第11話 世界の成り立ち
レオンが話を終えてもルークはしばらくの間沈黙を続けた。
「ルークお兄様?」
レオンが心配そうにルークの顔を覗き込むと、ルークはハッと我に返り、状況を整理し始めた。
「ごめんごめん。レオンの話が予想以上だったからビックリしちゃってね。
えっと、整理すると、レオンは生活魔法は<ライト><ファイア><ウォーター>の3つをマスターし、鑑定のスキルも持っているってことだね。そして執事とエマからの毒殺を防ぐために、毒薬草を毎日食べていたら毒耐性がついた。でもそれだと根本的な解決にはならないから、どうにかしたい。合ってるかな?」
レオンは食い気味に首を大きく縦に振った。
「・・・僕は<ライト>の威力しか見ていないけれど、恐らく他の生活魔法も通常の威力とはかけ離れた威力が出ているんだろうね。鑑定スキルも持っているなんて、レオンには敵いっこないな。
レオンが言ったように、お父様にレオンの力を伝えればお父様との謁見も叶うと思う。ただその場合、エマもただでは済まないと思うんだ。レオンはお母様からは厳しくされているけど、それでもクラリウス家の次男で、そんなレオンを殺そうとしたとなれば、実刑は免れないと思う・・・」
「そんな・・・」
ルークの言っていることはもっともだ。庶子であったとしても公爵家の息子を、この国の第二王子を殺害しようとしているのだ。執事だけではなく、協力したエマもただでは済まないであろう。むしろ実際に毒を盛っているエマの方が罪が重くなる可能性すらある。
(執事だけ追い出してエマを守れる方法があればいいんだけど・・・)
「ねぇルークお兄様、どうしてお父様は魔法が使えると会って下さるのですか?」
「あぁレオンはまだ知らないかな。この帝国の地図は知っている?」
「お兄様とエマが読んでくださった『神さまの世界樹』って本で見ました!」
レオンはルークから譲り受けた数冊の本の中からその絵本を探し、ルークに渡した。
ルークは膝の上をポンポンと叩き、レオンを抱えると、ページをパラパラとめくり、絵本の地図を開いた。
(うおおおおお兄様の膝の上!!うううううういい匂いがする・・・)
「これが僕たちが暮らすアースガルド帝国の形。真ん中にあるのが世界樹。ここには帝国直轄領の中央都市があってね、魔法が使える者であれば中央都市にある魔法学校に通うことができるんだよ。・・・僕はもしかしたら行けないかもしれないけれど、レオンなら絶対に通えるね!」
(ここにゲームの舞台があるのか・・・)
「帝国の中は大きく4つに分かれているて、僕たちはクラリウス家が代々治める北の大地に住んでいる。
帝国は昔はすべての領地が繋がり合った平野だったと言われているんだけど・・・ここからは絵本を読んであげた方が分かりやすいかな。」
ルークは再度パラパラとめくり、最初のページまで戻した。そしてゆっくりとレオンにこの国の成り立ちを読み聞かせた。
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むかし むかし あるところに4人の兄弟がいました
兄弟は貧しい生活でしたが 手をとりあい 仲良く暮らしていました
そんな兄弟たちの家の前で 1人の老人が倒れていました
兄弟たちは 老人を家に運び 自分たちの食事を分け与え
老人が元気になるまで 家においてやりました
老人は兄弟たちのおかげですっかり元気になり
旅立つときに 兄弟へ1粒の種を与えました
「これを家の近くに植えなさい」
兄弟たちが何の種かをたずねても 老人は無言で去って行きました
「とりあえず植えてみよう!」
兄弟たちは家の畑に穴をほり 種を植え 水をやりました
すると種からはすぐに芽が出てきました
驚いた兄弟が更に水をかけると 芽はグングン伸びていきました
やがて家をも覆うほどの 大きな1本の木になりました
そしてその木にはたくさんの果実がなり
その実にはフシギな力がありました
その実を食べるだけで どんなケガも治ってしまったのです
兄弟たちはこの実を売り たくさんのお金を得ました
兄弟たちの生活は どんどん豊かになりましたが
ケンカをすることが 増えていきました
そしてある日 長男は言いました
「あの老人を家に運んだのは自分だ!この木は俺の物だ!」
しかし二男は言いました
「あの老人を手当てしたのは自分だ!この木は俺の物だ!」
三男は言いました
「あの老人に食事を与えたのは自分だ!この木は俺の物だ!」
四男は兄たちのように力も知恵もなかったため
言い返すことも ケンカを止めることもできませんでした
そして兄たち3人のケンカは どんどん大きくなっていきました
悲しみにくれた四男は 木を燃やしてしまいました
燃えてしまった木の前で 兄弟たちが呆然としていると
あの老人が やってきました
兄弟たちはまたあの種を求めましたが 種はもうありませんでした
ガッカリする兄弟たちに 老人は問いました
「何を求める?」
長男は言います「力だ!」
二男は言います「知恵だ!」
三男は言います「金だ!」
そして四男は「仲良く暮らせること」 と言いました
「分かった」と 老人はこたえました
老人は燃えた木に近づき 木に手をあてました
すると木が輝きだし グングン グングン 大きくなっていきました
まばゆい光に包まれ 兄弟たちが目をあけると
兄弟たちは大きな木の根によって 東西南北に分かれてしまいました
そして老人は 空から兄弟たちに言いました
「のぞみを叶えた代わりに この世界樹を守りなさい
次に世界樹が枯れたとき この世界は無に還るであろう」
兄弟たちは 老人が神さまであったと気づきました
そして長男には岩をも砕く力が
二男の頭の中にはたくさんの知識が
三男には金銀財宝が与えられました
四男には変化がありませんでしたが 四男に与えられた土地は
食べ物にあふれ やがて多くの人や動物が住み始めました
神さまが与えてくださった力と 世界樹の力によって
平和に暮らすことができるようになりました
そして兄弟たちは 神さまの言いつけを守り
今日も世界樹を守り続けているのでした
めでたし めでたし
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「・・・はい、読み終わったよ。あれ、レオン?」
レオンは暖かいルークの温もりと心地よい声によって、眠ってしまっていた。
ルークはレオンを起こさないようレオンをベッドまで運び、レオンを眺めていた。
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