き、ぐっすりと眠っていたのだ。

 身体の至る所に痛みがあるものの、昨日見た夢を忘れないよう、ゆっくりとベッドから降りて机に移動した。


(昨日の夢は、夢じゃない、私だ・・・私は、立花 光で、あの時にきっと死んだんだ・・・)


 自分が死んだという事実は悲しかったが、「立花 光」の人生に未練はなかった。

 深く深呼吸し、引き出しから紙とペンを取り出し、今の状況を整理することにした。


 まず、今の名前はレオン=クラリウス。今年で5歳になるクラリウス公爵家の次男。ただし2歳上の兄のルーク=クラリウスとは違い、レオンは庶子であった。父ジーク=クラリウスがメイドに手を出して生まれたのである。そのため貴族の象徴でもある、光の加護を受けたようだと言われる、透き通るような髪がレオンにはなかった。

 レオンは母の色を受け継ぎ、目も髪も真っ黒だったのだ。


(確かこの世界には魔法が存在して、黒は闇魔法の色のイメージがあるから貴族の人は好まないんだよね・・・)


 レオンの母は産後の肥立ちが悪く、レオンが3歳のときに亡くなった。メイド達も当主になるはずもなく不気味な色をしたレオンのことは粗末に扱い、唯一ルークだけがレオンのことを気にかける存在だった。

 ルークの母、ルージュはそのことをよく思っておらず、ルークは母に見つからないようにこっそりと部屋を抜け出してはレオンに会いに行っていた。

 


 普段は食事の時以外声をかけてこない執事が、昨日は何故か乗馬を教えてくれると言ったので部屋から出たのだ。冷静に大人の頭で考えると怪しいのは分かるが、昨日まではただの5歳。部屋から自由に出られる時間も限られていたので、生まれて初めて馬に乗れるというので純粋に喜んでついて行ってしまったのだ。

 そして無知な5歳を高い馬に乗せ、補助もほぼなく馬を走らせた。馬の上から落ちて、骨折だけで済んだのは運が良かったとしか言いようがない。

 

(・・・うーん。レオン=クラリウスが馬から落ちる・・・なんかこの話、どこかで聞いたことがあるような・・・)


 レオンが頭を抱えていると、ドアをノックする音が聞こえた。


「レオン様?起きられましたか? 失礼いたしますよ」


 慌ててベッドの上に戻ったレオンを見て、入ってきたメイドはふふっと笑った。

「もう動けるようになられたんですね、良かったです。昨日は馬から落ちたと聞いて、心臓が止まるかと思いました。」

「エマ、心配をかけてごめんね、腕はまだ動かないんだけど、歩けるくらいにはなったよ。」


 彼女は父ジークの計らいでレオンに唯一ついているメイドのエマである。レオンはエマのことを実の姉のように慕っていた。


「レオン様がご無事で何よりです。あまり無茶はしないでくださいね。」

 エマはレオンの頭を優しく撫で、食事を置いて部屋を出て行った。


 食事を食べながらも頭の中は何かすっきりとしない。


(レオン、ルーク、ジーク、ルージュ・・・メイドのエマ・・・えっ!)

 

 レオンはベッドから飛び降り、鏡台に駆け寄った。


(やっぱりだ!この髪、この目、この顔・・・!これって『キミコイ』に出てくる俺様王子のレオン!?

 レオンルートの幼少期のトラウマ回想シーンで出てきた男の子の顔そのままだ!!!

 えっ、ということは、一番推していたレオンのどこまでも優しくて天使のようだった兄が、兄のルークじゃん!!ルークはイケメンなのに攻略対象じゃなくて、サポートキャラとしてアドバイスしてくれるキャラだったけど、いつもニコニコしてて身分とか関係なくみんなに優しいところが好きだったんだよね〜・・・

 あれ、でも確かレオンはルークのことが嫌いだったような・・・)


 光の時にやっていたゲームの記憶は最期にやっていたものだからか、所々の記憶が思い出せなかった。


(確か、レオンルートは、ハッピーエンドだとレオンがクラリウスの爵位を継いで、主人公と結婚。バッドエンドだと主人公を殺そうとして、その罪に問われてクラリウス家全員が皇帝によって処刑されるんじゃなかったっけ・・・そうだ、ルークは魔力が弱いからレオンが馬鹿にしているシーンがあったよね、それで今は迫害されてるレオンが後継者になるのか・・・)


 この世界では魔力の測定を15歳の成人の儀にて行う。その際に魔力量だけでなく、魔法属性の適性も見る。魔力量は貴族の方が多いものの、平民でも生活魔法程度であれば扱うことができる程度の魔力を持っている。

 レオンは15歳の成人の儀にて魔法騎士団団長に匹敵するほどの魔力量を叩き出し、火の属性と分かるや否やすぐに高レベルの火魔法を習得したのだ。その才能を父のジークも認め、周囲の態度が一変。レオンはこれまでの鬱憤を晴らすかのように、ワガママ放題になっていった。

 

(まぁ子供の時から迫害されてたのに、急に手のひら返しされて面白くなかったのかな。ゲームとして見る分にはストーリーだから共感できなかったけど、実際に自分がやられていると思うと、やりたくなる気持ちもわかるな・・・でも、ルークのことはなんで嫌いになったんだっけなぁ・・・うーん)



 『キミコイ』の舞台はレオンを含める攻略対象とヒロインが各国の中央に位置するアースガルド帝国の魔法学校に入学するところから始まる。そこで攻略対象とヒロインが各イベントに応じて一緒に学び、戦い、恋に落ちるという王道のストーリー展開だ。光はハッピーエンドもバッドエンドも一通りクリアし終えてはいるものの、攻略対象ではない兄のルークについての情報は乏しい。

 しかしレオンがルークを嫌っていたというのは、光ほどやり込んでいない人でも分かる情報である。レオンルートでルークが話しかけようとすると、レオンが鋭い眼光でルークを睨みつけるシーンがあり、一部のファンの間ではそのスチルが人気だったのだ。レオン✖️ルークのイラストや薄い本も目にすることは少なくなかった。



 レオンはまた食後の満腹感と鎮痛剤の影響でふっと意識を失った。





「・・・レオン様、レオン様、起きてください。夕飯のお時間ですよ。」


エマの声でふっと目が覚めると、そこにはエマと思い出した限りのゲームの内容を記した紙を見つめるルークがいた。


読んでいただきありがとうございます!

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これからも執筆を続けられるようがんばりますので、

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