第13話 この世界のレベル
「レオン・・・気持ちは嬉しいけど、僕の魔力じゃとても」
「お兄様!レベル上げしましょう!!」
「え?レベル上げ?」
♢
自身のステータスボードを確認できるようになってから、この世界の平均値がどれほどのものなのか確認したくなったレオンはエマに尋ねたことがあった。
「え、私のステータスですか・・・私のような身分のものは存じ上げませんよ。
各ステータスの強さを知るためには15歳の成人の儀の際に、鑑定士の方にお布施を支払うことで見ていただけると聞きました。貴族の方であれば鑑定士の方にお支払いをすることでいつでも見ていただくことも可能なようですが、私のような生活にステータスが関与しないような平民であれば、自分の属性しか知らないことが多いのではないでしょうか。」
(え、ステータスってみんな知ってるものじゃないの・・・?)
ゲームの世界ではモンスターを倒すためには、それぞれのキャラクターのスタイルに合わせ、各スキルの値を上げることが重要だったため、エマの言葉は衝撃だった。ステータスボードを確認できていたのは、レオンが鑑定スキルを持っていたからだったのだ。
(エマ、勝手に覗いてごめん・・・!)
「<鑑定>」
レオンはエマに聞こえない程度の小さい声で呪文を唱え、エマの横に浮かび上がるステータスボードを確認した。
【エマ:ヒューマン (18) Lv1】
大体のスキルは100に満たない程度。風魔法が使えるからかMPだけは120とやや高かったが、ゲームの世界でも魔法騎士団団長で500と言われていたことを踏まえ、平民の大人なら100が平均値だとレオンは仮定した。
そしてその後も数人のメイドや執事のステータスを確認し、レオンはあることに気が付いたのだった。
(この世界ではレベルの概念がないのかもしれない・・・)
思い返してみると、ゲームの世界でもヒロインと攻略対象者たちのレベルは1からのスタートだった。スライムなどのチュートリアルを数回倒せばレベル5程度までは容易に上がり、課金で手に入るアイテムを装備するだけで数字が100,200と増えるので、課金勢であれば容易にクリアできるゲームだったのだ。
あくまでも攻略対象者達との恋愛シミュレーションがメインのゲームであるため、モンスターとの戦いも中盤から加わってはくるものの、育成がメインではなかった。それが現実でも同じなのかもしれない。
レオンはこの日からレベルについても考えるようになっていたが、世界樹の加護が働いているため、森の中で練習をしてもスライム1匹出くわすことは無かった。
♢
「お兄様のレベルは今1です!レベルを上げて、お兄様のMPやATKを上げればいいのです!!」
レオンはフンスフンスと音が聞こえそうな勢いで、鼻息荒くルークに迫った。
「えーっと、レベル上げって、何?」
「モンスターを倒して得られる経験値によってレベルが上がるのです!そうすると、ステータスが上昇するのです!!」
すると途端にルークの表情が変わった。
「・・・レオン、それはでも少し難しいかな。」
「なぜですか?!」
ルークは再度地図のページを指差した。
「今僕達がいるのはアレース公国の中央に位置するノーザスっていう都市になるんだけど、この辺りまでは世界樹の加護が働いているおかげでモンスターを見かけることはないんだ。
もしモンスターを倒したいなら、最低でも世界樹の加護が薄い僻地に行かなければならない。冒険者や傭兵がこの辺りに行くことはあるみたいだけど、貴族の僕達が行くなんて、とても許可が降りるとは思えない。
・・・僕達は貴族として、持って生まれた才能で生きなければならないんだよ、だからね、レオン。レオンが当主になって、僕はレオンのサポートができるよう、勉強を頑張るよ!勉強は好きだからね!」
ルークはニコッと笑ったが、レオンはそれがルークの本心とは思えなかった。ルークは7歳にも関わらず、レオンが尋ねたことは大抵のことは説明ができるほどに、この領地のことや帝国について、魔法について勉強していた。才能がないと言われても毎日剣の練習をしていることを、レオンは知っていた。
「僕のことを考えてくれてありがとう、そろそろお母様が戻って来られる時間だから、部屋に戻るね。」
ルークはポンポンと頭を撫でるとそっと部屋から出て行った。
(僕は人と話すのも苦手だし、正直この領地のこととかあまり興味がない。生まれ持ったスキルで人生が決まるなんてあんまりだ!!・・・お兄様のためになんとか・・・移動・・・あっ!!)
レオンは思い出したことを踏まえ、今後の計画のためにまた机に向かった。
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