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第14話 旅立ち

 翌日、窓から火柱が立ち、レオンの部屋が全焼するという事件が起きた。レオンが<ファイヤ>の生活魔法を全力の魔力で放ったのだ。レオンは属性が火のため、<ファイヤ>の威力は最も強かった。

 部屋の外にも燃え広がる寸前で、<ウォーター>を使って消火されたものの、部屋の中は煤だらけになった。そして母のルージュはこの問題を追求した。

「魔力があるからと言っていたずらに魔法を使うことは許される行為ではありません!!これまでは部屋と食事を与えてやったけれど、ルークにもしものことがあったら・・・!

 魔法の知識を与えた者もただでは済ませませんからね!!」


 キッとエマを睨みつけるルージュにレオンは懇願した。

「わざとではありません!コントロールができないのです。お母様お願いです、僕を魔力のコントロールができるように勉強させてください。」

「図々しい!お前にかける金など一銭もありはしませんよ!!!!!」

「分かっています。ご迷惑をおかけしないよう、自分で勉強をするために家を出る許可をいただきたいのです!!」


 ルージュは振り上げようとしたその手を止め、扇子を広げた。

「・・・何ですって?」

「僕は魔力が高いのかもしれませんが、コントロールができません。この力を使えるようになるため、家を出る許可をいただきたいのです。」


 レオンからの要求はルージュにとって決して悪いことではなく、むしろ好機であった。

(このガキがいなくなる・・・?そうすればジークはルークを次期当主に選ぶわね。それに少し魔法は使えるようだけど、生活魔法だけで屋敷から出て生きていくことなんて出来っこないわ)


「・・・いいでしょう。その代わり、外での生活にクラリウス家は関与いたしません。そのためクラリウス家の名前を使うことを禁じます。

 そうですね、レベル3以上の何らかの属性魔法を自由自在に操れるようになったら家に戻ることを許しましょう。」

「お母様!それはあんまりです!レオンはまだ5歳、成人の儀を終えていない状態で、属性魔法が使えるとは思えません!」

「ルーク、お黙りなさい。これはレオンの願いなのですよ。さぁ、レオン、どうしますか?」


 レベル3の魔法が使える人間はそう多くない。レベル上げという概念がないこの世界において、自身の属性魔法のレベル1の魔法しか使えないという人間も少なくないのだ。また、属性魔法は生活魔法とは異なり、15歳の成人の儀において精霊の加護を受けることで使えるようになると言われている。5歳のレオンに対してこの要求は、一生をかけても叶うことができるか分からない、勘当同様のものだった。


「はい、分かりました。レベル3以上の属性魔法ですね!僕やってみます。

 その代わり、生活魔法を教えてくれたエマに対しての寛大な処置を要求します。」


 ルージュの要求を聞いても、レオンはにっこりと笑ったままだった。


(ふん、やはり子供ね。加護もないお前は属性魔法を扱うことすらできず、そのまま野垂れ死ぬがいいわ。)

 

「・・・ではルージュ=クラリウスの名において、レオン=クラリウスの外出を認めます。ちょうどレオンの部屋が無くなりましたからね、今日から行って来なさい。幸運を祈りますよ。」


 ルージュはニヤリと笑うと、執事とともに自室に戻って行った。


「レオン!!なんてことを!今からでも遅くない、お母様に一緒にお願いしてあげるから、家を出て行くなんてやめるんだ!外で暮らすなんて、お前にはまだ無理だよ!」

 ルージュの姿が見えなくなったことを確認し、ルークはレオンに駆け寄った。

「ルークお兄様、僕大丈夫です!今のままじゃ僕も強くなれないし、お兄様をお守りすることができません。僕考えがあるから、本当に心配しないでください!」


 にっこりと笑うレオンにルークは何も言い返すことができなかった。

「・・・本当に大丈夫なんだね?」

「はい!必ずお兄様のお力になれるようになって戻ってきます!」


 ルークは諦めて深く息を吐き、

「分かったよ、でも少し待っていてね。」

 と言い、自室から小さな袋を持ってきた。


「これは昔買っていただいたアイテム袋。10キロまでのものであればこの袋に入れて持ち歩くことができるよ。この中にお父様からいただいた短剣も入っている。少しだけど僕が貯めたお金も入っている。」

「え、こんな大切なもの、いただけません!」

「レオン、僕はお前の無事を祈ることしかできないけど、せめてものことはしてやりたいんだ。どうか受け取って欲しい。」

「ルークお兄様・・・ありがとうございます、大切に使います。」


 そうしてルークからアイテム袋をもらい、エマに頼んでこっそりと盗んできてもらったパンや水も入れ、レオンは旅に出た。

 

(エマのことはお兄様にお願いしたし、悪いようにはならないだろう。前世の時も1人で旅に出る時間も余裕もなかったから初めての挑戦だけど、待っててね!お兄様!僕強くなってお兄様の元に戻ってきます!!)


 レオンはこれから始まる旅に胸を躍らせながら、目を拭い、その一歩を踏み出した。

読んでいただきありがとうございます!

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これからも執筆を続けられるようがんばりますので、

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