第16話 パーティとの出会い
「ご馳走様でした。」
もらった串焼きを平らげ、レオンは頭を下げた。
「随分と丁寧な言葉遣いをする子だね。私の名前はカルラ。あんたは?」
「僕はレオン=クラ・・・いえ、レオンです!」
「レオンね、じゃあ今日はしっかりと働いてもらうからね!そうさね、店番をやるにはこれをこうして・・・はい、これでレジをやってもうからね。」
カルラはレオンの頭を布で多い、髪が見えないようにした。
「あんたの黒い髪はね、綺麗なんだけど、売り子としてはちょっとあれだからね、ごめんよ。」
「いえ、大丈夫です!ありがとうございます。」
(この世界で黒髪ってそんなに珍しいのかな・・・確かにあまり黒い髪の人を見かけないけど、いないわけじゃないのに。)
気になることはたくさんあったものの、食事のお礼としてレオンはカルラの指示に従い、串焼き1本銅貨3枚のレジを担当した。前世の記憶があるため、屋敷では一切教育を受けてはいないが、簡単な数字の足し引き算は問題なかった。
レジを担当することで、銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚になると知った。前世の価値に合わせると、銅貨が100円程度、銀貨が1000円程度、金貨が10000円程度の価値がある。カルラのレジには数枚銀貨が入っていたが、ほとんどは銅貨だったことから、銀貨や金貨を日常的に使うことはないようだった。
そしてレオンが驚いたのは猫耳や犬耳の人間がいたことだった。剣や杖を持っている、これぞファンタジーの世界というイメージそのものに、レオンは興奮した。
(うわぁ!もふもふ!耳が動いてるー!)
「・・・オイ、坊主。獣人がそんなに珍しいか?」
「ちょっとやめなよ、アル。ごめんね坊や、串焼き20本もらえるかな?」
「あ、ごめんなさい、僕獣人の方見たのが初めてで見惚れちゃいました。20本だと銅貨60枚になります!」
「銀貨でもいいかな?銀貨だから、えっと銅貨100枚で銀貨1枚だから・・・」
「じゃあ40枚銅貨お返しですね、どうぞ。」
何食わぬ顔でレジをこなすレオンを見て、女性は目を丸くした。
「坊やすごいねー!そんなに計算できるなんて、いつもお店手伝ってるのかな?」
「いや、その子はさっき手伝いにスカウトした子さ。計算ができるようで私もびっくりだよ。」
「へー!頭いいんだねー!」
前世から褒められ慣れていないレオンは照れ臭そうに笑った。
「・・・お!これうまいな!なんの肉なんだ!」
「あ、それは兎の肉にスパイスをかけて焼いたものになります。」
不貞腐れたような顔をしていた猫耳のアルと呼ばれた男性が、カルラから串を受け取るなり袋から出して頬張っていた。
「あんた、これが兎肉だって、よく分かったね!」
「あ、ごめんなさい、内緒でしたか?名前が書いてなかったので勝手に鑑定しちゃいました。」
「オイ!お前、今なんて言った?」
「え・・・あっ」
レオンが口を滑らせたことに気がつく時にはもうすでに遅かった。鑑定スキルはレアスキルで、持っているのは鑑定士だけ。鑑定士は帝国のお抱えで、平民が気軽に会える存在ではない。
「お前、鑑定スキル持ってんのか?」
男はニヤリと笑うなり、屋台に身を乗り出してレオンの腕を掴んだ。
(しまった・・・!どうしよう・・・)
レオンの顔は一瞬にして真っ青になり、男の腕を払うこともできずに固まってしまった。そんな男の腕を払い除けてくれたのは、横にいた女性だった。
「ちょっと、やめなよ、怖がってるじゃん!ごめんね、えっと、この真っ赤な髪の怖いお兄さんはアルフォンス。みんなアルって呼んでるよ。私はリリーだよ。」
「あ、僕は、レオンです。」
リリーはレオンの手を両手で包むように握りしめ、真剣な表情でレオンを見つめ、深々と頭を下げた。
「・・・レオンくん、もし君が鑑定スキルを持っているなら、私たちを助けて欲しいの!お願い、私たちと一緒に来てくれない?」
「え・・・」
レオンはどうしたら良いのか分からず、カルラに助けを求めた。
「もう昼時も終わって手伝いは終わりでいいさね。あんたがいいなら、助けておやり。」
(どうしよう・・・でも悪い人たちには見えないし、行くあてもないしな・・・)
「よし、じゃあレオンは明日もうちに手伝いに来ておくれよ。もしあんたが手伝いに来なかったら、警ら隊にあんたたちのことを通報するよ。
あんたら冒険者だろ?ギルドカードを見せておくれ。レオンもそれでいいね?」
レオンは数回首を縦に振ってうなづいた。
「うん!私のギルドカードはこれ!パーティ名は『深紅の稲妻』だよ。」
リリーがカードを取り出しカルラに見せると、カルラはニカっと笑ってレオンの背中を数回叩いた。
「ギルドランクもBランク!安心おし!悪いようにはされないさ!」
「は、はい。じゃあ、あの、よろしくお願いします。」
レオンもリリーに頭を下げるとリリーの表情はパッと変わり、レオンを思い切り抱きしめた。
「レオンくん!ありがとう〜!!」
「う、苦しいです・・・」
「あ、ごめんね!よし!じゃあ早速私たちのホームに来てくれるかな?」
レオンはカルラに深々とお辞儀をし、リリーに手を繋がれながら彼らのホームへと向かった。
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