第12話 アレース公国
「ハッ!!!」
レオンが勢いよく目を開け上体を起こすと、ルークはふふっと笑った。
「お、お兄様、すみません!眠ってしまいました・・・」
「いや、毎晩魔法の練習もしていると言っていたし、無理してはいけないよ。それにまだ少ししか時間は経っていないし、眠かったらもう少し眠っても構わないよ?」
レオンはブンブンと首を横に振り、
「いえ!お兄様とお話しできる時間は貴重ですので!!」
とベッドから飛び出し、ルークへ駆け寄った。レオンはルークの横の椅子に座り、ルークを見つめた。
「どこから話そうかな?」
「ここが絵本に出てくる北の土地だと言うところまで聞きました!」
「そうだね、じゃあレオンはモンスターのことは知っているかな?」
「えっと、スライムとかのことですか?」
「よく知ってるね!そう、世界樹の加護のおかげで基本的にはモンスターが街に出ることはないんだけど、地図を見てごらん。」
ルークは絵本の地図の上側を指差した。
「南の領地は海に面しているが、ここの北と東西は陸地に面しているだろう。世界樹から離れるほど世界樹の加護が効かなくなる。そのためここは未開の地でね、モンスターがウヨウヨいると言われているんだよ。この陸地に最も面しているのが、北の大地、僕たちのクラリウス公爵家が代々納めているアレース公国。
絵本にもあったように、僕たちのご先祖様は神様から力を与えられたと言われている。その力で未開の地との境界を守っているんだよ。そしてその力こそがアレース公国の最大の収入でもあるんだ。」
「しゅうにゅう?」
「そう、力を他の国に売っているんだよ。東のメティス公国、西のヘルメス公国は陸地からの、南のデュメエル公国は海からくるモンスターを追い払うためにアレース公国の騎士たちを貸し出しているんだ。ここは作物も育ちにくいからね、力をお金に変えて、他の領地の物を買っているんだよ。
中央都市ができてからは各領地の境にある山や谷を越える必要がなくなったから、たくさん物を買えるようになって、アレース公国内の食卓も豊かになったそうだよ。」
(ゲームの設定では細かいところは知らなかったけど、確かに東西南北の王子とかが攻略対象者だったから何となくは分かる。でもここの食事がこの世界の一般的な物だと思ってたけど、もう少し美味しそうなものがあるなら食べてみたいなぁ・・・正直ほとんど塩味メインのスープとパンばかりで飽きてたんだよね)
「だからね、レオン。この地を治める人間は、神から与えられた力が最も力が強い者と決まっているんだ。僕は生活魔法すらもままならないし、15歳の成人の儀でそれが明らかになる。恐らくすでに僕がほとんど魔法が使えないこと、剣の才能もないことはお父様の耳にも入っているし、レオンがライトを使ったことも知っていると思う。
・・・レオンが狙われているのも、このままじゃ僕が当主になれないことをお母様が考えてのことだと思うんだ。僕が不甲斐ないばかりに、本当にごめんね。」
ルークは申し訳なさそうに頭を下げ、レオンはどうして良いかわからずルークの手を握りしめた。
「お兄様は何も悪くありません!謝らないでください!!
あの、ルークお兄様が良ければ、ステータスを見せてくれませんか?」
「え、僕のステータス? あぁレオンは鑑定スキルを持っているんだっけ。僕も知りたいから、もちろんいいよ。良ければレオンのステータスも教えてくれる?」
「・・・分かりました。」
ルークのステータスを見ると、確かにMPは35と低い数値だった。INTだけは高いもの、ほかのスキルも軒並み5歳児のレオンと同じように30台。ATKに関しては15と恐らく平均値以下と思われる数字が並んでいた。
「これがお兄様の数字で、こっちが僕のです・・・。」
正直数値を見せることによって圧倒的な差を見せつけてしまい、ルークがレオンを嫌うのではないかとレオンは心配していた。
ルークはまじまじと紙を見つめ、肩を震わせた。
(やばい、やっぱりお兄様だって7歳だもんね、泣いちゃったかな。どうしよう・・・)
「あ、あのお兄さ」
ルークはレオンの言葉を遮るように、レオンに飛びかかった。
「すごいよ!!レオン!!本当に鑑定できている!」
「え?」
「疑うような真似をしてごめんね。生活魔法もままならない僕を見かねて、お母様がこないだ鑑定士を招いて見てもらったんだ。その時教えてもらったものよりも詳しく載っているよ!すごいじゃないか!レオンはもう鑑定士として生きていけるね!」
「え、でも僕まだ鑑定レベル1ですよ・・・?」
レオンの頭をわしゃわしゃと撫でながらルークはうーんと言った。
「僕も鑑定スキルのことはよく分からないけど、とにかくレオンはすでにこないだ来た鑑定士よりも力があるんだと思うよ!
それよりレオンのMPはすごいね!とても高いじゃないか!やっぱりレオンが次期当主に相応しいよ!この数字を見せたらお父様にも話ができると思う!」
「ちょ、待ってください。お兄様!僕は、当主にはなりたくありません。当主にはお兄様のような優しい方がなるべきです!」
レオンはルークの手を掴み、ルークの目を見つめた。
「僕は、この力を大好きなルークお兄様のために使いたいです。
レオン=クラリウスは、ルークお兄様のために剣を捧げます。」
ルークはびっくりしたような表情をすぐにいつもの優しい笑顔にし、
「レオン、それだと僕の騎士になるってこと?なんだか僕がお姫様みたいだね。ふふっ」
と冗談めかしく笑った。
「ルークお兄様、僕は本気だよ。小さい頃からみんなに嫌われて、この髪も目も気持ち悪いって言われたけど、お兄様だけは褒めてくれた。僕に会いに来るとお母様にお兄様が怒られてるの、僕知ってる。でもお兄様はいつも会いに来てくれて、僕はお兄様のためにこの力を使いたいの!!」
声を荒げるレオンの様子から、レオンの真剣さがルークにも伝わった。
「ありがとうレオン。でも、僕の少ない魔力では当主にはなれないんだ・・・」
「お兄様!僕に考えがあります!!!」
レオンはルークをキラキラとした瞳で見つめるが、ルークはレオンの意図がわからずキョトンとしていた。
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